第139夜「アウアーアーアー」の悲劇を越えて…「アフターバーナー」


 「ハングオン」ではじまった、「セガ・体感ゲームシリーズ」は、「スペースハリアー」「アウトラン」など、数々の大ヒット作を生み出しました。中でも1987年に発売された、この「アフターバーナー」は、まさに「体感ゲームの金字塔」と言うべき作品でした。

 ゲームシステムはシンプルで、プレイヤーはコックピットにおさまって最新鋭戦闘機・F14トムキャットに乗り込み、ホーミング(自動追尾)ミサイルで敵機を撃墜しながらステージをクリアしていきます。そして、レバーを逆方向に急に傾ければ、宙返りができるなどの、「戦闘機っぽい雰囲気」も十分でした。まあ、ゲーム中に調子に乗って宙返りしていると、あっけなくやられてしまったりもするわけですけど。

 戦闘機のパイロットを題材にした映画「トップガン」の大ヒットもあり、このゲームも大ヒットしたのですが、このゲームの凄かったところはゲームの内容だけではなくて、体感ゲームのピークともいえる、その筐体の動きでした。前後左右に激しく動くシートは、まさに「体感!」という感じで、イベント用として、1ゲーム500円で、「遊園地の乗り物みたいに、本当にシートが『宙返り』してしまうバージョン」もありましたし。

 これだけヒットしたゲームですから、多くの家庭用ゲーム機にも移植されました。セガ・マーク3版は、発売前は、「史上初の4メガカートリッジ!凄い!」なんて、さんざんセガ信者の機関紙であった「BEEP!」で持ち上げられていたものの、実際に発売されてみれば、その御用雑誌でさえ「あの、失敗作・アウアーアーアー(伏字)」とか叩かれてしまうようなシロモノで(ハードの性能を考えたら、しょうがないと今は思うのですが、当時は落胆したものです)、「静止画はアーケードそっくりなのに、動かしてみると…」というFM−TOWNS版など、「やっぱり、アフターバーナーは家庭用ゲーム機やパソコンではムリだな…」とみんなあきらめかけていたのです。

 しかし、X68000版は、「弾煙をメッシュにする」という表現の工夫で、「グラフィックもある程度再現されていて、その上、ゲーム性も移植されている」という素晴らしい作品だったのです。さらにサウンドも完全再現で、あのときほど「X68000を持っていて良かった!」と思ったことはありませんでした。思わず、サイバースティック(操縦桿類似のアナログスティック、たぶん2万〜3万円くらいしたような記憶があります)を大枚はたいて買ってしまうくらいの優越感と歓喜。今から思えば、束の間の「頂点」でもあったんですけどねえ。

 今では家庭用ゲーム機に簡単に移植されて、「セガ・エイジス」では2500円で遊べるようになってしまったのですが、あの「サイバースティックで遊んだX68000版」の感動は、今のゲーマーには、きっと理解できないに違いありません。

 そういえば、アフターバーナーにハマって、「パイロットになるために、自衛隊に入る」と言っていた友人は、今頃どうしているんだろうか…