you make me live , you make me love , ahd you make me real .






 午前の馬上調練のさなかに、ふとエオメルはメドゥセルドを見上げた。
王宮の連なりから少し離れたところに、新しく建てさせたセオドレド王子の別館があった。
(−−まだあの中には入ったことがない。セオドレドも来いとは言わない・・・)
建物の側面のガラスが、陽射しを反射して光っている。
そのきらめきを若いロヒアリムは馬を駆けさせながら眺めていた。



 近頃は従兄とあまり会話をしていないエオメルである。
幼い時から、セオドレドには実の兄のように甘えて我儘を聞いてもらってきた。
しかし、かれが少年から青年に成長して一人の騎士として相手に接するようになった時、従兄との間には厳然とした身分の違いが存在していたのである。
これからは、世継ぎの王子に対してへりくだり、膝を屈するべきなのだと理解しているのだが、エオメルはそのことに慣れないでいた。
しかもセオドレドの方は、まだまだ従弟が子供に見えているらしい。
王子の態度は今までと変わらずに優しかった。
だがそれはかれを騎士として扱ったものではなく、幼い少年に対する態度でしかないことが、気に食わなかった。

 正午になって訓練が終わると、エオメルは従兄の館に入り込んだ。
そっと応接間の扉を開けてみる。
中央のテーブルの中には中つ国の大きな地図が広げられていた。
そして、床に複数の足跡が残っていた。
(このところ、ゴンドールから使者が来ている。殿下はかれらをこの部屋に招いたんだ。でもわたしには何も教えてくれない)
大きな窓から陽射しが明るくさしこむ部屋で、エオメルは急に胸苦しい思いに襲われた。
かれはそれを振り払うようにずかずかと室内に足を踏み入れた。



 午後、世継ぎの王子が別館を訪れると寝室で従弟が寝ていた。
「何をしているんだ、エオメル」
驚いて声をかけると、相手はヘイゼルグリーンの瞳を開いて王子を見た。
「別に何も」
略式だがそれなりに重量のある軍装のままの従弟は、柔らかいベッドに身体が半分沈んでいた。

 最近めっきり身長が高くなり、王子と変わらない背格好のエオメルである。
だがその顔立ちにはまだ幼さが残っていた。
なんとなくふて腐れたようすで、薄い掛け布を乱して寝転がったまま従兄を見上げている。
「ここは休憩所じゃないぞ」
セオドレドは歩み寄ると枕元に立った。
そして従弟の肩に触れながら「起きたまえエオメル、これから槍術の訓練があるだろう」と言った。

「休みます」
かれが答えると、従兄は肩をすくめた。
「なら、自分の部屋に帰れ」
それを聞いたエオメルは鼻にしわを寄せた。
「・・・わたしはここが気に入りました。今日からここに住みます」
「勝手なことを言うな」とセオドレドがさほど意に介した風でもなく言う。
「勝手ですよ。何が悪いんです」
エオメルはそっぽを向いた。そして相手に背を向けてうつ伏せになった。
顔をうずめた枕からは、ひなたの匂いがした。
「エオメル・・・」と従兄がかれの名を呼んで髪を撫でたが、かれは返事をしなかった。

「そういえば最近、あまり話をしていないね」
−−あなたが、わたしと会話する必要を感じていないようだから。それにわたしにはまだ、あなたの役に立つような知識も経験もないし・・・。
エオメルは今この時にも、久しぶりに二人きりになれた機会を捉えて、何か王子にとって有益なこと、この従弟は頼りになると思ってもらえるようなこと−−ただの従兄弟同士の会話ではなく、一人前の騎士として認めてもらえるような話が出来ればと思っていた。
だが、何も言うべきことが思い浮かばず、ただもどかしさだけが募っていく。

