+繰り返し+



貴方の隣には、誰よりも綺麗で、優しいひとが居るべきだと思っていた。

貴方はいつも振り返って下さるけど。
いつか、ここに居る私を忘れて、誰かの手を取り行ってしまうのだと思っていたから。
腕に抱きしめられる喜びに酔いながら、永久の別れを近く感じる。
恋する女は、誰でもそうなのだろうか。
それならば、貴方と離れる時にこの身が消えるのは、酷く運のいいことのように思えた。
けれど、その責めを彼が負うのは絶対違う。
全ては、自分の我が侭だから。
むしろ、生きていることの方が、自分にとってはイレギュラーなのだ。


…でも、貴方はどうだろう?

自分が幸せであることが、貴方の不幸せと引き換えだったら、あまりに哀しい。
貴方が幸せであったか、それだけがどうしても判らない。

私が居なくなって、貴方が幸せになったかさえ。









+問い掛け+


幸せで、幸せで仕方ないと、時々、その裏返しで不安になる。

…どうして、私にそんなに優しくして下さるの?

私が貴方を好きだから?
可哀想だと思って下さったから?

私なんかじゃ、貴方の傍にいたいなど、身の程知らずもいいところなのに。

貴方は、私を抱きしめて甘い口付けを下さる。

どうして、どうしてなのですか?

その答えに囁かれた言葉を、私は何度も心深く受け止めて、それでもまだ信じきれずに。
繰り返し、馬鹿のように問い直す。


…優しくして下さるのは、何故ですか?









+意地悪+


「私の全てはあの方のものなんです」
だから、意地悪しないで、と少女は天使の腕の中でジタバタと暴れた。

「もしかしたら、彼は君のことなんていらないかもしれないよ?」
「……」
「それとも、君は誰かの代わりなのかもしれないね。彼が君なんかを本気で欲しがる筈がないだろ」
「………!」

暴れる力が少し弱まった。
これは上手く行くかな、と天使はもう一押しする。

「大体、君なんて綺麗でもないし特別な力があるわけでもなし。
彼にはなんの役にも立たないじゃないか」

「…いいんです」
俯いていた少女が、ぽつりと呟く。
「私が傍に居たいんだから。絶対守るって決めたんだからいいんです!!」

再び暴れだした少女を腕に収めて置くことが出来なくなって、天使は手を離しながら、こんなじゃじゃ馬でいいのかなぁ、とため息を吐いた。

神様だって魔王だって、彼女を自分のものには出来ない。
出来るのは、たった一人きり。

(だけどそれは、特権なのか?それとも迷惑か?)






●意地悪ツァド。









+目を閉じて感じて+


例えば、私は。
考えてから行動する方だと思う。

それなのに。

気付いたら、手が伸びていて。
気付いたら、視線が追っていて。


見えない貴方が、軽く笑ったような気配。

どうしようもない、私の体が、心が勝手に。
貴方の背中に手を回して、顔を埋めて。
その香りを感じていたいと言うんです。






●お題より。








+最悪の消去法+


もし、貴方が誰かを愛して。
その方が、貴方だけを愛してくれたら。
きっと、貴方は幸せだったでしょうね。


私がそう言うと、彼は「私が愛しているのは貴女ですよ」と苦笑した。


もし、貴女が愛したのがわたくしではなく。
貴女を愛したのもわたくしではなかったら。
きっと、貴女は幸せになれたでしょうに。


「貴方のいない幸せなんて欲しくありません」と我侭を言う私に、仕方ないですね、と困ったような呆れたようなキスをくれた。




もし、私がいなかったら。
あなたは今より幸せでしたか?






●お題。









+見上げて、笑って+



桜の季節が終わり、その老木は一面に紫水晶の粒を鏤めた花房を身に纏う。
伸びた太い枝に腰掛けて、銀の竪琴を奏でれば、エルスのよく通る高い歌声が、藤の花精(かせい)のようにゆらゆらと空へ登った。

「姫君」

優しくも甘やかな声音に、ふと指を休めて、微笑む。

「どこにいらっしゃいます、エルス嬢」

視線を巡らせると、黒い服に身を包んだ愛人の姿が、低い潅木から垣間見えた。
ここです、と一際高く歌い上げるように言うと、彼はふっと視線をこちらに向け、笑った。

「ベリアルさま」

ふわりと木から身を躍らせると、まるで小鳥が飛んできたかのように重さを感じない仕草で受け止められたので、その首にそおっと細い腕を回す。

鳥が啄ばむように、触れるだけの口付けを落とすと、ふわりと薔薇の香りが立ち上った。






●お題。お互いに名前を呼んで貰おう、というだけの話。









+誰が隣に一緒にいるのか+


私がもし、死んだら。

と、貴方がいう。

私の指輪は、貴女が手にして下さいね。
貴女と私が交わした言葉、絡めた指、絡めた心、全てが本当であった。
その真実を消さない為に。

貴方がもし死んだら。

と、私がいう。

私の全ては貴方のものに。
髪一本残さず…貴方に差し上げます。

私が死んでも幸せになって、生きていて下さい。という貴方。
貴方がいない幸せなんて、欲しくありません。という私。

だけど、結局貴方が折れて。
ため息とともに私を抱きしめる。

いいでしょう。どこまでもついていらっしゃい、
貴女はわたくしのものなのだから、と。

ごめんなさいね。
生きているうちも、そして死んでからも。
貴方の隣にいたいんです。

…よくばりでしょう、私?






●お題、というものをやってみようかと思い立ちました。 配布先はこちら