補聴器、人工内耳って何?

 耳が悪いなら補聴器や人工内耳にすれば?ということをたまに言われます。でも、基本的に片耳失聴の場合、補聴器を装着しないことが多いです。なぜか?そもそも補聴器や人工内耳はどのようなものか、ここでお話いたいと思います。

☆補聴器エトセトラ

 補聴器とは、音圧増幅器で、内耳に入る音の機械的エネルギーを大きくします。
 つまり、補聴器は中耳の障害の代役は務まりますが、内耳自体が障害されている場合、大役を担うまでに至りません。(内耳に入る音を大きくさせるのであって、内耳がやられていてはいくら内耳に入るまでの音を大きくしても音を聞き取る本体が壊れていては限界があるのです。余談ですが、中耳は耳に入ってきた音を増幅させる、つまりスピーカーのような役割があります)

 補聴器はたしかに音を増幅させるのですがいくつかの欠点があります。

・値段が高い
 補聴器は数万円から、10万円前後します。しかも、両側の高度難聴でないと保険適用で国から支給されないため、ほとんどの患者さんが実費で払っているのが現状です。(後述しますが実際高度難聴の患者さんは補聴器をつけてもほとんど言語を理解することができません。車のクラクションなどの危険を察知するのには役に立ちますが補聴器にも限界があるのです)
 
・装着に不便
 補聴器をつけるとやはり人目につきます。
 補聴器には耳掛け型と耳穴埋め込み型があります。私の所有しているのは耳掛け型なのでそちらのことについて述べます。

 耳掛け型はその名の通り、耳に掛けます。だからどうしても人目についてしまいます。私も装着する時は髪を垂らして隠しますし、私の知っている難聴の方も髪を結ぶときも耳が隠れるように結んでいます。
 次に私のように眼鏡を掛けている場合、補聴器を掛けると眼鏡がうまく掛けられません。
 そして、ちょっと動くとずれてしまうのでスポーツ中などは不便です。

・雑音が入る
 補聴器で音が増幅されるのは何も都合のいい音だけではありません。身の回りの雑音も増幅されてしまうのです。
 洋服のすれる音や、足音、ざわめき、エアコンや換気扇の音などすべてが増幅されてしまうのですごいうるさいです。静かな場所ならいいのですが賑やかな場所では大変耳障りです。

・装着時のノイズ
 装着時、「ピー」とか耳元でノイズが発生します。内耳障害の患者の特徴として、自分が聞こえる大きさの音になるととたんに大きく聞こえてしまうので大変耳障りなのです。

・すべての難聴患者に使える訳ではない
 補聴器の音の増幅にも限界はあります。90dB以上の難聴患者さんではほとんど補聴器だけでは補えないといいます。つまり、補聴器ははじめに使う人にある程度の聴力が必要なのです。
 しかも、内耳障害の場合、言語明瞭度も低下していますから、音は聞こえても言葉として理解できるかはまた別問題なのです。

 ここで述べてきたとおり、補聴器はやはり耳の複雑な機能をすべて補うことは無理です。あくまで、代用品として・・・ということです。私も補聴器はほとんど使っていません。 

☆人工内耳

 人工内耳とは何なのでしょうか?
 人工内耳とは機械的エネルギーを電気的エネルギーに変換する内耳感音系の機能を代替する機器です。
 1970年にアメリカのHouse博士によって開発されました。そして、その後のコンピューターの技術の進歩とともに、人工内耳も格段に改良され、全世界に普及していきました。日本でも1994年に保険適用となりました。

 しかしながら、人工内耳は埋め込み語も的確に言語を把握するためには根気のよい訓練が必要になります。よって、人工内耳の適用はおおむね100dB以上の高度感音難聴で、補聴器の装用効果が得られない患者に限定されます。

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