「せめてその胴衣は脱いでくれないか。教練のあと、着替えてないだろう?」
エオメルはうつ伏せたまま「あなたの新品のベッドを汚して悪かったですね」と不機嫌な声を出した。
「困った子だ」とセオドレドが苦笑する。
「そんなに気に入らないなら、脱がしてください。わたしは眠くなってきました・・・もう何もしたくない」
王子は「仕方ないな」と言いながら従弟の身体に手をかけて、固い皮の胴着や、剣を吊るしたベルト、ブーツを取り外してくれた。
目を閉じたまま身が軽くなるのをかれは感じた。
そして「こっちまで眠くなるよ」と従兄が呟くのを聞いていた。

 エオメルはいつのまにか、本当に睡魔に引き込まれてしまったらしい。
目を覚ますと、隣にセオドレドが横たわっていた。
−−あ・・・と見つめて、安らかな寝息をもらす白い頬に、指の先で触れてみた。
普段こんなには間近で見ることのない、従兄の顔をじっと眺める。
子供のころ見上げていた姿とさほど変わってはいない−−いくらか眉間に刻まれたしわが深くなっているくらいだろうか。
(もう随分、一緒に遠乗りにも出かけていない)
かれがそっと押し殺したため息を吐き出した時、「そんなに見るな」と急に王子が言った。
エオメルは驚いて瞳を見開いた。
(起きてたんだ)
カッと頬が熱くなる。

 かれは顔をうんとしかめて見せた。
セオドレドはエオメルの肩をぽんぽんと軽く叩いて、身体を起こした。
「そろそろ午後の軍議の時間だな。わたしは行かなくては」
さほど時は経っていないらしく、まだ陽が高い。
「エオメル、夕方までにはここから出て行くんだ。夜には客人が来るんでね」
「ゴンドールから・・・ですね。両国で何か軍事の計画を進めているのですか」
セオドレドは答えずに、ただ従弟の肩に触れていた。

−−わたしにはまだそういう事柄を知る資格がないとお思いですか・・・と尋ねるのは嫌だった。
だからそのかわりに「わたしも軍議に連れて行ってください」と言ってみた。
かれは主要な騎士たちが集まる重要な会議の席には、まだ一度も出たことがない。
父のエオムンドから引き継いだ子飼いのエオレドたちは、若い領主がエドラスで武勲を挙げて、やがて軍団長の地位を授かることを期待している。
部下たちの心情は理解しているが、あまり目立つ振る舞いをすると古参の武将たちから「若造が」と言う目で見られることがあり、かれは出過ぎぬように身を処していた。
だが世継ぎの王子の随伴という立場なら、かれが軍議に出ても誰も何も言わないだろう。

「隅で大人しくしていますから。わたしも一緒に」
エオメルの頼みを、従兄は「きみの来るところじゃない」とそっけなく断った。
「お願いです!」
相手がそのまま寝台を降りようとするのを、腕をつかんで引き止める。
「あなたの側で学ばせてください」
だがセオドレドは首を横に振った。
「きみはまだ若すぎる。もっと実戦で経験を積んでからでないと。あと何年か待つんだな」
「わたしだって色々考えています。今すぐにもお役に立ちます」
「そうは思えないね」

 エオメルは唇を噛み締めて従兄をにらんだ。
セオドレドにつまらぬ奴と見捨てられたような気がした。
「さあ、離してくれ」
従兄がそっとつかんだ手を外そうとするのを、かれは許さず、ぐいと引っ張って相手を寝台に押し倒した。
「連れて行ってくれないなら、あなたをここから出さない」
「エオメル、子供みたいな我儘を言うな。わたしは忙しいんだ」
「子供じゃない!」
エオメルは従兄に馬乗りになって叫んだ。

 セオドレドはフーと息を吐き、困った顔で相手を見た。
「だだをこねるなエオメル。わたしをここから出さないって?それでどうしようというんだ」
かれは大きな瞳で従兄を間近に見つめながら言った。
「・・・そうですね、情事でもして、大人の関係になりましょうか」
セオドレドが意表を突かれて目を見開いたので、エオメルは少し満足した。
かれは従兄を驚かして、慌てさせてやりたいと思ったのである。
「なるほど。−−じゃあ、ね。わたしにキスしてごらん」
目を細めてそう言う従兄に、「いいですよ」と挑むように告げてかれは唇を押し当てた。

