鏡の部屋でもがく
2006年03月19日
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遊び場の片隅に顔が変形し、身長が伸び縮みする鏡の部屋がある。笑っているうちはいいが、こんな部屋に閉じ込められたらロクなことはなさそうだ。ガマの油売りの口上にあるとおり冷汗がタラタラ流れてくるだろう。
毎朝身だしなみを整えるために鏡を何気なく見ている。でも、物語に登場する鏡は相手を把握するセンサーであり、相手を攻撃したり呪うコントローラーであり、また、操作する者を自滅させる自爆装置でもある。それがトポロジーで扱われ、組みヒモ理論にかかると宇宙の構造に行き着くからますます混乱してきた。
魔女が鏡を見てあれこれいじめぬくのがおなじみの「白雪姫」の物語だ。自分より美しい者がいるという妬みではるか彼方までいじめぬくのも恐ろしい。冒険活劇童話の「オズの魔法使い」も主人公の行動を鏡に映してオズがあれこれ注文をつけ、主人公を迎える魔女だって鏡を見ていた。子ども向けの童話とはいえ大人が読んでも面白いエンデの「はてしない物語」も鏡の内と外を行き来した。そこに閉じ込められたらたまったものではない。
若いころは鏡を持ち歩いて身だしなみを整えた。古いTV番組の「サンセット77」のクーキーのような若者にもあこがれた。でも、鏡の中に閉じ込められる物語を読んでからそれはやめた。タイムトンネルと同じで異次元の入口を持ち歩くようで危ない。
まあ、こんな話は物語の世界だと高を括る(たかをくくる)と、最近読み直した『トポロジーの発想』(川久保勝夫著、講談社ブルーバックス)では、鏡の魔性という小見出し(p125)であれこれ論じている。「鏡はなぜ左右のみ逆になり、上下は逆にならないのか?
」という問題の設定に対する著者の解答は、図解を加えながら、歯切れの悪い説明になりやすいのは「鏡に映る像は実物とはまったく違うものである」という認識の欠如に起因すると閉めている。
余談になるが、この入門書は、トポロジーを数学だと思っていたら、物理現象の説明や特に宇宙の発生や消滅あるいは空間の曲がりまで結びつくものだと解説している。内容は面白かったが鏡の不思議さに寄り道してあまり印象に残っていない。
ともあれ、鏡に囲まれた部屋に入ったとき上下が転倒し、思わずよろめいたことがある。無重力状態におかれたらどこに自分がいるのか分からず混乱しただろう。タイムマシンの入口が鏡で、そこに吸い込まれたらどこに行くかと思うだけで冷汗が出てきた。
そういえば、子どものころに隠れんぼ遊びをして仲間が探しに来のを待ちわびた孤立感に似ている。古びた倉庫に隠れたとき異次元にワープしていた。どうやら鏡の部屋には一人で入るものではなさそうだ。戻るために目印をこっそり残して入るしかないだろう。
【補記】
アインシュタインの相対性理論が登場して100年が過ぎました。理科が苦手でそんな理屈にはかかわってきませんでしたが、30過ぎて無線を始めてから電波の飛び方に興味を持って、物理学の入門書を読んできました。講談社のブルーバックス程度の知識でもわたしには意外なことばかりでアタフタしています。鏡、タイムマシン、トポロジーなどは分かったつもりで分からないものの最たるものです。おくびょう者が読めばこうなるという例を示してみました。真面目に考える人は掲載した本をぜひ読んでください。
また、フランク・バームの『オズの魔法使い』は子ども向けの英語本のほかDVDも出ています。これは何度読んでもあきません。子ども向けの翻訳もありますから英語本を読むときに参考になります。
ミヒャエル・エンデは『はてしない物語』のほかに、『モモ』などの多数のファンタジーがあります(岩波書店に翻訳が多数あり)。こちらも思わず引き込まれる内容があふれています。