【小ネタコレクション File034】
鬼の掌
茨城県の取手市は「アートのまち取手」としてまちづくりを行っているそうで、市内各所に作品が展示されたりしています。なにゆえアートかといえば、市内に東京芸大のキャンパスがあるためのようです。
そんなことも関係しているのかどうかは不明ですが、取手駅の東西を連絡する通路は「ギャラリーロード」と名付けられ、壁面には作品展示用のケースが設けられています。
たまたまその日、用事があって取手を訪れた私はうっかり駅で出口を間違えてしまい、この東西連絡地下通路を使って、駅の反対側に行こうとしたのです。
二つある展示スペースのうち一つは、市民の趣味サークルの書道作品が飾られていて、まあそちらは特に変わったところもない普通の展示だったのですが、もう一方は、CDラジカセで民謡というか童謡のような音楽を流し、ちょっと妙な雰囲気になっていたのでした。
近づいてみると『鬼の掌〜鬼来寺の至宝特別公開〜』とあります。
どうやら鬼来寺というお寺に伝わる「鬼の手のミイラ」のようなものを公開している様子。
ちなみに説明パネルによると、鬼来寺(きこでら)は、かつて奈良の吉野のあたりにあった、鬼を本尊とする寺のようです(焼失して現在は残っていないとのこと)。
「こんな所で公開されているとありがたみがないなぁ〜」とは思ったものの、鬼のミイラなどは結構各地にあるため(それが本物であるかどうかは置いておくとして……)、はじめのうちは「意外なところで、こんなものを見ることができて儲けものだった」ぐらいの気持ちで、普通に眺めていたのでした。
ところが挨拶文を読んでいくと、途中から「あれ〜???」という感じに……。
前半は「これまで個人的に鬼研究を続けていたが、『鬼信会』という会を立ち上げ、全国に鬼情報を伝えるためこのような展示を行うことにした」という内容で、まあよかったのですが、途中から「……やはり昨年の主な話題は『オニゲノム』です。科学のちからで初めて鬼の存在が証明されました」と、少しばかりおかしな方向へ話が進んでいくではありませんか。
さらにその先には、新聞記事のコピーとともに「鬼来寺の鬼の掌から採取したDNAをアメリカの最新ゲノム解析技術によって解読し、生物学的に鬼の存在が証明された」「オニとヒトの染色体数は同じ23対46本。発見されている大きな違いは、1番染色体、3番染色体、性染色体Yの3カ所」であるといった内容のパネルが、どーんと張り出されていました
「すごいことを言い出しちゃったな〜」と、意外なところで金の鉱脈を発見したような興奮を一瞬おぼえたのですが……。
その先の写真パネルを見たら、どうも客を入れてイベントを行ったりしている模様です。昨年(2011年)東京の中野で、日本の鬼を研究しているフランス人と、鬼を目撃した2人の日本人による座談会を行ったということで、微妙に作為的な気配が漂ってきたのでした。
……帰って調べてみると、やはり「鑑賞者の頭の中に『鬼』の記憶を埋め込むプロジェクト」ということで、どうやら冷静に鑑賞者を意識したパフォーマンスの一環だったようです。
個人的に、常識の枠を揺さぶろうとする人の創り出すものより、常識の枠が存在することに気づいていない人がやらかしてしまうこと(もの)に関心があるので、今回はそういう意味で少々残念な結果でした。一度期待が高まってしまったため、よけいにガッカリ感が強かったといえます。
そんな結末だったので、おまけに市内を歩いていて、たまたま見かけたアート作品(……じゃないのもありますけど)を紹介しておくことにします。
駅前の銅像。あまり興味を引かれる部分がなかったので(すみません)、木の葉の間を通してあえてこっそり覗いている体で撮ってみました。いかがでしょうか?
アート作品なのかどうか不明ですけれど、国道6号の大利根橋を渡っていて見つけたリサイクルマーク。
地球はリサイクルできるということでしょうか。
これは作品ではなさそうですが、同じく大利根橋下の河川敷にあった植木文字。「トリコ」じゃないし、なんて書いてあるんだろうと結構悩んで、後でGoogleの航空写真を見たら「トリデ」でした。まあ、そうでしょうね……。
茨城県取手市中央町2
「ギャラリーロード」
期待が大きかっただけにガッカリ度:★★★★★
END
(2012.4)
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