柴田南雄さんの「楽器への招待」
2007年05月29日
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風呂についてあれこれ
調べているのでギターいじりはこのところ留守になっている。知っているようで知らないのが温泉や銭湯だが、聴いているわりに形や由来に無知なのが楽器だ。聴いて済ませてきた音楽にしてもどんな楽器なのかが気になるときもわたしにはあった。そこで思い出したのが柴田南雄(しばたみなお)さんの『楽器への招待』という小冊子である。
この本は新潮文庫(しー15ー1)にしては薄くて目立たない地味な本だ。昭和58年に発行されて平成14年で10刷というのも不思議である。138ページだから我が家でも本の間に埋もれてしまい、先日作成した音楽図書リストにも洩れてしまった。著者の柴田さんが1996年に亡くなったからだろうか。
柴田さんは生前に音楽のエッセイを多数ものにし、また、FM放送でおだやかな口調で平易な音楽を解説されていた。この『楽器への招待』は朝日新聞日曜版に1976年1月から77年3月まで62回にわたって連載されたものだという。31種が西洋楽器で、日本の楽器が16種、諸民族の楽器と西洋の古代楽器をあわせて15種で合計62種が掲載されている。
細々とした解説はわたしには手がつかないから、この本のカバー裏面の紹介を全文引用したい。この解説は要をつき、過不足のない名文である。
「オーケストラの常用楽器、滅び去った楽器、ひとたび廃れた後に復活した楽器、民族楽器、日本の楽器、トランジスタや集積回路を使った現代の楽器、試作だけに終った楽器ーー古今東西の楽器のなかから62種を選び、その由来・構造・特徴・奏法などを楽しいエピソードをまじえながら分かりやすく紹介する。文章とカラー写真によるオリジナル文庫。一般教養書、副読本として最適。」
柴田さんの語り口は、音楽や楽器など無縁なわたしが読んでもそうだったのかとうなずき、こんな使われかたもあったのかと驚かされる。音楽事典のかたくるしさもないし、見て確かめるのもあきない。個々の楽器の細かい説明より、楽器と人間のかかわりや日本と西洋の共通性や相違が伝わってくる。こういう本があるから演奏が苦手なわたしも音楽になじめたのだろう。
リュート、月琴、ヴィーナと琵琶に類似性を感じたり、琴と箏の違いに驚き、
ピアノやオルガンとチェンバロを比べる。そういうことを行なう楽しみがこの本にある。技術論を離れて、見て想像させるのもこの本の楽しさだ。それにしても縦笛がいつのまにかリコーダーと呼ぶようになった。これ以上無知をさらすのはやめておくが、日本の楽器がこれほど紹介されている小冊子は珍しいので付け加えておきたい。
●日本の楽器
能管、弥生の琴、法螺貝(ほらがい)、月琴、尺八、八十弦箏(そう)、笙(しょう)、琵琶、小鼓、小太鼓、胡弓(こきゅう)、三線(さんしん)、石笛(いわぶえ)、ひちりき、土笛、篠笛、大正琴、箏(こと)、三味線