第154夜 幻のセガ救世主伝説!『北斗の拳〜セガ・マーク3版』
参考リンク:『北斗の拳(セガ・マーク3版)』
『北斗の拳(ファミコン版)』
このゲーム(セガ版)が発売されたのは、1986年の9月。当時ファミコンに対して苦戦中だったセガ陣営は、苦肉の策として、当時の人気漫画「北斗の拳」をゲーム化したのです。北斗神拳伝承者のケンシロウが、愛するユリアを助けるために敵と闘っていくゲームなのですが、基本的には横スクロールで、技を出しながら進んでいき、途中であらわれるハート様などの中ボスを蹴散らし、最後は各ステージのボスと1対1で勝負、という流れになっています。それにしても、このゲームが当時のセガ派にとって忘れられないものになった理由というのは、なんといっても「ファミコン版・北斗の拳」に勝った!という優越感なのです。ちょうど、マーク3版から少しだけ後の1986年の10月に東映からファミコン版「北斗の拳」が発売されたのですが、これが、なんというか…
もう時効でしょうから言ってしまいますが、いわゆる「クソゲー」だったんですよファミコン版。キャラクターには顔が描かれておらず、「まあ、ケンシロウだと強硬に主張するのであれば、青い服着てるしなあ…」というレベルの「再現性」のゲームで、なぜだかわからないのですが、敵をパンチで倒すと出てくる「あべし」とかを取るとパワーアップして技が出せるとか、途中である建物に入らないと先に進めないという余計なお世話のアドベンチャー性(でも、あのころのゲームは、けっこうそんなのばっかりだったのです)が入っていたり、本当に「これは、北斗の拳というより、『カラテカ』のリメイクなのでは…」と僕と弟はさんざん嘆いていたものです。だって「北斗の拳」のゲーム化っていったら、「原作もののゲームはつまらない」のが定説でも、ちょっとくらいは期待してしまうではないですか。
そして、「こっちは面白い!」という評判で手に入れた「セガ・マーク3版」は、本当に評判に違わぬ面白さだったのです。余計な謎解きとかの要素は排除され(ボス攻略に、ちょっと意地悪なところはありますが)、大きくて確かに原作のキャラを彷彿とさせるグラフィック(しかもカラフル!)、爽快感のあるアクションと、まさに、「キャラクターゲームの金字塔」でした。当時のセガは、ファミコンに押されていて(というか、ほとんど絶滅寸前の状況に追いやられていて)、僕のような「セガの技術探究心を愛するゲーマー」たちは、内心歯がゆい思いをしていたのです。どうして、マーク3のほうが性能がいいはずなのに、ファミコンばっかりがもてはやされるんだ!と。こうして、同じ題材かつ発売日が近いゲームで明らかな「差をつけた」というのは、かなりのアドバンテージ!…だと思ったのですが、結局は「バルトロン」の東映動画だし…ということで、マシンの性能云々よりも、メーカーのせいだと、みんな考えてしまったようです。いや、僕も正直、せっかくの北斗の拳なんだから、もっとマシなメーカーに…と思いましたが。
マーク3ユーザーたちは、「ファンタジーゾーン」や「ファンタシースター」でときどき溜飲を下げてはみたものの、歴史上、セガは主流にはなりえなかったのですけど。
それでも、この2本のゲームが発売されたときだけは、確実に、セガマニアたちは優越感に浸れていたのです。ふん、ファミコンの「北斗の拳」って、あの「あべし」とか出るカラテカみたいなやつだろ?って。