+闇月+
月を見ると、思い出す。
とても月を愛していた人のことを。
今宵は、雨に濡れて空が見えない。
あの人は、まだ覚えているだろうか。
私たちの小さな約束を。
大切なものを、いつも守ろうとしている少年…
綺麗な青い瞳を、今でも覚えている。
私がヴァンパイアになったと告げた時、
『あんたが望んだならそれでいい』と言った。
大切なものを守るためならば、私にも刃を向けるだろうけれど。
とても優しいから、一番自分が傷つく道を選ぶ。
「俺は強くなるよ」
いつか、彼は私にそう言った。
「あいつに何かあった時、俺が止めて見せる。だから強くなる。
大切なものを…傷付けさせたりしない」
私は小さく微笑んだ。彼の双子の妹のことを思って。
「あんたは、あいつの一番近いところにいるんだから、もっと自信を持て」
……あの瞳を、もう随分見ていない。
目を開いて空を見上げる。やはり、月は見えない。
(私はもう、ダメかもしれない…)
どんなに願っても、無理かもしれない。
もう傍に置いては貰えないかもしれない。
「私が傍にいない方が、あの方は幸せなのではないでしょうか……」
以前貴方に零した言葉。私は今も、同じところで迷ったまま。
貴方はまだ覚えているだろうか。
私たちが交わした約束を。
「あいつに何かあったら、俺が絶対止める」
「私はずっと傍にいて、あの方を守ります」
忘れないから。
例え、この身が消え去ろうと。
……今日も月は見えない。