scene*6
イシリアンの水辺一面にアシが生い茂っていた。
「見事に高いな」
ローハンの国王が感心して手を伸ばした。「わたしの背を越えている」
ミナス・ティリスを訪問した帰り、新執政の領地に立ち寄ったエオメル王である。
その日、ファラミアは義兄を案内してイシリアンの景観を見せてまわっていた。
「幼い頃に、よくここで兄とかくれんぼをしました・・・」
−−ファラミア!こっちだ。
軽やかな声。ふりかえった時の、向日葵のような笑顔が脳裏に蘇る。
「それは楽しそうだ」
義兄が頷き、「ではまず執政殿が鬼だ」と言うなり、茂みの中に駆けていった。
「エオメル王!義兄上・・・!」
ファラミアは驚いて声を上げた。
(一国の王だというのに、無邪気な方だ)
アシの茎をかきわけて中に入っていく。柔らかな穂が、左から見ると金に、右から見ると銀にきらめいて眩しい。
アシの合間に、ハチミツ色に光る金髪が揺れていた。かれは音を立てずに廻り込むと、相手の前に飛び出して腕を広げた。
「見つけた!」
義兄が驚いて立ち止まり、続いて破顔した。
「ははは!すごい。執政殿はまるで穂を渡る風のように素早い」
その笑い顔に、心が動いた。思わず相手を抱き寄せる。
「執政殿」
呼びかける唇をふさいで、ファラミアはエオメルの言葉を封じたのだった。
顔を離すと、ローハン王がかれをまっすぐ見つめて囁いた。
「こういうことも、亡き兄上殿と楽しんでいたとか?」
「・・・。それは、どうでしょう・・・」
うろたえて言葉を濁す義弟を、エオメルは軽く押しやって言った。
「誰かと同じことをするのは芸がない。もっと別の趣向で楽しませてもらいたいものだ。ファラミア殿、さあもう一度!」
そう告げて、長い金髪がかれの前から走り去る。
「エオメル殿」
追いかけようとすると、何故か足がもつれた。
「お待ちを・・・!」
数秒のちに応えた声はすでにかなり遠かった。
「何をしてる?早く見つけないとわたしは国に帰ってしまうぞ」
ゴンドールの新執政はアシの茂みをかきわけて、相手の姿を追い求めた。どこからか忍び笑う声が聞こえる。
光る、揺れる穂先がファラミアを甘美に惑わせた。
20071125up
調子にのって小悪魔気取りの馬王ですぞ。
画像が葦じゃないような。なんちゃってふわふわ素材を使わせていただきました。
秋の川辺でウフフアハハな義兄弟〜。
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