 ただじっと皮膚を重ねあうだけの口づけに、「ヘタだね」とセオドレドが顔を背ける。
だがその瞳は笑っていた。
「だって、したことがないから」
エオメルは悔しまぎれに言うと、もう一度強引に唇を重ねた。
開かれた歯の間から舌を差し入れて乱暴に口内を探る。
すると、従兄の指がかれの頭を強く抱え寄せた。
顔の角度を変えられ、逆に舌を捕らえられた。
エオメルはびくりと震えて、一瞬逃げようかと躊躇した。
だがそのまま舌が絡み合うのに任せる。
息が苦しくなるほどむさぼられて、「う・・・」と呻いた。

 顔を上げてはぁはぁ息を継いでいると、従兄がかれの頬に手を当てて言った。
「もういいだろう?わたしは行かなくては」
呼吸を整えながらエオメルはセオドレドをじっと見た。
「どくんだエオメル」
「・・・わたしと一緒にいるのはそんなにつまらないですか」
「何を言ってる」
「あなたは一刻も早く、わたしから逃げ出そうとしているようだ」
「そんな訳ないだろう」

 自分をにらむエオメルの瞳が、妙に頼りなげに揺れていることにセオドレドは気づいた。
そしてまだごく若いこの従弟には、もう頼るべき父も母もいないのだ−−と改めて思った。
王子は従弟の背中に手を回して抱きしめた。
そして「わかったよ。ここにいよう」と呟いた。

 エオメルがセオドレドの上着をはだけて首筋に口づけると、王子はくすぐったがって身をよじった。
クスクス笑う相手の身体に覆いかぶさりながら、かれは従兄の皮膚のあちこちに痕を残していく。
汗と干し草の匂いがする・・・と思っていると、身体に回されたセオドレドの腕が巧みに動いて、エオメルの腰からズボンと下着を引き下ろした。
「あ・・・っ」
尻の肉を掌でぐっとつかまれ、エオメルは声をあげた。

「きみ、重いよ」
そう言ってセオドレドが従弟を自分の上から押しのける。
横に倒れたかれの身体をすぐに抱き寄せると、王子が肌を密着させて足を絡ませてきた。
かれらは抱きしめあって互いの身体のぬくもりを感じた。
触れ合ってみると、まだ幼いと思っていた従弟の身体にしなやかな筋肉が張り巡らされていることがわかった。
セオドレドの指がエオメルの腹を撫でさするように下ろされる。
そして従弟のペニスをそっと握りこんだ。
「ん・・・」
ため息をついて身を震わせるエオメルの手を取ると、セオドレドはもう片方の手で自分の下腹部に導いた。

 柔らかなベッドの上で、かれらは相手の性器を愛撫しあった。
幼い頃から共に暮らしてきた従兄を、これほど鮮烈に感じるのは初めてだとエオメルは思った。
強弱をつけた刺激にかれのものは固く勃起して、すぐに従兄の指を濡らした。
「ふ、はぁッ」
今までに経験したことのない快感にかれは激しく喘いだ。
自分から腰を押しつけ、従兄の指使いに夢中になっていると、つい相手への愛撫がおろそかになる。
「随分、いいようだね?」
セオドレドに囁かれてエオメルは頷いた。
強く上下にこすられて「あっあっ」とよがる。

「誰かにこういうことをしてもらうのは初めてなのかな」
「は、はい」
「そうなのか−−悪い友達がいなくて、幸いだね」口調に揶揄を含ませながらセオドレドはいい、さらに熱心にしごきたてた。
「自分でしたことはあるんだろう?」
「それは−−ありますよ、あッ、でも、ずっといい・・・」
相手にしがみついてエオメルは身体を震わせた。
「はぁッ、う、あっ・・・いく・・・!」
そして甘く痺れる感覚が、やがて頂点に達した。

