61 音がしたところが起点ではない
ギターに挑戦
先日から流し読みしている市川宇一郎さんの『リズムに強くなるための全ノウハウ(増補改訂版)』(中央アート出版社)は意外なことに気づかされる。日本の踊りの基本が盆踊りというのはすでに紹介したが(※1)、ドラムを打つ前にスティックを振り上げる動作が伴うことを例にして日本人は音がしたところをリズムの起点と考える傾向があるというのにうなずいた。
日本語のリズムが四拍子だというユニークな論説をする別宮貞徳さんの『日本語のリズム』(ちくま学芸文庫版、筑摩書房・2005年)の本に出てくる違和感も市川さんの指摘で氷解した(※2)。別宮さんは音符を持ち出してユニークな説明するが、わたしは休符が一番先に出てくるのになじめなかった。でも、言葉を出す前には息をためる必要がある。ちなみに、別宮さんは五七調や五七七調は休符を登場させることによって八八や八八八に区切れ、四拍子論を強化させている(三連符も利用しているが例外的な説明である)。
市川さんは西洋と日本の拍子の違いを指摘しているのがおもしろい。西洋は音の継続的つながりで音が組み立てられるが、日本は手拍子にしても「間合い」であって「流れを断つ」というのもうなずいた。といっても、優劣でなく違いにとどめている。ちなみに、拍子にあたるのは英語でタイムtimeであり時間と同じである。
楽譜を眺めて驚くのは休符から始まる曲が多いことだ。出さないものを記すのは声や音を出す動作を含めて表現するためだろうと気づいた次第である。それは時間の流れの中でかかわる動作をすべて表すことだろう。楽器をいじらなければこんなことさえ気がつかなかった。戸惑いながらも新しい発見をするのが楽しい。(2007/04/06)