きっといつか
〜眠れる子どもたちに贈る〜
7歳の健一は寝るのが恐かった。 (また、お漏らししたらどうしよう) もう、1週間連続で、寝小便をしてしまった。連日でさすがに布団も乾かない。健一は小学1年生なのにと思うと、とても恥ずかしかった。あまり、ベランダには布団を干したくない。そのことを察してか、母親が電気布団乾燥機を買ってきてくれた。 「健一、もう安心よ。いくらでも乾かしてあげるからね」 「きょうは絶対しないから」 「そうね」 布団を乾燥機にかける母親を見ながら、健一は思った。寝る前にトイレに行く。夕食後は水も飲まない。いつものとおりのパターンであるが、きょうは別だ、と心に固く誓った。 午後9時、健一がきょうこそお漏らしはしないぞとトイレに入った。 じゅわー、と快い放尿をした。最後の一滴まで絞り出した。これで、今夜は安心である。そう思いながら,布団に入る。 「わっ、冷たい。布団が濡れている」 冷たさにびっくりして布団から飛び出した。健一は目を開ける。布団の中にいた。 「えっ、どうしてなの。寝てもいなかったのに、もう寝てたよ」 急いで布団を手で触る。 「あっ、濡れていない。やったあ! 今日はお漏らししなかったぞ。でも、変だなあ。どうしてお尻が冷たいの」 健一は冷たさにはっとして、目を開けた。布団の中で寝ていた。 「ああ、もう、何がなんだかわからないよお」 健一は悲しくなってきた。 「おかあさ〜ん、おかあさ〜ん」 母親が部屋へ入ってきた。 「おお、かわいそうな健一、涙でお布団が濡れちゃったね。今夜はお母さんのお布団で寝ようね」 「うん」 その夜、健一は母親と一緒に寝た。 翌朝目を覚ますと、母親が隣で寝ていた。健一ははっとして布団の下に手を置いた。濡れていなかった。 「おかあさん、今日は大丈夫だったよ」 「そうね、良かったわね。もうこれで大丈夫よ」 「うん、」 健一はお母さんと一緒ににっこり笑った。安心した健一は、その夜、盛大にお漏らしした。
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