最新の栄養学理論1・・・肉・牛乳・脂肪・油

動物性タンパク質の過剰摂取の害

これまで、肉・牛乳(乳製品)・卵は、栄養価の高い食品と考えられてきました。これらの食品はスタミナをつけ、欧米人のような頑強な体をつくると言われ、積極的に摂るように勧められてきました。肉・牛乳・卵は、まさに「欧米型食事」を形成する中心的な食品です。

必須アミノ酸を含む食品は、私たちの健康維持のためには不可欠です。そして肉や牛乳・卵などの動物性食品には、この必須アミノ酸が豊富に含まれ、理想的なタンパク源となっています。従来の栄養学では「完全タンパク質食品」と呼ばれ、重要視されてきました。

しかし科学の最前線にある生化学栄養学・現代栄養学は、これまでの常識を覆し、動物性食品の摂り過ぎによる、さまざまな弊害を明らかにしています。「タンパク質の過剰摂取の害」を、科学的に明確にしています。

動物性タンパク質の過剰摂取

穀類・豆など植物性のタンパク質を含む食品には、食物繊維や炭水化物なども多く含まれています。そのためたくさん摂っても、タンパク質の過剰になるほど食べ過ぎるようなことはありません。一方、肉類などの動物性食品を多食すれば、簡単にタンパク質の過剰摂取を招いてしまいます。

現代栄養学では、タンパク質の必要量の目安を、大人では体重1kgにつき、1日に0.8〜1gとしています。つまり体重60kgの人では、48〜60gが適量ということになります。現在アメリカ人のタンパク質の平均摂取量は約90gですから、およそ体重90〜110kgの人の必要量に相当する量を摂っていることになります。これでは、いくら体の大きいアメリカ人であっても過剰摂取と言えます。

ところが1988年度の厚生省(当時)の調査では、日本人の大人のタンパク質の摂取量は、およそ80gにものぼっています。アメリカ人の体格に比べ圧倒的に小さな日本人が、ほぼアメリカ人並にタンパク質を摂っているのです。必要量の2倍近く摂っていることになります。アメリカ人でさえも摂り過ぎなのに、最近の日本人は、それ以上に過剰摂取に陥っているということです。(※タンパク質の摂取源から見たとき、アメリカ人に比べ日本人は植物性食品からの摂取が多いのですが、現在では半分以上を動物性食品から摂っています。)

大腸ガンの原因となる

肉の過剰摂取に、食物繊維の不足が加わって「大腸ガン」が引き起こされると言われています。動物性タンパク質を大量に摂ると、食べたものが十分に消化・吸収されないまま大腸に至り、腐敗を起こすようになります。そして腸内環境が悪化し、硫化水素・インドール・メタンガス・アンモニア・ヒスタミンなどの多くの毒素・発ガン物質がつくり出されるようになります。こうした強烈な組織毒が、人体の老化を早め、ガンをはじめとする多くの成人病を引き起こすことになるのです。

さらに肉に含まれる大量の脂肪によって、いっそう腸内環境が悪化し、発ガン物質が多量につくられるようになります。加えて食物繊維の不足が、発ガンを促進することになります。間違った食事により腐敗し、毒素をため込んだ“便”が長時間にわたって腸内にとどまることで、発ガン物質の吸収が高まってしまうのです。肉食の増加にともない、大腸ガンは確実に増え続けています。

アレルギー反応を引き起こす

タンパク質過剰摂取の弊害の1つがアレルギーです。アミノ酸に分解されていない大きな分子のタンパク質(未消化タンパク質)が、腸壁から吸収され、血液中に運ばれることがあります。そうした未消化タンパク質が免疫系によって「異物(アレルゲン)」として認識されると、アレルギー反応が引き起こされます。そして、かゆみや湿疹・腫れ・くしゃみなどの症状が現れるようになるのです。アトピーや喘息には、こうした「食物アレルギー」が大きくかかわっています。

現代人が好む肉や牛乳・卵は、アレルゲンになりやすい食品です。日本人はもともと穀菜食民族で、穀類や豆類・魚からタンパク質を摂ってきました。それが短期間のうちに、大量の肉や牛乳を摂るようになったのですから、体はそれをうまく処理することができません。

高タンパク食品は、それ自体がアレルゲンになるとともに、腸管(腸壁)の透過性を高め、さらに未消化タンパク質を引き込んでしまうことになります。多くの現代人は動物性のタンパク質を多食することによって、腸壁のバリアー機能を弱らせています。特に子供の場合は腸が十分に発達していないために、深刻なダメージを受けることになります。こうしたことが繰り返され、腸の炎症やむくみ・下痢などが起こり、いっそうアレルギーがひどくなるのです。

