トム・ヨークが初めてジュビリー2000について知ったのは、新聞に掲載されていた広告であった。その後、U2のボノがジュビリー2000について書いた論評を読む機会があり、彼自身が以前から考えていた問題とジュビリー2000の活動内容が、全くもって一致しているのに気付くのには時間がかからなかった。
彼はエリック・オズボーン著の「SHORT HISTORY OF THE 20TH CENURY(20世紀の短い歴史)」という本を読み、20世紀の政治についての考察を深めている時期とも重なり、素早く行動に移していった。
99年6月のケルン・サミットのヒューマン・チェーンにU2のボノやペリー・ファレル(元ジェーンズ・アディクション、ポルノ・フォー・パイロス)らとともに参加をしている。
トムの考え
トムは巨額の金を第三世界諸国に貸し付け、その借金の返済のために第三世界に住む人たちが苦しい生活を強いられているのは、西側諸国にその責任のほとんどがあると考えている。
彼は、このような西側諸国の一員でああることに時として「恥ずかしさ」さえ感じることもあるという。彼にとっては、西欧はすでに素晴らしいどころか、最も嫌悪するものの一つであり、それは彼がツアーの中で見てきた物事に由来するようである。
彼は、非西欧の国々の人たちが西欧化していくことにショックを受けたのである。なぜなら、その国独自の文化を西側の国々が破壊し、西側の価値観を植え付けていっていると感じることが多いからである。
トムの行動
ジュビリー2000の活動の一環として、トムは99年のケルン・サミットの直前に、オン・ライン上でジュビリー2000に関するファンとのインタヴューに応じている。
ジュビリー2000に関係のないバンドの活動に対する質問には一切答えず、関心を示してくれたファンの質問には丁寧に答えている。
その中で、彼は現在のシステムが20年後には、「原始的で野蛮な物だったと思いたい。なぜなら、これは新しい形の奴隷制度なのだから」と語っている。
そして、2000年の今年、G8の中で債務の帳消しに最も消極的な日本で開催される沖縄サミットをにらみ、トムは日本でのジュビリー2000の支持を呼びかけるため、ロック雑誌「スヌーザー」にコンタクトをとり、特集を組むことに成功したのである。
彼はこのインタヴューの中で、「日本人は本当に親切で素晴らしいホストだ。だから一度でも無謀に大声で言ってみたらきっとG7はショックで思わず耳を傾けるんじゃないかな。どうか無謀に大声を上げてみて欲しい」といっている。
日本では抗議運動などといった文化が西欧に比べて根づいていないだけに、日本で大声が上がれば、本当に効果的にアピールできると考えているのはなにもトムだけではないと思う。そして、その大声を上げるのはもちろん我々日本人なのである。