 ハァハァと肩で息をする従弟に「早いよ」と言って、王子は濡れた指をかざして見せた。
エオメルの顔が真っ赤に染まる。
「若いんだから仕方ないか。だがエオメル、わたしの方は不満足だ」
従弟の瞳を捕らえながらセオドレドが「どうするのかな。きみは手でするのがヘタだし」と呟くと、かれは「それは・・・まだ、よくわからないからです。これから慣れます」と言って懇願するように相手を見た。
「自分から誘ったんだろう」
つっけんどんに言われて、エオメルの表情が歪む。
セオドレドは意地の悪い笑みを浮かべると、片手で従弟の頭をグイと押し下げた。

「口で出来るか?」と問われて、かれは目を見開いた。
「きみには無理かな」
「・・・出来ます」
エオメルは身体をずり下げると、ためらいがちに従兄の性器に唇を寄せた。
「舌で舐めるんだ・・・噛むなよ」
セオドレドの要求に応えようと、かれは生まれて初めて他人のペニスを口に含んだ。
が、さすがに抵抗を感じずにはいられない行為である。
どうしても舌をなめらかに動かすことが出来ず、先端を唇で覆ったまま戸惑っていた。

「どうした。それじゃわたしは何時までたってもいかないぞ」
王子が苛立った声をだす。
かれは口の中で「でも」と呟いて従兄を見上げた。
すると髪を乱暴につかまれ、引き剥がされた。
「あっ?」
と声を上げるうちに突き倒しされて仰向けにさせられ、顔の上に跨られた。
そしてセオドレドのペニスがエオメルの唇の間に強引に押し込まれる。
「んう・・・!」
従弟は瞳を見開いて王子を受け入れた。

 拒否する気はなかったが、無理に口内に侵入されて一瞬息が詰まる。
「唇を閉じていろエオメル。だが歯はたてるな」
セオドレドはかれの頭をしっかり抱えると、腰を動かして喉の奥まで突きこんだ。
「ぐっ、ん、くぅッ」
エオメルの呻き声にはかまわず、深々と抜き差しして、従弟の熱い口腔を味わう。
セオドレドの物が大きく張り詰めてエオメルの喉をふさぎ、かれの呼吸を苛んだ。
思わず吐きそうになって、えずいてしまう。
「く−−うぅ・・・ッ!」
唇を犯す従兄の欲望の生々しさに、かれはあえぎながら、目に涙を滲ませた。

 王子は更に激しく腰を打ちつけ、湿った感触を愉しんでいた。
だがエオメルが本当に嘔吐してしまいそうになっているのを見極めると、達する寸前で引き抜いた。
「ふはっ・・・」
大きく息を吸い込むエオメルの頬に、セオドレドの放ったものがピシャッ、と叩きつけられる。
「アッ」
熱い液体が視界を掠めて飛び散った。
エオメルは顔を精液で濡らしながら、呆然として従兄を見た。

−−経験のない子供相手に、少々過激なことをしすぎたか・・・?
セオドレドの端正な顔に、ちょっと微妙な笑みが浮かんだ。
寝転がったままぼうっと宙を見つめている従弟の顔を、掛け布で拭いてやりながら、「きみがちっとも舌を使わないからさ」と言い訳じみた口調で王子が言う。
エオメルは瞬きすると、セオドレドを振り仰いだ。
「いつも・・・こんなことを誰かとしているんですか?」
「さあね」
髪をかきあげて王子が答える。
「もう軍議が終わる時刻だな。一応顔を出して、すっぽかした言い訳をしないとまずいだろうね」

 脱ぎ散らかしていた衣服を手にとって、袖を通そうとしていると、身体を起こしたエオメルがその動作を邪魔した。
「まだここにいて下さい」
「お遊びは終わりだよ、エオメル。もう充分だろう」
「充分なんかじゃありません。あなたはやっぱりわたしを子供だと思ってる!」
王子が驚くほどの激しい声音で従弟は囁き、身体をぶつけるようにして抱きついてきた。

「エオメル・・・」
「もっと、何でも教えて下さい。他にあなたはベッドの中でどんなことをするんです」
「それは−−ねえ。大人には色々秘め事があるからね。きみがそんなに知りたがりだとは思わなかったな」
「わたしが知りたいのはあなたのことだけです」
従兄の肩に額をこすりつけてエオメルは言った。
「お願いです。我儘をいうのは今日だけにしますから・・・一日くらい、あなたを独占してもいいでしょう?」
すがる瞳で間近に見つめられたセオドレドは、「そんなふうに言われると、弱いんだよな」と呟いた。

