第120夜 「謎の村雨城」には、涙雨が降るのだ…
大傑作「ゼルダの伝説」で1986年に幕を開けたファミコン・ディスクシステムですが、この「謎の村雨城」は、当初は「ゼルダ」と同時発売とアナウンスされていました。結局、少し発売が遅れてしまい、ディスクシステムオリジナルゲーム(「スーパーマリオ」などのディスク版は発売されていたのですが)としては、第二弾になってしまったんですけどね(実際には「ゼルダ」の二ヶ月後に発売)。
当時のこのゲームに対する期待度というのはものすごいものがありました。
というのも、「だって、第一弾が『ゼルダ』だし!」という先入観をみんな持っていて、「ディスクシステムのゲームは、みんなゼルダレベルに達しているに違いない、容量3倍だし」というイメージが確立されていましたから。
このゲームの設定は、江戸時代に突然現れて5つの城を占拠している謎の生命体「ムラサメ」を倒すために青年剣士「鷹丸」が剣をふるって立ち上がる、というものなのですが、まあ、よくあるアクション剣劇ゲームというか、「江戸時代フロントライン」(例がややマイナー?)みたいな感じです。
ただし、実際に主人公が剣をびゅん!と振るう感じはけっこう気持ちよかったですし、ゼルダと同じ「画面の端に行かないとスクロールしない」という設定は、純然としたアクションゲームとしてはちょっとやりにくい感じはしましたが、軽快なメインテーマは耳に残っていますし、それなりに楽しいゲームだったと思うのです。
でも、このゲームには大きな弱点がありました。
それは「異様な難しさ」。
「ゼルダ」が、「頭はちょっと使うけど、(少なくとも表ゼルダは)時間をかけてちゃんとレベルアップしていけば解けるレベル」だったにもかかわらず、「村雨城」は、「やたらと難しいわりに、いくら先に進んでもあんまり変化のないワンパターンのアクションゲーム」という感じでした。
しかも、最終面をクリアしても1面に戻されるという、無限ループ仕様(だったそうです。僕は最後まで行けずに挫折)。
「ゼルダ」で「新世代のゲーム」を見せ付けられたあとだけに、なんだか「退化」を感じさせられて、ゲームのデキ以上に失望させられたものでした。
本当は「純粋な剣劇アクション」としては、かなりデキは良かったですし、僕も「みんなが言うほど悪いゲームじゃないけどなあ。BGM好きだし」と内心思っていたんですけどねえ。
結局、「ディスクのくせに、こんなものかよ『村雨城』って…」という僕たちの失望は、その後延々と新しいディスクのゲームが出るたびに繰り返されることになるのです。
凄かったのはディスクシステムではなくて、『ゼルダの伝説』というゲームそのもの、だったことに気が付くまで。
そう考えると、なんだか「村雨城」ってかわいそうなんですが、今回「ファミコンミニ」に取り上げられたのは、僕みたいな「隠れファン」がけっこういたのかな、なんて内心喜んでもいるのですけどね。