住基ネット 横浜市84万人の不参加希望者のデータ送信に対する見解
2003年4月23日
住基ネットに「不参加」を!横浜市民の会
1.経過
横浜市は、4月9日、以下のことを発表した。
これまで、非通知の申し出をしなかった261万人の本人確認情報の利用について、総務省及び神奈川県と協議を進めてきたが、このたび協議が整い、4月10日から非通知申出をしなかった市民に関する情報を神奈川県に送信することになった。非通知申出をした84万人の市民については、「職権消除」という扱いをし、送信すると言う。
7月22日の仮運用の段階で、横浜市民345万人の本人確認情報が送信されていた。
現在でも他の不参加自治体のデータも含めて日本「国民」全員の本人確認情報を全国センターは蓄積しており、国や自治体の住基端末から検索することが可能な状態にある。横浜市もそうだが、他の不参加自治体もこの「仮運用データ」の削除を当該都道府県にこれまで要求してきたが、拒絶されてきている。
今回横浜市が非通知申出をしなかった261万人の市民の最新データを送信し、国や他の自治体の事務に提供することになるが、そのままだと参加・不参加のデータの見分けがつかなくなり、不参加市民のデータも利用されてしまう危険性が発生する。その危険性を回避し、不参加市民のデータを利用できなくするために「職権消除」という処理を施すというのが、横浜市の見解である。
2.「職権消除」への疑問
「職権消除」とは、住民基本台帳で、住民票を残したまま転出したり、住民が国籍を失った場合に、市の職権で住民票を無効とする措置のことを通常指す。
① 違法性
今回の「職権消除」は住民基本台帳法に規定されている「職権消除」にはあたらず、違法性が強いと考えられる。
② 住民基本台帳と住基ネットとの齟齬
当然ながら台帳と住基ネットのデータはイコールでなくてはならない。しかし、今回の住基ネット上の職権消除は、台帳と住基ネットのデータの齟齬をきたすものとなってしまう。こうした不整合が認められるならば、住基ネットそのものの信憑性が問われることになる。
③ 約束違反
「横浜方式」は参加したくない市民は「非通知申出」をすることによって自分のデータを県や全国センターに送信しないというものだった。しかし、今回職権消除という処理をしたとはいえ、非通知申出者のデータを送信したことには違いなく、市長の重大な約束違反であると受け止める。
④ 神奈川県・国に対する削除要求の不徹底
職権消除のほかにとりうる方策はなかったのか?上記約束違反を回避するためには、まず国と県に対して仮運用段階のデータを削除することが必須であった。それ無くして送信はありえなかったのではないか?削除なくして送信なしという姿勢で国・県と交渉したのか否か。また横浜市がどういう形で削除要求したのか明らかにされていない。文書で要求したのであれば、公開すべきである。
⑤ リスト化への危惧
不参加の意味の職権消除と本来の意味での職権消除とが混在するので、不参加市民を住基ネット上で特定するいわゆる「リスト化」は行わないというのが横浜市の見解だった。しかし、職権消除の事由が付されれば、一目瞭然になる。また、本来の職権消除の数は極少数だと考えられ、不参加による職権消除の割合が大多数であることが想定されるため、ほとんど特定されたと看做せるのではないか。
つまり、「私は不参加者です」という思想信条に関わる情報を住基ネット上に送信したことに今回の措置はあたると見ることができる。これは私たちの最も危惧していたことである。
以上の点から見ても、今回の非通知申出者のデータ送信には多大なる問題点が存在すると考える。
3.責められるべきは国・神奈川県
上記のように、横浜市の非通知申出者の送信には大きな問題があると考えるが、それにも増して問題なのは、国と神奈川県が仮運用段階のデータ削除に応じなかったことである。
不参加状態の市民のデータは横浜も含めて7月22日以降の変更が一切更新されていないまま、今年の7月22日で一年を経過する。その間名前や住所の変更を行った市民は数多いと思われる。つまり、そのデータの信憑性は時間を経過すればするほど低下するはずである。であるにもかかわらず、そのデータを保有する根拠は何か?
それは、住基ネットにいかなる問題性が存在しようとも、「全国民」のデータを保有していてこそ意味があるという「全国民監視」に対する総務省の熱望である。合理的に考えれば陳腐化したデータは削除するしかないはずだ。しかし、住基ネットは生存している「国民」データの削除を想定していないシステムである。
しかし、本当に住基ネットの主体が市区町村であるのならば、不参加や離脱を希求する自治体のデータを保有しないのが真の姿ではないのか?もしそれができないのならば、やはり国家管理であると言わざるをえない。
4.私たちの方策
この問題に対して、私たちは次の方策をとる予定である。
① 横浜市本人確認情報等保護審議会に対する審議要請
横浜市が今回とった「職権消除」という措置が本人確認情報保護上問題がなかったのか否か検討するよう要請する。
② 神奈川県に対する仮運用段階の本人確認情報の削除要請
松沢新知事は、住基ネットに対して懐疑的な姿勢を持っている。横浜における状況を説明し、まず神奈川県における仮運用段階のデータ削除が今回の問題の抜本的解決であることを理解してもらい、削除に踏み切ってもらうよう強く要請する。
③ 中田市長に対する要請
横浜方式が成立するためには、仮運用データの削除しかないことを理解してもらい、国と神奈川県に対してより一層強く交渉するよう要請する。実現しない場合は、全面離脱をも辞さない姿勢を持つよう要請する。
また、今回の問題の重要性を認識して、安易に不参加市民を参加に転じる措置を採らないよう重ねて要請する。
④ 神奈川県・全国センターへの開示請求と訂正請求
住基法上、自己の本人確認情報については開示・訂正請求できることになっている。
もし、仮運用データが削除されないまま、送信し続けるのであれば、不参加市民のデータの開示・訂正請求を組織したい。
初版:2005年08月14日、最終更新日:2005年11月06日
http://www5f.biglobe.ne.jp/~yabure/yokohama01/m030423a.html