 腕を絡ませあって互いの身体を撫でていると、エオメルの足のつけ根を探っていた従兄が、かれの双丘の奥に指を這わせてきた。
「アッ」
指の腹でぐっと押されてかれは声をあげた。
「そ、そんなところ、汚いですよ」
「平気だよ」
「でも」と言って身体を捻ろうとすると、「何でも教えてくれと言っただろう?」と言われた。
セオドレドの人差し指が秘所の入り口をゆっくり辿り、やがて肉をこじ開けて進入して来た。

「ん・・・!」
経験したことのない異物感に身体がびくんと跳ねる。
第二関節まで埋め込むと、セオドレドはもう片方の手で再びエオメルの性器を握った。
内壁を軽く押しながら、ペニスを揉みこんで刺激する。
「ハッ、アッ、あぁん・・・!」
前後からもたらされる快感に、かれは喘ぎ声を上げて従兄にすがった。
すぐに握られたものが固く勃ち上がって、露をあふれさせる。
「あ、い、いきそうッ」
びくびく身体をうねらせるかれの様子を見ながら、セオドレドはぐっとペニスを指で締めつけた。

「そんなにエキサイトするんじゃない−−すぐいっちゃう子は嫌いだよ」
「えッ、そ、そんなこと言われても」
エオメルが本気で抗議の声をあげると、従兄はおかしそうに笑った。
「楽しんでるのはきみだけだろう。フェアじゃないってことだよ」
「だって・・・じゃあ、どうしたらいいんですか」
そう言うエオメルの瞳が快感に潤んでいる。
セオドレドは「さあ、どうしようかな」と囁いて、従弟に口づけた。

 指を2本に増やすと、王子はさらに大胆に従弟の内部を掻きこすった。
「くっ、あっ、はあっ」
エオメルは声を洩らしながらも、「いくな」と言われたので達しないように耐えていた。
切なそうに呼吸を乱して唇を噛んでいる様子を、「可愛いね」と微笑ましく思いながら、セオドレドは相手の肉がうねって指を締めてくる感触に、ぞくぞくする感興を抑えきれないでいた。

(−−甘えたがりの従弟と、ただじゃれ合うだけのつもりだったが・・・)
セオドレドはエオメルの目を覗き込んで言った。
「ねえ。わたしはこれ以上のこともしたくなってきたよ。きみがかまわないなら、先に進んでしまいたいな」
「いいですよ。何でも教えて欲しいと言ったでしょう?あなたのしたいようにして下さい」
エオメルが瞳を輝かせてうなづく。
だがセオドレドはため息をついて唇の中で呟いた。
「わたしは誰よりもきみを愛しく思っている。そういう行為に及ぶのは、だから、可哀想な気がするんだよ。きみはよく判っていないから、そんな風に大胆になれるんだろうけどね・・・」

 指を挿入したまま、セオドレドは従弟の身体を手で押しやった。
「うつ伏せになるんだ。ほら、腰を上げて」
這わせた背後から、ウエストに腕を入れて抱えあげ、尻を突き出させる。
足を広げさせると、自分の指を飲み込んだままの後腔があらわになった。
「いやだ、見ないで下さい・・・!」
セオドレドの視線を感じてエオメルは恥ずかしがり、身悶えた。
王子は2本の指をつけ根まで押し込むと、肉壁のなかで回転させてねじってみた。
「あッ、はぁッ」
エオメルは、肛門を刺激されてあからさまによがっている。
その淫らな反応に、セオドレドは躊躇いの感情を捨てることにした。

 指を引き抜くと、従弟が「ひっ」とかすれた声をあげた。
「前戯はこれで終わり」
そう告げると、エオメルは這ったまま振り向いて「止めちゃ嫌だ・・・もっと」と催促した。
「前戯は、って言っただろう」
セオドレドが自分のそそり勃つものを指し示して「次はこれをきみの中に」と言うと、エオメルは驚いて瞳をいっぱいに見開いた。
「・・・そんなこと、出来るんですか」
「出来るよ」

