謎の着信音
向山三郎は仕事を終え、帰り道を歩いていた。電話ボックスの前を通りかかると、電話のベルが鳴り出した。
「ははあ、間違い電話だね」
三郎は一人ごとを言いながら通り過ぎた。しばらく歩くと、薬屋の前に来た。すると、店の前の赤電話が鳴り出した。
「ははあ、間違い電話だね」
一人ごとを言いながらも、さすがに2度目になると、不思議に思ったが通り過ぎた。
ラーメン屋の前に差し掛かった。玄関脇の電話がこりゃまた鳴り出した。三郎は奇妙な呼び出しに好奇心がわいた。電話機に近づき、受話器を手に取った。
「これ、公衆電話だけど」
三郎は相手の返事を待った。
「向山三郎さんですね」
三郎はびっくりした。
「あなたは一体……何者ですか? どうして私がここにいることを知っているのですか?
」
そのとき、三郎は肩をたたかれた。後ろを振り向くと、いたずら好きの妻が、携帯電話をぶらぶらさせて笑っていた。
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