岩盤浴は競りを待つマグロ
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屋外の外れにある岩盤浴のコーナーはいつも先客で占められ、待つのも面倒だから無視する。わたしは最近までこれを寝湯だと思っていた。寝湯は浴槽に入るが岩盤浴は平らな岩に横たわる違いがある。野外でのんびりくつろぐ姿はどこかマヌケな雰囲気がただよう。
小さいときから魚市場に出向いて遊んだ。競り(せり)が始まる前にカツオやマグロが並べられていたが、海から釣り上げられた魚は白目をむき出して横たわっていた。岩盤浴でくつろぐ客の姿はそれにどこか似ている。
ここで岩盤浴の説明をしておこう。伝導性のよい岩石を敷いた空間に温水が流れ、枕がわりの丸太に頭を乗せて客は仰向けになって横たわるだけだ。うつぶせになると股間が火傷をするおそれがある。背中を伝わってチョロチョロ流れるお湯がこそばかゆい。空気に触れる腹部に風があたり、背中との微妙な温度さにたじろぐ。
温度もぬるめで、湯あたりもしないから客はけっこう長居する。夜空を見るにも丁度よい姿勢だ。問題は胸や股間がむき出しになることだ。妻や娘に確かめたらスッポンポンで横たわる女性もいるようだ。見たくないものを見せられるのも興ざめである。【2007/05/20】