思うこと 第65話 2006年1月28日 記
2006年の“年の初め”の読書 −その9−
中国の今後 −その1−
今回読んだ本において、中国の今後の予測は、著者によって実にさまざまな予測がなされていることに驚いた。まずは、その幾つかを紹介しよう。
長谷川慶太郎氏は、この本(左写真)のなかで、中国の将来に関しては極めて明快に次のように述べておられる。
『中国崩壊で北京オリンピックは開催できなくなる
私は以前から「中国の現体制は2010年までもたない。北京オリンピック開催は危ないと言い続けてきた。破綻の時期が的中するかどうかは分からないが、いずれそうなることは絶対に間違いないと信じている。』
『暴動でもしも軍が発砲する事態になったら北京オリンピックは吹っ飛ぶ
暴動の鎮圧に手を焼いて、もしも軍が発砲するような事態になったら、北京オリンピックは確実に吹っ飛ぶ。世界中の非難を浴びて、北京政府は孤立する。 一切の投資は止まり、経済は崩壊する。経済が崩壊したら、体制ももたない。中国大陸は大乱に陥る。』と述べておられる。
また、小学館発行の国際情報誌『SAPIO』の新春特大号(2006年1月25日号)でも、中国の現状について、『「農民運動」「反日」「民族紛争」−−チャイナ・リスクの水位は決壊寸前だ 中国「大動乱」 カウントダウン』というショッキングなタイトルで、警鐘を鳴らしている。
竹村健一氏は左写真の本『これ1冊で日本の大変化がわかる!』(青春出版社より2005年11月15日出版)のなかで、中国のこれまでの躍進の歴史はアメリカの歴史と似ており、恐らく中国は今後益々発展して世界ナンバーワンの地位に昇るであろうと予測しておられる。
では、私が最も信頼を置いてきた『日経大予測 2006年版』(第62話参照)は、中国の今後をどのように予測しているであろうか?
『中国』については次のようなタイトルで予測している。
「本命」引き締め政策を徐々に解除、経済は軟着陸
「対抗」内需が失速し、財政出動も
「大穴」過熱が続き、不動産バブルなど問題先送り
それでは、私が政治の分析で感銘を受けた田中直毅氏は中国の今後をどのように見ておられるのであろうか?(本の説明に関しては第64話参照)
田中直毅氏は慎重な言い回しで次のように述べておられる。
『中国経済の成長が、粗投資の急拡大によって生み出されていることは明らかである。沿岸部における借り手のない巨大な商用ビルディングに象徴されるように、過大な投入にもかかわらず、付加価値を生みにくい構造が生まれているのである。そしてこの間の環境悪化の進行が、中国経済を根底から侵し始めた。これに対して、中国指導者による投資調整という形を表面的にはとっているが、中国経済のリズムをいかに制御するのかという課題は、中国の指導者にとってもきわめて重い意味を持ってきた。』
昨日の日本経済新聞の社説は『中国は高成長をいつまで持続できるか』というテーマが取り上げられていた。その中で、「都市住民の年収は約1万500元と9.6%増えたが、農民は3千260元と6.2%増にとどまり、所得格差はさらに拡大した。公安省情報では、昨年は暴動などの騒乱が8万7000件(前年比約7%増)にのぼった。政府は高成長を続けることで社会の安定を保とうとしてきたが、状況はむしろ悪化している。」と、述べている。
私は、ここで、私の考えを述べる予定であったが、今日たまたま、すばらしい本にであったので、それを読んだ上で、明日、第66話で私の考えを述べることにする。