狭間の離宮


リドルさまが暮らす館は、狭間のお屋敷と呼ばれている。
深遠の貴族の離宮としては、ごくささやかなものらしいが、類を見ないほど頑強な結界に護られており、空気も清浄に近い。
魔界、天界、地上、全ての世界の狭間にあり、空間を裂いて特別に作られた”隠し部屋”とも言える。


敷地には、一面薔薇が咲き乱れる美しい庭が広がっている。
特に中央にある庭園には、一年中色とりどりの花がまるで競うように開き、
天界と見まごうばかりの風景となっている。
                             


            
その反面、周辺は深い森に覆われており、基本的に主の許可したものしか出入りできない。
(ただし、ご友人の使い魔や伝書蝙蝠は別とのこと)
下手に館へ押し入ろうとすれば、世界の狭間で永遠に迷い続けることになるらしい。
                      









「ねぇ、ケティ。そろそろお部屋に戻りましょう?」
















時々、リドル様は直接窓から部屋に戻って来る。
「その方が、ヴァンパイアらしく見えるわ」
なんて仰るのだけれど、いくらヴァンパイアでも、自分の寝室に忍び込むのは少々お行儀が悪い。






旦那様の並ならぬ魔力のお陰で、館には四季がありながらも酷くゆるやかで、焦げ付くような太陽も、凍るような寒さもなく、 いつも穏やかな時間(とき)を保っている。






リドル様は、よく静かな午後を居心地のいい居間で過ごす。
立派な食堂もあるけれど、ここの小さなテーブルで、奥様の作った美味しいお茶を頂くのが好きなのだそうだ。
奥様の寝室や大きなお風呂も、リドル様のお気に入りの場所の一つ。







館の中を歩いていると、時々ふっと知らない場所に出ることもある。



美しい回廊、尖塔アーチの広間、どこに繋がっているのか判らない扉、ぐるぐる回る螺旋階段、見たことのない景色が見える大きな窓……。
館には不思議な場所が多く、リドル様も全ての部屋を知っているわけではないらしい。

この屋敷のどこかにある扉が、直接魔界の居城に繋がっていると言われていて、 リドル様は時々地下室に蝋燭を持って捜しに行くが、今のところ発見できていない。
いつか見つけて旦那様をびっくりせるのが、リドル様の野望とのこと。

『ケティの手記』より

                         




(沢山の写真サイト様から、イメージの写真をお借りしました。ありがとうございます)






戻ルノ?