思うこと 第213話 2007年5月24日
国際ヒトレトロウイルスHTLV会議に出席して
『第13回国際ヒトレトロウイルスHTLV会議』が5月22日から25日まで箱根で開かれたが、私は23日には鹿児島に帰らなければならない用件があったため、22日のみ参加し、23日朝、後ろ髪を引かれる思いで箱根を後にした。なにより心残りだったのは、この23日の午後に『HAM友の会』の患者さん方が30人以上参加されての発表会があり、それに出席できなかったことであった。
上の写真がこの学会の参加票とプログラム表紙で、会場の箱根プリンスホテルは芦ノ湖の湖畔にあり、ホテルの近辺から、まさに、この上の絵と同じ景色を眺めることが出来感激した(下写真)。
また、会場脇のケーブルカーで10分も登ると、そこにはまさに絵のような景色が広がっていた。
ところで、今回の国際会議は、私の退職の直後であったこともあり、私にとって、感慨深いものがあった。いい意味での新旧交代を実感したのである。
この学会を主催された渡邉俊樹先生達が編集された『HTLV−1と疾患』という本が文光堂から本学会の直前に発行されたが(下写真)、
この本の著者は今この研究の分野で最も活躍している研究者が担当しているため、内容が最新の情報からなるすばらしい本となっている。この、著者一覧の最初のATLならびにHAMの臨床と病態の部分は下に示すように、
黄色のマーカーで示したように、ATLでは魚住先生と宇都宮先生、HAMは出雲先生と齊藤先生と鹿児島ゆかりの先生達が担当していた。
今回の学会でも鹿児島勢の研究発表は多く、中でも宇都宮先生(下写真)はATL関連のの演題数が20を超え、最も注目された存在であった。
ATLの造血幹細胞移植療法では、現在、世界でナンバーワンの実績を上げており、外国からの招待講演にもよく呼ばれている。私が感嘆するのは、宇都宮先生が大学ではなく、臨床の忙しい現場にあって、これだけのすばらしい仕事を成し遂げつつあることである。
もちろん、出雲教授や久保田龍二助教授はもとより、鹿児島から参加した多くの若者達の活躍や、鹿児島大学を巣立って京都府立医科大学の神経内科の教授の中川正法先生や、金沢医科大学の齊藤峰輝助教授のHAMの分野での活躍も私にとってはこの上ない喜びのプレゼントであった。 私は、多くの親しい友人達と旧懐を暖めあったが、私がこの20年余りに亘って親しく研究してきた内外の研究者の多くは、私同様リタイアー前後の人が多く、それらの友人たちとも感慨を共有したのが、若いすばらしい研究者が育ってきており、安心して彼らにバトンタッチできるという思いであった。私自身がリタイアー直後であったことが、この感慨をさらに強いものにしたように思う。
若い先生達が、今後、HAMとATLの完全な治療法を完成させる日まで、応援団の一人として頑張ってゆきたいとの思いをかみしめている。