最初にこの作品を読んだ時は、正直言ってストーリーを追いかけるだけで
終わってしまったのですが、今回この場で紹介するにあたり、読み返して
あらためてディアスの魅力を再確認しましたね〜。
言葉を飾ることはしないけど、ずば抜けた注意力と洞察力でミラの心情を理解し、
ときに鋭く指摘するディアス。
読むほどに、つくづく味のある男性だなあと感じます。
ディアスという男の中にある孤独感と、ミラの喪失感は深く結びつき、
同情とは違うなにか、同志とでもいうべき絆が生まれていきます。
でも、それだけではありませんね。男女としての魅力が互いを絡め取り、
張りつめた緊張感がふっとほぐれる時こそ、一気に段階を進ませていく予感が
ひしひしと感じられて。
そういうディアスが相手だからこそ、いったん足を踏み出したら最後、
もう引き返せない。
本能的にそれを察知して恐れを抱くミラ。
ミラがそんな自分の気持ちに逡巡したり、抵抗したりする一方で、
ディアスの方にはそういう迷いはありません。
恋のもろもろをすっ飛ばして、いきなりもっとせっぱ詰まったものになる。
そんな気持ちを反映すれば、二人の最初のラブシーンが原始的な
激しさと率直的さにあふれているのも当然かもしれません。
なにも言葉はいらない。
ミラの髪のひと筋の震えにも、ため息のひとつにも
感覚を研ぎ澄ませれば、二人だけの会話は満ちている。
それが、ディアスらしい愛し方なのだと思います。
この作品で私が一番好きなのが、ミラが自分の子供を探す人生に
別れを告げたあとの二人の描写です。
愛ゆえに自らの意思で、ジャスティンを手放したとはいえ、
想像を絶する喪失感と苦しみに七転八倒するミラ。
それは辛いけれど残酷な運命を受け入れ、新しい生活を始めるためには
どうしても避けられない道だと、ディアスはちゃんと理解しているのですね。
なにも言わずに何週間も、ミラの食事や衣類、家事一切の世話をする
ディアスは、まるでミラという光に寄り添う影のよう。
なんとなく「ベルサイユのばら」のアンドレを思い出しちゃいました。
細かいところだけど、抜け殻のようになっているミラの代わりに
ディアスが慎重に化粧水を使う順番を思い出し、肌の手入れをさせる
ところなどは、女性作家ならでは繊細な描写で、とっても好きだったなあ。
しかし、なんといってもディアスの奉仕で一番スゴイのは、
心の傷をしばし忘れさせるために、ミラを抱くシーン。
彼女だけに悦びを与え、シャワーを浴びながらディアスが自分を
慰めようとする場面では、思わず本を読みながら
「うわ〜そこまでさせるか、リンダハワード・・。」
と、口に出してしまいましたよ、ホントの話☆
何が起こったか気づいて、シャワーの下に飛び込み
彼を止めようとするミラですが、
この時のディアスが一番セクシーで、ゾクゾクしましたわ。
暗く猛々しい瞳、熱い湯気とシャワーの中で濡れた黒い髪。
「本気じゃないなら、するな」
かすれた声は、鉄の自制心がもう限界に来てる証拠なわけで。
孤高の狼のように超然としたディアスだけど、ミラにだけ見せる
激しさ、情の濃さが魅力一杯の佳作だったと思います。
ラスト近くになって、お互いの年齢を教えあい、ミラの方が数ヶ月年上だと
わかったときのディアスのジョークも最高でした(^^)
もちろん、二人が結婚して9年がたったある日、というラストは
まるで映画のワンシーンのように、あたたかく心に刻まれておりますよ。
すでにお手元にこの本をお持ちの貴女、良かったらもう一度
この本を読み返して見て下さいませ。
きっと、黒髪の 「キング・オブ・無口」 が、さらに愛しくなりますよ〜♪
さて、次回のリンダ作品ピックアップですが。
リンダ本の発刊としては、後発会社ですね。
ヴィレッジブックから刊行された 「天使のせせらぎ」 を
ご紹介したいと思います。
舞台が19世紀に移り、これまでとはかなり趣が違いますが、
意志の強いヒロインと、負けず劣らずの頑固さを発揮するヒーローの
バトル&ロマンスはいかに?って感じでしょうか。
キモの座ったレディ達の活躍に、エールを送りたいわ〜☆
・・・・と、予告しておきながら、またまた作品変更で申し訳ありません。
MIRA文庫から待望の 「マッケンジーの山」 刊行という話を
聞いては捨ておけず(笑)先に、「マッケンジーの山」を
ピックアップさせて頂くことになりそうです。
(2005年6月20日にアップ予定デス)
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