最近、大腸炎やクローン病といわれ、腸の炎症や潰瘍・下痢などに苦しむ人々が増えていますが、動物性タンパク質の過剰摂取が、その大きな原因となっています。

カルシウムの喪失と、骨と歯の弱体化

大量に摂取され血液中にあふれたタンパク質(アミノ酸)は、最終的には尿として体外に排泄されることになりますが、その過程で消化器系全体や、肝臓・腎臓に負担をかけることになります。過剰なアミノ酸が分解されると、毒性の強い窒素残留物(アンモニア)が生成されます。それは肝臓で処理され、無毒な尿素に転換されます。そして腎臓の働きを通じて、尿として排泄されることになります。このようにタンパク質を多量に摂ると、解毒の働きをする肝臓と、排泄を担う腎臓に、大きな負担をかけることになるのです。

尿素が増えてくると、それを尿として流し出すために、体は多くの水分を必要とします。そして尿と一緒に、カルシウムやマグネシウムなどのミネラル類も排泄されてしまうことになります。尿素の排泄がスムーズに行われないと有害な尿酸が生成され、関節にたまって痛風を起こすことになります。(※こうした要因以外に、痛風の発症にはストレスが大きくかかわっていると言われています。)

また大量のアミノ酸が分解されると、血液は急激に酸性に傾き、それを中和するためにカルシウムやマグネシウムが必要とされます。それらが血液中に不足していれば、骨や歯から溶かし出して補うことになります。

さらに肉類は典型的な酸性食品で、カルシウムに対するリンの比率はおよそ50倍にもなっています。血液中のカルシウムとリンの比率は1:1に保たれていなければなりませんが、肉を多く摂ることで、そのバランスが大きく崩れてしまいます。その結果、血液中の酸・アルカリ濃度を調節するために、いっそう骨や歯からカルシウムが溶け出すことになります。

このようにタンパク質を大量に摂ることによって、カルシウムなどのミネラルが失われ、骨の弱体化が急速に進行することになります。肉を多食する先進諸国では、骨粗しょう症が多発しています。日本においても、動物性タンパク質の摂取が増えた昭和30年代以降、骨粗しょう症や骨折など、骨の異常が急増しています。

※肉の大量生産と汚染の問題

今、私たちが食べている牛肉は、牧場でのんびりと草をはんで育った牛の肉ではありません。その大半が工業製品と同じように、大量生産システムによって飼育された牛の肉なのです。それは豚肉・とり肉も同様です。

家畜たちは、終日、身動きもままならない環境に置かれ、ただエサだけを与えられ飼育されています。それでは病気になるのは当たり前です。そこで病気を防いだり肉質をよくするために、大量の抗生物質・ホルモン剤がエサと一緒に投与されることになります。現在では、そうした化学薬剤や耐性菌が肉の中から検出されることは、日常茶飯事となっています。

平成14年度の横浜衛生局の食肉検査統計では、牛と豚の検査頭数の約73%に異常が見られ、肉の一部が廃棄処分になっています。つまり家畜の大半が病気だということです。そして、その病気の家畜の肉を、国民が食べているということです。

数年前から、ヨーロッパやアジアを中心に狂牛病や口蹄疫が大流行してきました。また一昨年(2002年)秋には、日本でもついに狂牛病が発生し大騒動になりましたが、それは、家畜という生命体を異常に扱った結果なのです。

「牛乳信仰」の弊害と、カルシウム・パラドックス・・・牛乳は悪い食品!?

これまでの「牛乳信仰」

肉や卵と並んで、これまでの栄養学で、栄養価の高い優れた食品と言われてきたのが牛乳です。「カルシウムを摂るなら、まず牛乳!」というほどに、家庭でも学校でも牛乳を飲むことが勧められてきました。日本人は欧米人と比べてカルシウムの摂り方が足りない、牛乳を飲めば彼らのように体格がよくなると、国民の大半が信じ込んできました。まさに「牛乳信仰」ともいえる思い込みが浸透してきました。特に成長期の子供たちや妊婦、骨粗しょう症の心配のある閉経後の女性には、牛乳を摂ることが積極的に勧められてきました。

しかし牛乳も肉と同様、決して健康によい食品ではありません。確かにカルシウムは必須ミネラルとして、人間の体にとって不可欠な栄養素です。そして牛乳にはカルシウムが豊富に含まれています。といって、牛乳を飲めばカルシウムが十分に補われ、健康になれるというものではないのです。実際、世界で最も牛乳を多く飲むノルウェー人の骨折率は、日本人の5倍というデータがあるのです。

現在では、牛乳を飲むことは健康にプラスになるどころか、かえって深刻な弊害を引き起こすことが明らかになってきました。アメリカでは一般の医師でも、妊婦や骨粗しょう症の患者に牛乳を勧めるようなことはしません。欧米の医学関係者の間では、牛乳は健康によい食品でないことが常識化しつつあります。

カルシウムの含有率と吸収率の問題

これまで牛乳は、カルシウムの“含有率”が高いから体によい食品とされてきました。しかし単に、含有率が高ければよいというわけではありません。牛乳をたくさん摂った場合には、腸からの吸収を抑えるといった形でカルシウムの吸収を調整するようになります。その結果として、カルシウムの排泄が促されることになります。

