第174夜 夏が来れば思い出す……「栄冠は君に」
参考リンク:栄冠は君に(gooゲーム)
「A列車で行こう」シリーズや「トキオ」「関ヶ原」など、当時のパソコンのシミュレーションゲームシーンに独自の切り口で君臨していた「アートディンク」が1990年に発売した「高校野球シミュレーション」。このゲームは、プレイヤーは全国4,000校近くの全国高校野球大会の参加校のうちの1つの学校を選んで監督となり、甲子園優勝を目指すというものなのです。そして、このゲームの最大の特徴は、プレイヤーはあくまでも「監督」であるということ。ですから、レギュラーや主将を決めたり試合中の選手交代や盗塁などのサインを出したりはできるのですが、結局のところ、それを実行するのは、あくまでも「選手」なのです。選手たちは、なかなか思い通りに動いてはくれません。それがまた、このゲームの最大の魅力であると同時に、もどかしいところなのですよね。
あの「ベストプレープロ野球」と似たようなシステムなのですが、あちらは1シーズン通しての戦略が必要なのに対して、このゲームの舞台は「夏の高校野球」ですから、地区予選以降は、「1試合でも負けたらゲームオーバー」になってしまいます。「2」以降では、翌年も同じ高校を率いることができ、卒業していく選手や、新しく凄い選手が入ってきたりもするのですけど、「1」の舞台は、本当に「あるチームのひと夏」だけ。
もちろん、それぞれの高校は、ある程度現実に即した「強さ」が決まっていて、名門校は選手の質が高い一方で、現実で弱い学校は、どうやってもなかなか勝てません。僕の母校には残念ながら野球部がなかったので地元の有力校を率いたりしてみたのですが、結局、甲子園で準々決勝まで進んだのが最高で、優勝旗には手が届きませんでした。画面の動きは少なくてキャラは小さいし、選手は自分で動かせないし、なんだかもどかしいゲームに思えたのですけど、「負けたら終わり」というシチュエーションは、本当にドラマティックなものなのですよね。
このシリーズは現在でも続いていて、プレステ2などでも続編が出されているみたいなのですが、正直、あまりグラフィックや演出に凝ってしまっている最近のものより、「1」とか「2」の素っ気無いくらいのグラフィックやシステムのほうが、かえって面白かったような気がします。本当に、あの頃のアートディンクのセンスは冴えてました。