帰ってきたテレビくん シゲルくんは学校からの帰り道を歩いていました。いつもの道が工事をしていたので、違った道を歩いていました。 「え−ん、え−ん」 どこからか、泣き声が聞こえてきます。 (なんだろう?) シゲルくんは声の聞こえるほうへ歩きました。 「ゴミ捨てるべからず」と書かれた看板があるゴミ捨て場がありました。 「だれが泣いてるの?」 シゲルくんはどことなく声をかけました。 なき声は、ゴミの中に埋もれた古いテレビでした。シゲルくんはびっくりして逃げようとしました。 「ガガガ、い、行かないでよー! 」 呼び止められたシゲルくんは、立ち止まりました。恐る恐るテレビのほうを振り向きました。 「きみは、な−に? 」 シゲルくんは言葉をしゃべる不気味なテレビに、声を震わせながらたずねました。 「ぼく、ガガガ、テテ、テレビ君って……イイイ、いうの。ガガガガ、そう神様が、ガガガガ、ナナナ、名前を付けてくれたんだ」 声がときどき途切れて、ぎこちないしゃべりかたでした。それでもそのテレビ君は、ゴミの中でただ一つ声が出せて、見たり聞いたりできる機械でした。他のテ−ブル、ソファ−、冷蔵庫は、声は出せません。だからこそ、捨てられた仲間たちの不満を背負って、テレビ君は神様から特別な仕事を与えられたのでした。 「ガガガ、ぼく、みんなの、ガガガ、代表なんだ。ガガガ、みんな怒っているけど、ピピピー、ガガ、ナナ、何も言えないんだよ」 テレビ君の言うことには、ここに捨てられているゴミ(みんなは自分たちをゴミとは思っていませんが)は、捨てられたことを悲しんでいました。ここで毎日ないて暮らしていたのです。でも、人間には泣き声も、いっさいの言葉がとどきません。冷蔵庫は10年も食べ物を腐らせないように、人間の食べ物を必死に冷やしてきました。 テ−ブルは、囲んでくれる人たちのために、8年間、つぶれたりしないように頑張りました。 ソファ−はちょっとでも座り心地をよくするために、ただひたすら3年間もじっとこらえていました。 ここに捨てられてしまった機械や家具たちは、まだまだ、やっていける自信がありました。 シゲルくんはクラスの友だちのテルくんとアサミちゃんを呼んできました。隣の家のサトウさんからはリヤカーを借りました。3人は汗を掻き掻き、テレビ君をシゲルの家に運びました。 テレビ君はシゲルくんの家に引き取られていきました。
「ガガガ、ピピ、まだまだやれるよ」 テレビくんの目から涙が流れていました。 電気屋さんがやってきて、テレビくんのこわれた所を修理していきました。また、昔のままの元気なテレビ君になりました。シゲルくんは学校の友だちに訳を話して、たくさんのゴミたちを救ってもらいました。
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