思うこと 第188話 2007年2月15日 記
麻生 泰氏著『明るい病院改革』に感動
麻生 泰(ゆたか)氏に縁あって、昨年はじめてお会いしたのは、氏が代表取締役社長(CEO)を務める麻生ラファージュセメント本社の社長室であった。その時、氏の、医療に取り組むなみなみならぬ熱意に感銘を受けたのであった。その、麻生 泰氏が『明るい病院改革』(日本経済新聞社 2007年1月24日初版発行)という本を書かれたので、さっそく読ませていただいた。
読み始めたとたん、この本のとりこになり、今朝、とうとう読み終えた。感動であった。私はかって鹿児島大学医学部付属病院の病院長を務め、理想の病院にしようと悪戦苦闘した経験があるだけに、『あの時に、この本と出合っていたら、もっといい病院長としての働きが出来たのに!』と思いながら、一行一行に感動しながら読み進んだ。日本の経済界の重鎮の一人で、経営のプロ中のプロが、「飯塚病院を日本一のまごころ病院にするぞ」という熱い情熱を燃やしながら飯塚病院改革に取り組み、病院経営の模範をしめしただけでなく、若者の研修病院としても今や日本で聖路加国際病院に並ぶ一流の教育病院に仕上げたのである。その、ノウハウの全てをを惜しげもなく今回公開された。氏はその理由を『はじめに』のなかで、次のように述べている、『この本は日本の医療改革が始まろうとするなか、民間病院の現場からの報告やヒントを著すことで、今後の医療政策に役立ててもらいたいという願いから書きました。全国の病院経営者や医療スタッフの方々に読んでもらい、「よし! 自分の病院でもやってみよう」という動きにつながることを心から期待します。』と。
私がこの本を、このHPの『医学徒に薦める本』のトップに載せたのはもちろんのことである。これからの日本の医療を担っていく医学徒がこの本を読むことは、日本の今後の医療に大きな力になると確信する。もちろん、“医学徒も”読むべき本と言うべきで、医療に携わる全ての職種の方々、ならびに、国や地方の医療に係わる行政の方々が“読まなければならない”本であると言いたい。そうなれば、日本の医療は必ず変わる。明るい日本の医療の方向を明快に示してくれた本である。
氏はまた本のなかで次のように述べている、『指導医に優れた人を得ることが重要である、というのが当時の富永喜久男院長の強い信念でした。指導医の教育者として望んでいた、当時の九州がんセンター臨床研究部長の安部宗顕先生の招聘が実現できました。この貴重な人材を得たことが、その後の大きな展開につながります。私は安部ご夫妻に初めてお会いしたときから、すばらしい方々だと実感しました。指導する人の器と人間性で教育は決まります。力があり、魅力があり、謙虚であり、教育の重要性とやりがいを強く持っている方でした。』と。安部宗顕先生には臨床研修の初期の段階で数年間教えていただいたことがあり、私が尊敬している恩師の一人である。(実は、昨年、麻生 泰氏に私を引き合わせてくださった方こそは安部宗顕先生である。) 飯塚病院を今日の研修病院に育てた功労者のお一人が安部宗顕先生であることは、私は無論よく知っていたが、安部宗顕先生の人物を見抜き招聘した麻生 泰氏の眼力も大きかったと言える。
私の医学徒教育に飯塚病院との関わりは少なくない。 このHPの『思うこと第39話(2005年7月26日記)』で『私が追い求めている医師育て(卒後研修体制)のあり方』で『臨床のプロを養成するために、私は医学徒達が下の図に示したような本邦でもずば抜けた実績をもつ病院で研修することを薦め、また、そのための環境整備を行った。これらの病院で育った若者達が教室に帰ってきて、私の期待通り、というより、期待をはるかに超える活躍をし、鹿児島の研修体制を大きく発展させ、あるものは、全国各地に巣立ち活躍してくれている。』と述べたが、
その若者達の中に、もちろん飯塚病院で研修させてもらったものも多く、その一人を『思うこと第52話(2005年12月25日記)の『挑戦し続ける若者の姿に感動して』で紹介した。
このように私がとても評価している飯塚病院であるからこそ、それを育てた麻生 泰氏のこの本に私がこのように感動した、その理由がわかっていただけることと思う。