30 薄い本が簡単とは限らない

ギターに挑戦

 せっかちだから入門書は薄いものを選ぶ。てっとり早く全体をつかみたいからだ。それでも読み切れないときがある。小説なら、昨年読み直した『楡家のひとびと』(2006/12/05「本の紹介」に掲載)のような上下2分冊の長編も耐えられるのに不思議である。でも、要点をコンパクトにまとめた本ほどわかりにくい。数学の公式集のように分かっているときは便利でも、なじまない部分はとっつきにくいのと似ている。そのために参考書を買うのも腹立たしい。

 たとえば、先日読み流した『超やさしい楽譜の読み方』(甲斐彰著、音楽之友社、2006年)は62ページに16テーマをコンパクトにまとめているが音学になじんでないとどうしてという疑問がつきまとう。そのために『コンパクト楽典』(大角欣矢著、音楽之友社、2005年、第10刷)や『CDで覚えるやさしい楽譜の読み方』(水谷友香・キッシー岸田著、成美堂出版、2006年)などで補強する始末だ。

 でも、薄い本にはそれなりの価値がある。重要度を知るにためには欠かせない。はじめから厚い本を選んだら途中で挫折する元である。また、わかったような気分にさせ、やってみようかと思わせる価値もある。お調子者には無視できない。薄いからやさしいとか簡単というわけではない。むしろ、厚くても噛み砕いた説明のほうがなじむときもある。それを知って使い分けるのも本の利用法だろう。真面目にコツコツ積み上げることができない者には薄い本を入門にし、厚い本を基本書とするしかないようである。(2007/01/18)


 【追記】

 ギターを始める前から読んできた音楽関係の図書リストを作成しました。読んだ感想は別サイトの「本の紹介」や「音楽ざっかん」で触れています。楽器をいじるだけでなく聴いたり・感じたり・作詞するのも音楽の楽しさではないでしょうか。わたしは音楽にそういう接し方をしてきました。




          【話して気づく互いの道楽】

 別に隠す必要もないから知合いにギターいじりを始めたことを話した。弾けと言われても困るから「なかなか上達しなくて」と伏線を張るのも忘れない。左指の押さえ方や右腕のリズムの取り方を具体的に見せると笑いも出てくる。ついでに指ごとに押えられる握力道具を出して握らせると誰も小指が押せない。

 楽器が弾ける者はウクレレ奏者だけとタカをくっていたらギターの挫折者もけっこう多い。かっこよく弾こうとしたものの地道な努力を嫌い、楽譜に恐れをなしたのはわたしと同じだ。でも、楽器は弾けなくても音楽を嫌わないのも似ている。

 意外なのは、カラオケを嫌う人が若いころにドラムをたたいていたとか、むっつりしてとっつきにくい人がハーモニカを吹いていると言い出すことだ。バカになりきって失敗談を並べると音楽は話題が多いのに呆れた。

 自分がやってみたことをさらしあうのも楽しい。高見にたった成功談は自慢になって煙たいけれど、自分とそれほど変わらないレベルの体験は親しみがある。楽器に限らず、そういうたわいない話題で座が盛り上がるのも楽しい。やらなきゃ知らずにいた互いの趣味があるのを知る機会だった。挫折者のバンドでも作ってみようか。(2007/01/18)