行列横断歩道の前にひとりの紳士が立っていた。信号が青になっても渡ろうとはしない。立ち止まったまま、本を読んでいる。 ひとりの女がこの横断歩道へやってきた。渡ろうともせず、ずっと立ち続け、本を読んでいる紳士を見て不思議に思った。 女は用事を済ませ、また同じ横断歩道へ戻ってくると、先ほどの紳士を先頭に10人ほどの行列ができている。女はしばらく立ち止まりこの様子を見ていた。 しばらくして、小学生くらいの男の子がやってきて行列の最後尾に並んだ。 「いったい何の行列なのかしら? 」 女は首を傾げながら行列に近づいていき、先頭で本を読みながら待つ紳士に微笑みながら尋ねた。 「よろしければ何の行列か教えていただけますでしょうか? 」 紳士は読んでいた本を閉じると、女を見つめた。 「並べば分かりますよ、お嬢さん」 そう言うと、また本を開き読み始めた。女も男の子の後ろに並んだ。 やがて、日が沈んで暗くなると、先頭の紳士が列を離れた。すると、並んでいた人が順々に列を離れていった。前の男の子が列を離れそうになったとき、女は男の子に声を掛けた。 「ねえ、ぼうや、この列は何を待っていたの? 」 「あれ、おねえさん、ここにいたのに、日が沈むの、見なかったの? 」
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