――私は、貴方の幸せの女神にはなれない。
貴方の傍に居ても、何もしてあげることが出来ない。
それでも、私は傍に居たくて。ただ、それだけで。




+恋の名残+



想いを打ち明けて、受け入れて貰って。
御伽噺なら、これでハッピーエンドだ。
しかし、現実は御伽噺とは違う。

私は、彼の優しさが特別なものだと、少々自惚れていたに違いない。
私の危険を心配し、抱き締めてくれる…。
それはきっと、私の存在の危うさから来たもので。

彼にとって、自分は……普通より少しだけ大切なものかもしれないなんて。
本当に、酷い自惚れだ。
そう叱咤していないと、気持ちを抑えきれない。
穢れた神の羊が何を望む?
娼婦の分際で、口付けを数えて胸を震わせていたなんて、どうかしている。



(私が貴方に上げられるものは…もう、「さよなら」の言葉だけなのに)

(どうしても、それが差し上げられない、私を許してください…)









そのうち、彼から別れの言葉を告げられるだろう。
その時は、精一杯笑って受け入れられるといい。
無様に縋って、泣いて、彼を苦しめないように。
…もし失敗したとしても、暫くすれば、彼だって私の存在を忘れるだろう。
この身が消えれば発動する忘却の呪い……異世界の間のバランスを取るための安全装置のようなもの……が、今は唯一の救いだ。

(…それでも、いつか思い出してくれたらいいな……。)

酷く愚かで、滑稽な女のことを。
…どうか、笑って。




掻き鳴らした竪琴の音は、とても甘く。
幸せな恋の歌に、少しだけ泣けた。




                      









●綺麗な恋愛小説を読んで、少しばかり泣きました。
その名残で書いた話です。