【小ネタコレクション File042】
JRで日本一短かった樽沢トンネル
日本で一番長い鉄道トンネルは、みなさんのご想像通り本州と北海道を結ぶ「青函トンネル」で、その全長は53.85kmもあるそうです。それでは一番短いのはどこかというと、異論もあるようですが、JR限定で言えば、群馬県のJR吾妻線、岩島駅と川原湯温泉駅の間にある「樽沢(たるさわ)トンネル(隧道)」の7.2mというのがナンバーワンと言われています。
ところがこのトンネル、八ツ場ダム建設によって線路が付け替えられるため、あと数年で廃止される運命にあるという話が伝わってきました。これまで下の国道145号を何度も通っていながら、いつも素通りしていたのですが、今のうちに行っておかないと見られなくなってしまうと、あわてて日本一短い鉄道(JR)トンネル見物へと出かけることにしたのでした。
12月のくっそ寒いある日の朝、岩島駅側にある渓谷PAという駐車場にクルマをとめました。駐車場に設置された「吾妻渓谷周辺案内図」を見ると、「樽沢隧道 JRの日本一短いトンネル(7.2m)です。」としっかり書かれています。
この渓谷PAから「樽沢トンネル」まで700〜800mほど国道脇の歩道をトボトボ歩いていかなければなりません。実は、なぜこれまで素通りしていたかというと、トンネルのすぐ近くに駐車できるスペースがまったくなくて、歩いて行くのが面倒だったせいです(我ながらヒドイ理由だと思います)。
「●月●日、熊が出たので注意」という張り紙を発見して、ちょっと嫌な気分になりながら進みます。まあ、国道まで出てくる可能性は低いでしょう。はるか下に見える吾妻川は、温泉成分のせいかこんな色です。
当然こんな寒い中を歩いている物好きは私の他に誰もいません。10分ぐらい冬枯れの淋しい景色の中を歩いていくと、前方に短そうなトンネルが見えてきました。
おおっ! 確かに短いですね。なぜ切り崩さず、こんな短いトンネルを造ったのか気になって調べてみたのですが、「岩が硬くてトンネルの方が費用が掛からなかったため」「景観を損なわないようにしたため」など諸説があって、残念ながらどれが本当であるのか確定できませんでした。
反対側(出口側)の様子。
ポータル部に取り付けられた標示を望遠レンズで覗いてみると、確かに「樽沢 7.20m」と書かれています。
道路の歩道にも、一応このような看板が設けられていました。ちょっと撮り方を失敗したけれど(トンネルを列車が串刺しにしたところを撮るのが正解でしょうね、恐らく)、あまりに寒くて次の列車を待つ気力がなかったので、さっさとクルマまで引き返すことにします。
※私が訪問したのは2010年のことでした。今年(2014年)の9月24日、ついに吾妻線のこの区間は運行を終了して、10月1日から新ルートで運行を開始しています。使われなくなった「樽沢トンネル」はダムに水没してしまうのかと思ったら、どうやらこのあたりはそのままという話です。ただ、線路やトンネルがどうなるのかは不明のようです。ちなみに「樽沢トンネル」亡き後、JRで日本一短いトンネルの王座についたのは、JR呉線にある「川尻トンネル」(8.7m)だそうです。
群馬県吾妻郡東吾妻町
トンネルを抜けても何も変わらない度:★★★★★
END
(2010.12)
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