ビースティ−ズとチベット
そもそも、なぜビースティ−ズとチベット問題なのか? と不思議に思われている人も多いのではないだろうか。 彼らの悪ガキぶりを知っているのであれば、その摩訶不思議な取り合わせに当然ビックリしたであろう。 まずは、そのあたりから話を進めていくことにしよう。
ビースティ−ズにチベット文化を持ちこんだのはアダム・ヤウクである。
ミラレパ基金の設立
ミレレパ基金の設立に関しては『イル・コミュニケーション』に収録されている「ボウティサトゥヴァ・ヴァウ」と「シャンバラ」の2曲でチベット仏教の読経をサンプリングし、その印税をどうするかということがきっかけとなった。 ミラレパは94年にロラパルーザに僧侶を送り込み、ビースティ−ズのアメリカ・ツアーに教育ブースを開設した。この当時ビースティーズがチベット問題に取り組んでいるなんて知っているファンの人たちがどれぐらいいたのかは知らないが、コンサート会場で教育ブースなんかがあることに戸惑ったり、不思議に思ったに違いない。だって、その昔の彼らはステージ・セットとして25フィートの油圧式ペニスを置いたり、はちゃめちゃな言動で世間をバカにしていた悪ガキトリオだったのだから。 まあそんな中でも、彼らは彼らなりに色々と学んでいった。ミラレパ基金の設立目的は資金を集め、チベットの子供をアメリカへ呼び、教育を受けさせたり、既成の慈善団体に寄付をしたり、教育を通じてチベットの問題を世間にアピールすることなどが中心になっていった。 チベタン・フリーダム・コンサート
その中でも最も重要な、また最も彼ららしいアピールの方法として、96年6月に行われた第1回チベタン・フリーダム・コンサートの開催があげられる。 中国政府はこのコンサートに参加したアーティストのツアーを禁じ、アルバムを国内で発売禁止にするといった行動に出ていることからもコンサート自体がかなり社会的に注目を集めていることが窺い知れる。 しかしながら、欧米や日本の政府は10億を超える人口を抱える魅力的な中国の市場を優先し、経済援助やパートナーシップをお互いにより深めていく政策をとっているのである。 ヤウクは、チベットの中に自分自身の、そして我々が抱えている問題の解決をするカギがあると考えている。我々は利己的な考えから嫉妬や憎しみといった感情を持ち、他人を傷つけてしまうことが往々にしてあるが、チベット仏教の教えでは、常に自分よりも他人の方が重要であると考えるため(それは、自分は一人しかいないが他人は数え切れないほどいることからも明らかであると説いている)、慈悲の心を持って他人に接し、無私無欲であるようにと説いている。
我々に出来ることは?
まあ、大体こんなところが今までのビースティーズのチベットに対する活動内容であるわけだが、アダム・ヤウクの行動が実際にどれだけの人の心を動かすことが出来たのかは定かではない。 そんなちっちゃなことが一つ一つ積み重なっていくことが一番大切なことであり、ヤウクが僕たちに訴えかけていることなのではないだろうか。 |