温泉は環境コーナーに入らないの
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ヒマつぶしとご機嫌うかがいを兼ねて市内のスーパー銭湯めぐりをしている。郊外のパーラーや大型ショッピングセンターと似て駐車場にわずらわされない。楽しんでいて環境を論じるのも勝手すぎるが、こんなに増えて環境破壊にならないのかと思う。地下水の汲み上げはいずれ地盤沈下を生じ、循環水の処理を営利企業でまかないきれるのだろうか。
先日は鯖田豊之さんの『水道の思想 都市と水の文化誌』(中公新書、1996年)を読んだ。上下水道の歴史を西欧人の発想の根源に立ち入って考査している。地表水にたよらず遠方の湧水源からはるばる水をひき、異なる湧水を混ぜなかった古代ローマの思想は、地下水や伏流水を利用して今も通づるようだ。また、川の地表水を使用して病気を発生させた失敗の歴史も紹介されている。この本は西欧だけでなく日本の上下水道についてもふれているのが参考になる。
そこで、水にかかわる本を探しに本屋に出向くと環境コーナーに置かれている。水は飲料だけでなく生活や産業と結びつき、排水の垂れ流しは環境汚染とかかわるからだろう。それはまた、人の健康や地域の衛生にも結びつく。それなら、銭湯や温泉も同じではないかと思ったがどこの本屋でも見当たらない。源泉かけ流しをうたうスーパー銭湯にしても、すべての浴槽が天然温泉ではないし、多量の水を加熱・循環して利用してから排水するのだから環境とかかわるのだろうに。
ついでに、温泉はどんな産業になるのかと「観光」・「レジャー」・「サービス」業のコーナーを眺めたが見当たらず、ようやく「健康産業」に含まれているのに驚いた。あかすり、エステ、マッサージが併設されているからだろうか。この分類もかなり勝手なものだが入浴には憩いや娯楽のほかに「治療」や「美容」が含まれるからだろう。
入浴を楽しんでいる家族と違って、風呂嫌いだからこんなことを考えるのだろう。自分の好みを環境破壊などと思わないのもマニアのズルサであり、無神経さではないか。と思いつつわたしも広い浴槽にのびのび入浴し、露天風呂でくつろいでいる。「この楽しみを次の世代にも残したい」とは風呂嫌いが言うことでもないのだが。
【追記】
温泉について入浴以外の利用法や環境との関わりについては、第5章第2節で「温泉学の初歩」で9つほどふれています。日本温泉科学会編の『温泉学入門』をもとにわたしの独断を加えています。