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大沼紀子の本棚

  1. 真夜中のパン屋さん 午前0時のレシピ
  2. 真夜中のパン屋さん 午前1時の恋泥棒
  3. 真夜中のパン屋さん 午前2時の転校生
  4. 真夜中のパン屋さん 午前3時の眠り姫
  5. 真夜中のパン屋さん 午前4時の共犯者
  6. 真夜中のパン屋さん 午前5時の朝告鳥

真夜中のパン屋さん 午前0時のレシピ ポプラ文庫
 半月前にオープンしたばかりの真夜中にだけ営業するパン屋さん。店員は二人、優しそうなオーナー暮林と、気難しいが腕のいいバン職人の弘基。二人とも若くてイケメン。そんなパン屋にオーナーの亡き妻の腹違いの妹だと名乗る女子高校生希実がやってくるところから物語は始まっていく。
 冒頭はその女の子と二人の出会いを、2話目は彼らとパンを万引きした小学生の男の子・こだまとの出会いを、3話目は高層マンションの1室から望遠鏡で外を覗く引きこもりの脚本家・斑目との出会いを(この話のラストで、パン屋の二人の思わぬ関係が明らかにされます。)、4話目はホームレスのニューハーフ・ソフィアとの出会いが描かれます。それぞれ心に悩みを抱えた人たちが真夜中しか営業しないバン屋さんに集まってきて、みんな温かい気持ちになってそこから出て行きます。そして彼らの物語を読む人も温かい気持ちにさせてくれる、そんな作品です。
 でも、なぜ真夜中にしか開かないのでしょうか。
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真夜中のパン屋さん 午前1時の恋泥棒 ポプラ文庫
 真夜中のパン屋さんシリーズ第2弾です。
 今回は、弘基の中学時代の元カノ・由井佳乃がブランジェリークレバヤシに居候することになったことから起きる騒動を描きます。
 佳乃の荷物には大金の入ったバックがあり、彼女を探して男たちが現れたことから、彼女は結婚詐欺師ではないかとの疑いが出てきます。佳乃の暮林に対する馴れ馴れしい態度に気が気でない希実や逆に佳乃の馴れ馴れしさが嬉しい斑目と、ブランジェリークレバヤシは佳乃の存在に大騒ぎ。そんなところに弘基の中学時代の友人である危ない感じの多賀田も登場し、不穏な雰囲気となっていきます。                ,.
 暮林、弘基、希実、斑目、ソフィアの面々が力を合わせて騒動を解決していく中で、思わぬ事実が出てきます。ある意味変態の斑目の活躍ぶりが楽しいです。
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真夜中のパン屋さん 午前2時の転校生 ポプラ文庫
(ちょっとネタバレ)
 真夜中のパン屋さんシリーズ第3弾です。
 今回は、希実のクラスに転校生がやってきたことから起こる騒動を描きます。 この転校生が変わっていて、腹話術用の人形(それもアンジェリーナという金髪の人形です)を持ってクラスに現れます。「そんなやつ、いるかよ〜」と、ちょっと設定には呆れてしまいながらも読み進めました。
 この転校生がこだまの母親である織絵の不倫相手の子どもということが明らかとなったり、織絵が看護師として勤める医院の院長との仲が怪しげだったり、さらにはこの院長が患者の老人たちに財産を自分に相続させるよう遺言を書き換えさせているという疑惑も出て、相変わらすのドタバタ騒ぎとなります。
 いつもの面々に加え、前作で登場した多賀田もこの転校生を助けるために動き回る、いつものパターンのストーリーです。
 “魔法使い”になりたいと思っていた人物が誰かには、すっかり大沼さんに騙されました。
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真夜中のパン屋さん 午前3時の眠り姫 ポプラ文庫
 真夜中のパン屋さんシリーズ第4弾です。
 今回、ブランジェリークレバヤシに騒動を持ち込むのは希実の従姉妹の沙耶。年の離れた男と駆け落ちしてきたと希実の母・律子を頼ってやってきます。そのままパン屋に居候することとなった沙耶と一緒に嫌々ながら希実は母の行方を捜します。
 ブランジェリークレバヤシの面々が、飛び込んできた人の悩みを解消するために力を合わせて活躍するいつものパターンのストーリーです。今作では希実の従姉妹の登場で、いよいよ希実の謎が解き明かされます。彼女はなぜ記憶を失ったのか、雨の音を嫌うのはなぜなのか。
