scene*10
(ファラミア、朝だぞ)
大好きな兄の声が耳元で聞こえる。気付かず寝入ったふりをしていると、そっと唇が触れて、甘いキスで起こされるのが幼いころからの兄弟の慣習だった。
それはかれが二十歳をすぎた今でもかわらない。
だが、ファラミアは自分は今、夢を見ているのだとわかっていた。
ボロミアが戦場に旅立ったのは一昨日のことだ。
(ファラミア・・・)
かれの胸を温かい想いで満たす優しい声。
執政家の次男はゆるやかに覚醒に向かう眠りの中で、もっとこの夢を見ていたいと願った。兄のいない石の都はあまりに味気なく、寂しい。
ふいに顔を上向かせられると、見慣れた美しい顔が間近でかれに微笑んだ。そして唇が寄せられ、舌が甘美に忍び込んできた。
(ん・・・ボロミア・・・)
深い口づけに陶然となる。それはずっと望んでいながら叶えられたことのない行為だった。ボロミアの愛情は深いが、あくまで肉親へのものだ。
(兄上、わたしは・・・見てはいけない夢を見ている・・・)
このまま相手を力の限り抱きしめ、指をからめ胸の鼓動を重ねて堕ちてしまおう−−その衝動に駆られた途端、目が覚めるのがわかった。
愛する者の姿と吐息が遠ざかる。
掴もうと思った瞬間に霧散した願いの痛みにかれはあえいだ。
「兄上・・・!」
声を上げながら目をあけると、少年が大きな瞳を見開いてかれを覗き込んでいた。
「うわっ」
ファラミアは思わず叫んだ。そして寝台から体を起こそうとしたが、かれの腹の上に座り込んでいる少年がどこうとしないので動けないのだった。
「あ、あなたはどなたですか」
金髪の少年はかれの問いに「エオメル」と答えた。
(エオメル?−−・・・ああ)
ファラミアは思い出した。数日前ローハン軍を率いてミナス・ティリスを訪れた隣国の王子が、従弟だと言って連れてきたのがこの子だった。
セオドレド王子はゴンドールの軍隊に合流するとすぐ、ボロミアと共に出撃したのだが、まだ年若いロヒアリムの少年を都に置いて行ったのだ。
「エオメルの面倒を見てやってくれ」とファラミアは王子に頼まれた。
だが少年は勝手にあちこち走り回り、馬に乗ってペレンノール野を駆け巡ったりと元気いっぱいで、音楽と読書好きなかれとはあまり接点が見いだせなかった。
まあ、一人で楽しそうだし、と話をすることもなかったのだが・・・。
「どうなさったのです、エオメル殿。わたしに何かご用でも」
尋ねると少年は質問には答えず、「おれは兄上じゃないよ」と言った。
「え?いえ、あれは」
寝ぼけて一人ごとを・・・言いかけると「でもおれも兄だ」とエオメルが笑った。
そういえば確か妹君がいたはずと思いだしていたら相手が急に抱きついてきた。
「エオメル殿?」
そしてびっくりしているかれの頭をかかえて、「おれ、弟が欲しかったんだ」と言い髪を撫でるのだった。
寝台の上で、いくつも年下の少年の胸に頭を抱かれ、「おおよしよし」などと言われてファラミアは唖然とした。
−−やがてかれは、愉快になった。
幼い子供のように抱きしめられたのは、久し振りのことだ。ロヒアリムの体温は熱く、まだきゃしゃな腕と細い胴が不思議に頼もしかった。
かれは相手に抱かれたまま言った。
「では、エオメル殿はわたしの新しい兄上になってくださるのですね」
「うん。いいよ」
二人は顔を見合せて笑い合った。
ファラミアは心地よいぬくもりに包まれながら、また睡魔にひきこまれるのを感じた。
***
「よしよし。いい子だ。・・・ふわあ」
再び眠りに落ちたゴンドールの公子をなでなでしながら、エオメルはひとつあくびを洩らした。この部屋、いい匂いがする。そしてこの人もいい匂い、とかれは思った。
今日も早起きして館を探検していたエオメルである。ファラミアの部屋に入り込むと、爽やかな良い香りがした。そしてベッドに繊細な顔立ちの青年が眠っていた。
その綺麗な顔をじっとみているうちに、なにかもやもやんとしてきて、つい口にチ○コを突っ込んでしまったのだが、ばれなくてよかった。
と安心して自分も寝てしまうことにした13歳のエオメルだった。
20081014up
下品に落としてみました。バカか!(`Д(#┗┐ヽ(`Д´)
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