 王子はそう答えながら、「−−だから、きみはよくわかってないんだろうなと思ってたんだよ。無理なようなら、止めてもいいよ」とそっけない口調で呟いた。
エオメルはむっとした顔になり、「止めなくていいです」と強く言った。
そういう表情をすると、従弟はまだひどくあどけなく見えた。
「きみがそういうなら、遠慮しないよ」
セオドレドは従弟の背中をそっと撫であげた。そして腰を抱えてあてがった。

「うッ・・・くうッ」
固くぬめる感触が、肉を掻き分けて押し入ってくる。
先端だけ埋没させてセオドレドは尋ねた。
「嫌ならそう言えばいい」
「い、嫌・・・じゃない!」
意固地な口調でエオメルが答える。

 だがかれは大きく息を吐くと、「平気−−だけど、ちょっと怖いんです」と従兄に言った。
「ああ。きみは少し怖がったほうがいいな」
そう言ってセオドレドはさらにエオメルの足を左右に広げさせた。
「ほら、協力してくれないと奥まで入らないよ」
背後にのしかかった従兄が、かれの中心を強引に刺し貫いてめり込んできた。
「あ、あう」
エオメルは息を詰め、シーツを握り締めて耐えた。
根元まで挿入し終わると、セオドレドは「・・・狭いな」と感嘆した。

「ん。はあ・・・ッ、う・・・」
従兄に柔らかく突かれて、エオメルは甘い喘ぎを洩らした。
いっぱいに押しひろげられて塞がれた部分は、セオドレドの性器でこすられるほうが、指で刺激されるよりも快感だった。
「熱い」と従兄が言った。
「きみの中はこんなに熱いのか−−知らなかった」
ゆっくり腰をうねらせると、エオメルが「アッ、あぁ・・・っ」といい声をあげる。
それはそれで快感なのだが、セオドレドは少しじれったくなってきた。

(開通したばかりでまずいかな)
と思いつつ、王子は「動かすよ」と言うなり、グイッと乱暴にえぐった。
「ひぁッ」
悲鳴を上げる従弟にはかまわず、容赦なく突き込む。
「ああッ、痛い・・・!」
エオメルは腕を突っ張って首を振った。
「そ、そんなに激しくしないで下さいッ」
「わたしはこの方がいい」
「はぁっ、くッ」
「したいようにしていい、と言ったのはきみじゃないか」

 そのまま揺すり上げていると、苦痛に耐えかねたエオメルが這いずって逃げようとした。
「い、痛い、もう嫌だッ、離して下さい」
するとセオドレドは従弟の腰を抱えていた両手をぱっと離した。
「いいさ、わたしの相手が嫌だと言うなら無理強いはしないよ。この部屋から出て行くがいい」
「・・・!」
エオメルは泣きそうな顔で従兄を振り向いた。

「わたしはきみのかわりになる誰かを呼ぶまでだ」
「嫌だ!ばかッ、意地悪!」
思わず涙を浮かべてわめくと、セオドレドが苦笑する。
「きみが離せと言うからだろう」
「・・・もう言いません。だから、もっと優しく・・・」
「無理だね」
冷たく言われて、エオメルが「うう・・・」と泣き声混じりに呻く。

「我慢するんだ、エオメル。そしてわたしを満足させてみたまえ」
従兄の傲慢な言葉に、若いロヒアリムは相手をにらんで訴えた。
「−−あなたを満足させたら、今後この部屋にはわたし以外誰も入れないと約束してくれますか」
セオドレドが「それはきみ次第だ」と答える。
エオメルはなめらかな頬を引き攣らせて従兄を見つめていたが、やがて「いいですよ。もう、どうにでも好きに扱ってください」と言って枕に額を押しつけた。