 暮林が休暇という理由で店に姿を見せませんが(これがまたある理由があるんですよね)、いつもの面々のほか、沙耶の駆け落ち相手の安田というキャラがある意味大活躍します。
 ストーリーも午前3時まできたので、午前5時まであと2イ乍で大団円でしょうか。
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真夜中のパン屋さん 午前4時の共犯者  ポプラ文庫 
 シリーズ第5弾です。シリーズのラストは「午前5時〜」と予告されているので、今作はラスト前の作品ということになるのでしょうか。
 冒頭、入院した母・律子と希実との再会から始まるストーリーは、母親が自分の付き添いに希実の父親を呼んだという希実にとっては唖然としてしまう出来事が起こり、大騒動を予感させるスタートとなります。
 いよいよ希実の父親が登場して、シリーズも佳境に入ってくるという感じです。今まで明らかでなかった母・律子と父親との出会いからその別れまでのいきさつ等々様々な事実が明らかになっていきます。更に、父親の登場と相俟って、希実に祖母が遺産相続をさせたいということから、希実は父親の一族が経営する会社の主導権争いを巡っての争いの渦中に巻き込まれていくことになります。そこに暮林の妻・美和子の幼馴染みだという黒いスーツに長髪にサングラスといういかにも怪しげな男・榊が登場し、希実の周囲を動き回ります。
 様々な事実が明らかになっていく中で、暮林と弘基、そして斑目やソフィアなどのいつものメンバーが総登場して希実を守るために奔走します。果たして、希実の父親とはどういう人物なのか。会社の主導権争いに巻き込まれた希実はどうなるのか。事態は二転三転し、シリーズファンとしては事態の推移にやきもきします。
 終盤には唐突に悲しい出来事が起こり、さらにはシリーズラストに向けてのストーリーの展開になるべき、ある事実も仄めかされます。さて、ラストはどういう着地を見せてくれるのか、楽しみですね。 
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真夜中のパン屋さん 午前5時の朝告鳥  ポプラ文庫 
 シリーズ第6弾にして最終作です。今作では前作から5年が経過した中での希実をはじめとした登場人物たちそれぞれの後日譚的な話が語られていきます。
 冒頭の「Melangerー材料を混ぜ合わせるー」は脚本家の斑目が主人公。引き籠もりで一歩開違えば変態だった斑目も今では一児の父親。娘が自分に似ている似ていないで一喜一憂する普通の父親をしています。この編では、妻の妹がマタニティブルーになったのを慰めようと義妹夫婦が住むシンガポールに妻子と出かける斑目が描かれます。
 「Petrissage & Pointageー生地を捏ねる&第一次発酵」はソフィアが主人公。病気になった母親のために家族と絶縁状態にあったソフィアは家族との交流を再開させるを父親が亡くなり、母に安田を紹介したソフィアだったが、安田の母の妨害と父の出現により安田との別れを決意する。果たしてソフィアと安田との恋はどうなるのか。
 「Tourage & Faconnageー折り込み&成形」は弘基が主人公。両親の負った負債を返済するため、ブランジェリー・クレバヤシを辞めて、フランスに出店した店で働くこととなった弘基。ある日、夕食に入ったレストランで強盗に遭います。
 「Cuissonー焼成ー」は希実が主人公。希望の大学に合格したものの、しばらくして引き龍もり状態となった希実。ようやく立ち直って、アメリカに語学留学した希実が日本に帰る前にニューヨークである事実を確認しようとマンハッタンにある家を訪ねようとします。
 シリーズの掉尾となる「Closed」は暮林陽介が主人公。弘基がいなくなり、今ではブランジェリー・クレバヤジの店主として、弘基ほどの技術はなくても味のあるパン作りをしているが・・・。
 真夜中に開いているというのはそういう意味もあったのかという種明かしもあり、また、希実に恋人ができるという話も語られており、その相手がやっぱりなのか、意外なのかはさておき、誰もが幸せになって大団円でシリーズは締めくくられます。 
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