57 ほどほどにとどめて進むことも欠かせない
ギターに挑戦
深入りするほど分からなくなるのが経験則を整理した音楽理論だ。例外がつきまとうのもわずらわしい。そこが前提や仮説をもとに展開する数学や論理とのちがいだろう。帰納法と演繹法(えんえきほう)のずれがある。先日紹介した「代理コード」だって3和音のすべてにこだわれば理解できない発想である。2音が一致すれば転用可能というのも経験則である。また、12/8の拍子にしても数学の知識でいえば仮分数だが、1小節に8分音符が12個あるリズムというにすぎない。
そこで発想を変えて御池鮎樹さんの『裏口からの作曲入門 予備知識なしの作曲道』(工学社、2006年)を読んでいる。楽典につきまとう堅苦しさがなく読める本だ。作曲する気は別にない。どういうことに注意して作曲されているかを知れば、演奏になじむだろうというだけである。音階や音程にせよ、リズムやメロディにしてもそのほうが実践的で実用性も高いはずだ。また、そのほうが必要最低限の知識で済ませられる。
ギターを弾くのに音楽理論に深入りすることはない。プロになる気もないからストレスを増やして苦行にすることもない。必要条件と十分条件を満たすのは理想だが、手抜きで済ませるには必要なもので足りる。そう割り切ると音楽理論が具体的で身近になるのもおもしろい。人間の聴覚とか感じ方を楽器いじりを通じて学ぶ機会である。
音楽は人の感覚に対応した選択が絡むからこういう接し方も無駄ではない。簡単なことを小むずかしい言葉に置き換えるのではなく、むずかしいことを噛み砕いてやさしく理解するほうが大切だろう。居直りも手抜きには欠かせない。仕事や道楽もそういう面があっておもしろさや新たな視点が生まれるものだ。無理を強いずにほどほどにとどめて進むことも忘れてはなるまい。(2007/03/27)