バクタプール
チャング・ナラヤン
  Changu Narayan



チャング・ナラヤン寺院
 


  カトマンズ盆地内にある世界文化遺産登録の王宮・寺院のほとんどは、僕がネパールに滞在した2年間の間に何度も行っていた。しかし、その中の一つであるチャング・ナラヤン寺院にだけは、ネパールに住み始めた直後の2007年4月にたった一度訪問した切りだった。
 なぜ、一度しか行かなかったのか。簡単に言うと、辺鄙な場所にあるからである。首都カトマンズからバスで東に30分を行った古都バクタプール。そこからバスに乗り換え、1時間ほど山道を登らなければならない。それだけにあまり観光客も来ず、観光地化していない場所だということができるかもしれない。
       



チャング・ナラヤン入口
 


 2009年8月。約8ヶ月ぶりにネパールを訪れた僕は、久しぶりにチャング・ナラヤンに足を運ぶことにした。バクタプールの市街に住んでいる以前の同僚のネパール人女性に聞いたところ、彼女も以前一度行った切りだという。そこで一緒に行くことにした。
 外国人はチャング・ナラヤンの入り口で入場料100ルピーを払わなくてはならない。住んでいた頃の僕だったら、遠回りしてでも無料で入ろうとするのだが、この時は紛れも無く観光客だったのだし、連れもいたことで素直にお金を払った。
 お金を払いたくなければ、上の写真の門から入らず、そのまま右のほうを回って市街に入ってしまえば何とかなりそうに思える。もし行く機会があったら誰か試してみて。
  



チャング・ナラヤンの街並
 


  土曜日だというのに観光客も少なく、チャング・ナラヤンはひっそりとしている。やはり主要な観光地から遠いからだろう。確かにここに来るだけで半日は潰れてしまう。
 それだけに石畳を踏んで歩いていると、古き良き時代のネパールに来た気分に浸ることが可能だ。
 10分程歩くと、チャング・ナラヤンの寺院に出る。
  





チャング・ナラヤン寺院入口
 

 
 現在のチャング・ナラヤン寺院は1702年に建てられたものだが、火災の後に建て直されたもので、そもそもリッチャビ王朝時代の323年に建てられている。そのため、リッチャビ時代からの彫刻なども数多く残されている そうだ。
  



お祈り用の蝋燭などを売っている
左は同行した元同僚
 


 さっそく中に入っていくことにしたい。
 入口から入ると、40メートル四方のバハール(広場)になっている。中央に建つのが、2層屋根のチャング・ナラヤン寺院(写真一番上)。本尊は言うまでも無くヴィシュヌ神の化身ナラヤン神である。
     



ガルーダ像
 

   
 ヴィシュヌ神と言えば、その乗り物であるガルーダがつきもの。当然、寺院の正面に跪いている。これは5世紀の物とのことである。
   



ブパティンドラ・マッラ王(左)と王妃の像
 


 ガルーダ像のすぐわきにある駕籠の中に入った2体の金色の像はブパティンドラ・マッラ王と王妃のものである。
  



ライオン像
 


 寺院の4隅にはそれぞれ動物をかたどった像が配置されている。正面(西)に建つのはライオンの像。
  



ゾウ像
 


 南側にはゾウの像。
 



グリフィン像
 


 そうかと思えば空想上の動物もいて、東側にはグリフィンの像が設置されている。グリフィン(グリフォン)は、顔と翼が鷲(あるいは鷹)、体がライオンの姿をしていて、ギリシア神話にも登場する。一説にはギリシア神話がヒンズー教の動物を取り込んだのだとも言われるが、こうしたものを見ていると西洋と東洋の交流のスケールの大きさを感じさせる。
  



翼のあるライオン像
 


 さらに北側にもライオンの像があるが、こちらは何と背中に翼を持っている。
   



チャング・ナラヤン寺院の支柱
 


 チャング・ナラヤン寺院は、装飾の施された支柱が見所。たくさんの腕を持つ神様の姿が彫り込まれている。
  


  
チャクラの柱                  ほら貝の柱
 


 正面の両端には2つの塔が建っている。向かって左がチャクラ
の形をしている。チャクラとはヴィシュヌ神の円盤型の武器のこと。向かって右がほら貝の形をしている。どちらもヴィシュヌ神のシンボルである。
  



ネパール最古の石碑
 

  
 チャクラの柱のすぐ後ろに建つ古ぼけた石碑。実はこれはかなり重要なもの。5世紀に刻まれたネパール最古の石碑である。この石碑によってマッラ王朝より前のリッチャビ王朝の実在が確認されるそうなのだが、もちろん僕には読めない。
    



巨大なお米
 


 チャング・ナラヤン寺院の裏手の屋根に白い繭のようなものがはりついていた。聞けば、それは古いお米なのだという。しかし直径50センチはある。お米のオブジェなのだろうか?
    



ヴィシュヌ神とガルーダ像
    


 その他、チャング・ナラヤン寺院の境内を見て回る。北西の隅にはガルーダにまたがったヴィシュヌ神の像が建っている。このデザインどこかで見たことが…と思ったら10ルピー札の図案のもとになっているとのことである。
  



マンダップ・ナラヤン像
 


 北東にあるマンダップ・ナラヤン像。これもビシュヌ神の化身である。古いものらしく、その前に跪くガルーダの首は無くなってしまっている。
   



マハヴィシュヌ像
 


 そのすぐ横にはステージがあり、そこの上にもマハヴィシュヌ像が安置されている。こちらもやはり、ガルーダに乗ったヴィシュヌ神の姿をしている。
  


  
マハデーブ・シヴァ祠堂
            

シヴァリンガ
 


 北西の隅に小さな祠堂があるが、マハデーブ・シヴァの祠堂。中を除くとシバ神のシンボルであるシヴァ・リンガが安置してあった。
   


  
ナラシンハ像                   ビクラーンタ像
 


 南西の隅にはいくつかのレリーフがあるが、様々なポーズをしていて見物である。
 例えばナラシンハ像やビクラーンタ像など。これらはいずれもヴィシュヌ神の化身である。
 獅子の顔をしたナラシンハは悪魔を抱きかかえてはらわたを取りだそうとしているらしい。また、ビクラーンタは左足を大きくあげた独特のポーズを取っている。
     



ナラヤンとアーナンタ像
 

 
 たくさんの首を持つナラヤンの像もある。何でも10の首と10の腕があるらしい。下に横たわっているのはナラヤン神の従者アーナンタだそうである。
  



チャング・ナラヤンからバクタプール方面を望む
 


 帰りは、チャング・ナラヤン寺院の裏側(東)の出口から出てみた。丘の斜面を歩いていると、バクタプールの方が見えた。チャング・ナラヤンはカトマンズよりも高いところにあるため、非常に見晴らしがいい。すっかりすがすがしい気分になった。
 チャング・ナラヤンに行く機会はなかなか無いかもしれないが、見どころたっぷりで一度は行く価値がある。僕自身もぜひもう一度来てみたいと感じた。
  



チャング・ナラヤンの町で出会ったヤギの親子
 

(2009年8月29日)

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