東山
霊山観音
所在地:東山区高台寺下河原町526−2(京阪電車五条駅 徒歩20分)
HP:http://www.ryozen-kwannon.jp/
入場料:200円(線香付)
開館:8:40〜16:20



霊山観音
 


 霊山護国神社(明治維新史跡公園)へ向かう維新の道を登っていると、左側に白い観音像がちらほら見え隠れしていた。そこで、今度はその観音様に参ることにした。
 入り口で参拝料を払うと線香を渡されたので、それを線香台に供えた。
 
 観音像というと、江戸川乱歩(1894〜1965)の少年探偵シリーズの1篇「灰色の巨人」(1955年)の舞台となった大船観音を思い出す。小説では怪人二十面相一味の隠れ家となっていた。僕も子供の頃に家族で行った記憶があるが、あれは確かに灰色だったような記憶がある。霊山観音の場合は文字通り純白。1955(昭和30)年6月に開眼した鉄筋コンクリート性の観音様で、高さは24メートル。「日本の建設と殉国の英霊並びに大戦による犠牲者の冥福を祈念するため」に作られたとある。
  



観音像胎内の薬師如来
 


 裏から観音像の胎内に。内部には十二支の守り本尊が祀られている。
 
 観音様の裏手の「メモリアルホール」には「世界無名戦士之碑」が祀られている。第二次世界大戦(1938〜45年)に際し、日本国内や日本軍の管理下で戦争のために生命を散らした外国の将士4万8000人あまりの霊が祀られている。
 



メモリアルホール内の世界無名戦士之碑
 


 そのメモリアルホールの一角には「世界各国軍人墓地より贈られし浄土」といって、各国の旗と共に、軍人墓地の土が飾られていた。やはりアジア諸国が大半であった。
    



世界各国軍人墓地より贈られし浄土
 


 カラカラという乾いた音が聞こえてきた。見ると無数の風車が風に回っている。水子供養の地蔵様の前に供えられた風車である。
  



みづこ地蔵
 


 色鮮やかな風車の供えられた無数の地蔵仏。
 この世に生まれることの適わなかった小さな霊がこんなにも多く存在していたのかと考えると、自分の生命がいかに尊いのかがよくわかるものである。
  



観音様の横顔


 観音様の慈愛に満ちた柔和な顔立ちに思わず見とれてしまったが、よくよく考えてみると観音様は“男性”だ。確かに口髭のある観音像をどこかで見た記憶 がある。
 ちょっと調べて見たところ、観音様というのは、インドの最高神であるシヴァと、ゾロアスター教の水の女神アナーヒータが融合したものであるそうだ。だとすれば、女性的なものを感じたとしても決しておかしいことではない。江戸時代のキリシタン禁止令下で、隠れキリシタンたちは、マリア様を観音像に模した「マリア観音」をひそかに祀ったというが、それもよくわかることである。
   

(2006年5月20日)

戻る