Kirkwood Gap


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小惑星の軌道半径(長半径)を統計的に見てみると、ある位置で極端に数が少ないことがあります。これをKirkwoodのギャップと呼んでいます。わかりやすくグラフを見てみましょう。30,000個の小惑星の半径と小惑星の数をとってグラフにしました。

小惑星の軌道長半径の統計グラフ


ケプラーの法則から、惑星や小惑星の軌道長半径とその周期には次のような関係があるので、横軸を周期で置き換えてみますと、次のようなグラフになります。

T^2∝a^3
周期と長半径の関係

小惑星の軌道長半径の統計グラフ(周期に置き換え)

惑星や小惑星は主に太陽の重力に支配されていますが、木星もまた非常に大きな質量を持っているので、小惑星などに作用を及ぼしています。そこで木星の公転周期12年に注目すると、Kirkwoodのギャップは木星の周期の1/2、1/3、1/4になる位置で小惑星が存在しにくいということがわかります。つまり、周期3,4,6年になる小惑星はほとんどないということです。このことから、木星の重力が周期的にある影響を及ぼして、そこに小惑星を存在させないようにしていることが想像つきます。

具体的にどのような力が及んでいるのでしょうか?
わかりやすくするために、周期が1/2にあった小惑星の動きを追ってみましょう。最初、ある小惑星は木星の重力を強く受けて引き寄せられます。小惑星が1周すると、その間に木星は半周します。そうなると木星による重力は弱くなります。次に小惑星が1周すると、木星は元の位置に戻ってきて、再度その小惑星は木星に強く引き寄せられます。


木星と小惑星の動き
このように、1/2の周期にある小惑星は2周に一度決まった位置で木星の強い重力を受けますので、小惑星の軌道はどんどん変化していき、そのうちその場所に存在しなくなります。
一方、木星の周期と同期しない位置にある小惑星はどうでしょう?
木星の重力の影響はもちろん受けるのですが、周期的に決まった位置で起きないので、何千年という時間平均で見た場合に、トータルの木星による影響は0になってしまいます。したがって、木星の影響は関係ないということになります。

これをシミュレーションで検証してみましょう。


シミュレーションは次のように行います。

太陽、火星、木星の3つの重力によって、小惑星は動くとします。
初期条件として、初め小惑星は均等な感覚で、円軌道を描いているとします。

このようにして、数千年後の小惑星の軌道半径をグラフにしてみると、ある位置で大きく小惑星が動かされています。これがちょうど木星の重力の影響によって、Kirkwoodのギャップができるのです。

小惑星の軌道半径の時間変化


ピンクのラインだけ他のラインに比べ大きく振られています。これはちょうど木星の1/3の周期にあたる部分で、3回に1度木星と共振して、大きく振られています。

このように計算機による太陽系力学で大きく役に立ちます。他にもカイパーベルト天体も14次の近似計算で最近メカニズムがシミュレートされたようです。そのうち太陽系の惑星の並び方も計算されることでしょう。

2000,4,12

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