はじめ通信8−4−30 シリーズ「この期に及んで?!」 <2>何の根拠と道理があっての”暫定税率復活”か ●4月30日、国会では自民・公明与党により、参議院で否決されたガソリン税の暫定税率の期限切れを復活させ、ガソリン値上げにつながる法案が、「衆議院3分の2条項」により再可決され、5月1日から再び暫定税率がかかることになりました。 驚いたことに自民・公明の国会議員は、地元で「暫定税率はもう無理だ」と発言したと言われる人も含めて、ほとんど造反もないまま賛成しました。国民よりやっぱり党利党略が大事なのでしょうか。 ●一方で、東京都の猪瀬副知事などは、道路特定財源を地方の自主財源にすべきだと盛んに主張し、政府に対して、いかにも対立しているようにふるまっています。 石原知事も、一時この説に乗って、都が国に代わって暫定税率分の独自課税を表明しましたが、マスコミから「東京だけそんなことをしたら都内のガソリンスタンドは全部つぶれるのを分かっているのか」と酷評されて、後日、勇み足だったと事実上撤回しました。 では、都は特定財源の自主財源化で何か都民に役立つ活用を考えているんでしょうか。 ●今回は、東京都建設局が発行してきたパンフレットを基に、都が道路特定財源をどう活用してきたのか、今後どうしようとしているのかを見て行きたいと思います。 まず右の、上の画像を見てください。 現在、都の建設局が道路特定財源や、暫定税率存続のキャンペーンに使っているパンフレットの表紙です。 ここでは「東京都の主張」として、暫定税率の延長を訴えているだけではありません。項目の2では、悪名高い「中期計画」(根拠を明確にしないまま10年間で59兆円を道路整備に使うという計画)に、3環状道路や骨格幹線道路を位置づけるよう主張し、「道路特定財源を全て道路整備に充当すること」を要求しており、項目の3でもしつこく道路財源は「受益者負担の趣旨に照らし、本来の目的である道路整備に使う」よう求めているのです。 ●猪瀬副知事は、道路財源を地方の自主財源とすれば、道路以外にも使えるようになるかのような発言をさまざまな場所で行なっていますが、このパンフレットの「東京都の主張」は、あくまで道路財源は、車関係の税金だから「受益者負担」で道路に使えと言っており、この主張はまったく変更されていないのです。 ●もう一方で、下の画像のように、建設局パンフレットでも、暫定税率がなくなると「歩道整備が遅れる」とか「連続立体交差ができなくなる」など盛んに宣伝されており、区では区道整備工事をストップさせたところも出ました。実態はどうなのでしょうか。 ●左下の画像で、決算が確定した06年度の道路整備関係の費用の内訳を見てください。 東京都の「道路橋梁費」(道路関係の費用の総額)は2864億円ですが、このうち道路特定財源は、約半分の1375億円です。 ところが、道路予算のうち、約4割に当たる1170億円は、骨格幹線道路や高速道路、国道を造るための国直轄事業で占められています。 今、東京でのいわゆる大型道路や高速道路は殆どの場合、みどりや環境を著しく破壊したり沿線住民の大規模な追い出し、財政的にも無駄が多すぎるため、多くの反対運動が起きています。 ●一方で、パンフレットに紹介されているような、住民にとって必要な歩道の整備や道路補修、連続立体交差などには、どの程度の予算が回されているのでしょうか。 下の表で、水色の部分は、都民に役立つ道路がふくまれている費用項目(もちろんこの中にも地域住民にとって認められないものもあります)ですが、合計でも道路関係費用総額(2864億円)の約48%です。 道路特定財源の、暫定税率がなくなったとしても、無駄な道路予算をきちんと削減すれば、都の新たな財源を投入しなくても歩道整備や交通事故防止や連続立体化工事も中止することなく継続することは十分可能ですし、仮に万が一、不足がでたとしても、東京都の豊かな独自財源(社会資本整備基金などはそのためにあるのですから)を活用すれば、都民が切望する分野をストップしたり遅らせる必要など、全くないのです。 ●パンフレットの”困った顔の女性”のイラストは、暫定税率がなくなってしまった場合より、ムダ遣いと批判されている道路であっても、何が何でも造り続けながら、都民が困っている災害復旧や歩道整備の遅れには、なかなか予算を回さない、今の都の姿勢にこそむけられるべきと言えるのではないでしょうか。 ●では、道路特定財源の一般財源化についてはどう考えるべきか、都の建設局のホンネに対して、都民の目線で、次回に考えてみたいと思います。 |