「あ・・・あ、う・・・あぁッ・・・」
寝台がぎしぎし軋み、それに合わせてエオメルの唇からきれぎれに喘ぎが洩れていた。
部屋には午後の陽射しが差し込んでいる。
セオドレドは甘い陶酔と凶暴な衝動に突き動かされるまま、従弟の身体を責めさいなんでいた。
突きこまれ続けたエオメルの後腔は熱く溶け、更に奥へと誘うようにうねっている。

「ひッ、う、く・・・!」
王子の動きにつれて、あげる泣き声がなまめかしい。
責めたてながら、セオドレドは従弟の股間をしごきあげた。
「はあっ、あッ、あ・・・あ・・・!」
金色の髪を乱してエオメルがよがる。
残酷な荷責に、結合した部分からは血が流れているが、従弟はもう痛覚も快感もまぜこぜになっているらしい。
「すごくいいよ。エオメル−−ずっとこうしていたいが・・・」
セオドレドは快楽に耽溺しながらも、どこか醒めた口調で囁きかけた。
「どんな愉しみにも、終わりが来るものだからね」

 そして従弟の息を止めてしまうくらいの猛々しさで打ち込みはじめた。
「ア、アアッ・・・ひぃッ、うぁーッ!」
激しい律動に、エオメルが苦悶の悲鳴を迸らせる。
耐え難い痛みの底に突き落とされたかれは、ただの獣と化してのたうちまわった。
灼熱の官能の中で、セオドレドは目を閉じてむさぼりながら、
−−まるで、わたしとエオメルと融合して、細胞が交じり合ってしまいそうじゃないか・・・?
と不思議な胸苦しさを味わっていた。
それは今まで誰と行為を行っても感じたことのない、やるせなく甘美な感覚だった。
愛しさが過ぎて、このまま相手を引き裂いてやりたいような衝動に襲われる。
王子は「きみが好きだよ」と優しく告げて、最奥に突き入れた。



 日はだいぶ傾いて、陽光に赤みが増していた。
若いロヒアリムは従兄の腕に抱かれて、身体を震わせている。
初めての行為で過剰な悦楽を経験してしまったために、セオドレドが達したあとのエオメルは舌を噛みそうなほどの痙攣をおこした。
王子はかれの口に掛け布を突っ込むと、身体を撫でさすって筋肉の緊張をほぐしていった。

 ようやく落ち着いたエオメルは、従兄を見上げて言った。
「あなたはさっき、わたしを好きだといいましたよね」
セオドレドがかれの金髪を撫でながら笑みを浮かべた。
「さあ。どうだったかな」
「言ったじゃないですか、最後に」
「最後って何の最後のことだろう」
エオメルは顔を赤らめると、従兄の腕をぎゅっとつねった。
「痛」
「あなたのそういう意地悪なところが嫌いです」
「わたしも、耳聡い子はあまり好きじゃないな」

 大きな瞳で相手をにらむと、かれは腕を突っ張って従兄の中から逃れでた。
そして「じゃ、気の合わない者同士でこれ以上一緒にいることもないですね」と言ってそっぽを向いた。
セオドレドは笑いながら従弟の髪をもてあそんでいたが、やがて相手の上に覆いかぶさるとその瞳の奥を覗き込んだ。
「わかったよ−−きみが好きだと言ったよ。認めればいいんだね?」
「・・・もう一度言ってください」
エオメルが王子に要求すると、「きみが言えよ」と言い返された。

「ううーん」とかれは唸った。
「面と向かっては言いにくい」
「だろう?」
ローハンの従兄弟同士は、瞳を見合わせて笑い声を上げた。
やがてエオメルが王子にぎゅうと抱きついて言った。
「さっき告げてくださった言葉が本当なら、いいんです・・・」
セオドレドは「本当だよ」と囁き返した。
そして絡みついてくるエオメルの熱い肌を、束縛するようにきつく抱き締める。



−−わたしを独占してもいいよ・・・期限は無期限だ。
と胸のうちでセオドレドは相手に告げた。

20050411up




エオメル(誘い受ですな今回は)お初話やっと完成してホッ。
ただもういちゃついてるだけ〜な話です。な、なんかいやらしいし・・・ゲフッ

何はともあれセオドレド/エオメルはラヴフォエバ〜でございます。