使用と消費
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使用と消費
民法の物権編では、207条(所有権の内容)は所有者が自由にその所有物の「使用、収益及び処分」をする権利を認めています。
この場合の使用は、家に住むとかクルマを自由に乗り回すことでその物の本来の使い方とされます。「利用」と行った方がなじめます。
ちなみに、収益はそれを使って果物や利子を得ることでその物から派生する利益です。
また、「処分」は形を変えたり、捨てたり、売ってしまうことです。
ここでわかりにくいのは使用と収益でしょう。樹木やお金をそのままにしていても果物や利子は生みません。
使用(利用)しなければ収益は得られません。
細かいことをいえば、会計上の収益は売上高であって利益ではありません。売っても利益が上がらなければ損です。
でも、民法はそこまで触れず、収益を元本より増えるものと考えています。
ところで、民法の債権編の契約(13種類あります)には587条の消費貸借と588条の準消費貸借のほかに593条に使用貸借があります。
貸借契約にはこのほかに601条の賃貸借もあります。
民法594条は借主による使用及び収益ですが、「目的物の性質によって定まった用法に従い」とありますので、「使用」を指すのでしょう。
条文を持ち出してもピンとこないでしょうから具体的に示します。
使用貸借というのは、借りた人がタダ(無償)で使用・収益してから貸主に返還する契約です。
この経済社会で無料で貸すのは、親子関係とか特別な関係がある人に限られます。
そんな契約がかわされることに不思議に映りますが、契約の始めに贈与が出てくるので不思議でなくなります。
贈与は無償で財産を移転する契約ですから、無償で利用させても「契約自由の原則」がありますから不思議ではなくなります。
それでは、消費貸借はどんなものかと言えば物を借りて、返すことです。
ポイントは借りた物と同種・同等・同量のものを返済することです。利息を付けても付けなくても自由です。
物なら物、お金ならお金を返すことです。
お金は「金銭債権」と呼ばれ、民法419条には「金銭債務の特則」で、債務の不履行の損害賠償に利率が決められています。
だから、法定利率や約定利率がつくわけです。
ここでわからなくなるのが「消費」と「使用」の違いです。
借りた物をもとのままにして返すのでなく、同種・同等・同量で足りるのです。
お金を例にすると、誰に対しても通用するから多少欠けていても違いは感じません。
お金以外の物を考えてようやく使用貸借との違いが分かってきました。
民法で使う「消費」は、経済学で登場する消費者と似ているようで似てません。
消費者は生産者に対する登場人物で、物や用役(サービス)を使い切ってしまう存在です。
物やサービスは主観的に同じ価値で交換されても、物としては同種・同量・同等ではないからです。
こんなことを法学部の人に話したら笑われるに違いありません。
民法以外に寄り道してきたばかりの錯乱かもしれません。
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