そこで問題となるのが、カルシウムだけでなく、他のミネラルや栄養素も一緒に排泄されるようになるということです。(※海外の研究では、カルシウムを多く摂ると便の中のマグネシウムの排泄量が25%も増加し、吸収も抑制されることが報告されています。)

また、牛乳に含まれるカルシウムは“吸収率”がよいから、カルシウム不足の解消に役立つと信じられてきました。今でも盛んにこうした宣伝がなされています。しかし、この見解にはたいへんな問題が含まれています。

まず、本当に牛乳に含まれるカルシウムは吸収率がよいのか、ということです。これについてはさまざまなデータがあって、いまだにはっきりとした結論は出ていませんが、一般には牛乳のような動物性食品のミネラルは、野菜などの植物性食品のミネラルと比べ吸収率がよいとされています。(※最近では、野菜に含まれるカルシウムの方が吸収がよいという報告もあります。)牛乳では10〜30%ぐらいのカルシウムが吸収されると言われています。

さて、牛乳のような高カルシウム食品を摂った場合には、急激に血液中のカルシウム濃度が高まることになります。カルシウムの「吸収率がよい」ということは、このように――「飲んですぐに、血液中のカルシウム濃度が高くなる」ということです。

しかし私たちの体には、ホメオスタシス(恒常性維持機能)という働きが備わっていて、血液中のカルシウム濃度は、常に一定の割合に保たれるようになっています(※1CC中、9〜11mg)。カルシウム濃度がこの割合を超えて高まると、急いで排泄しなければなりません。早急に排泄しないと、さまざまな障害が生じるようになるからです。

そこで腎臓は、カルシウムを尿から流し出すために、ピッチを上げて働くことになります。それには多くのエネルギーが必要とされ、腎臓に余分な負担がかかることになります。そして過剰なカルシウムが排泄されるのと同時に、マグネシウム・亜鉛・鉄などのミネラルや、他の栄養素も失われてしまいます。その結果、さらにミネラル不足が進むことになります。

このように牛乳に含まれるカルシウムの吸収率がよいということは、人体にとって必ずしもプラスとはなっていないのです。(※カルシウムとマグネシウムの尿からの排泄量には、相関関係があることが確かめられています。つまりカルシウムの排泄量が増せば、同じようにマグネシウムの排泄量も増すということです。)

深刻なマグネシウム欠乏を引き起こす

ミネラルの不足は健康に大きなマイナスを及ぼしますが、なかでもマグネシウムの欠乏は深刻です。マグネシウムは、ミネラル間のバランスをとるためのポイントとなる重要なミネラルです。マグネシウムの欠乏は、細胞内外のカルシウム・カリウム・ナトリウムのバランスを崩し、それらが果たしている、さまざまな生理作用を狂わせることになります。この4つのミネラルの細胞内外での比率が守られることで、酸素や栄養素の運搬・神経や筋肉の働き・ホルモンの分泌などが正常に行われるのです。(※「細胞外ミネラル」であるカルシウム・ナトリウムは細胞外液に多く存在し、「細胞内ミネラル」のマグネシウム・カリウムは細胞内液に多く存在しています。)

またマグネシウムには、酵素の働きを助ける触媒作用があります。マグネシウムが不足していると、酵素は十分に働くことができません。マグネシウムはありとあらゆる酵素の働きに関与しているため、その欠乏は全身の代謝に決定的な影響を及ぼすことになります。

血液中のマグネシウムの欠乏状態が続くと、これもホメオスタシスの働きによって、マグネシウムが骨や細胞から溶け出すようになります。骨は多くのミネラルから構成されていますが、生命維持にかかわる重要なミネラルの不足に備えて、その貯蔵庫ともなっているのです。

成人の体には、カルシウムは約1kg存在しますが、マグネシウムは25gにすぎず、その差は40倍以上です。そのうちカルシウムの99%、マグネシウムの約60%は骨にあります。つまり骨には圧倒的にカルシウムが多く存在し、マグネシウムは、その60分の1程度しかないということです。

そうしたもともと少ないマグネシウムが溶け出すと、骨の中でのマグネシウム欠乏は深刻な状態となり、骨の形成がうまくいかなくなります。マグネシウムが不足していては、いくらカルシウムがあっても骨の代謝はスムーズに行われません。骨粗しょう症や骨のトラブルを防ぐために牛乳を飲むことで、かえって骨の弱化という、逆の結果を招くことになるのです。

「カルシウム・パラドックス」――実はマグネシウム不足による現象

現代人のマグネシウム不足は、きわめて深刻な事態を迎えています。食事から摂取するマグネシウムの絶対量は少ないうえに、ストレスや激しい運動・過労・過食など、その消耗要因があふれています。そうした状況において、多量の牛乳が摂取されているのですから、体内のマグネシウム欠乏はいっそう進むことになります。

血液中のマグネシウムが不足すると、骨や細胞から補われることを述べましたが、その際には、一緒にカルシウムも溶け出します。実際にはマグネシウム不足であっても、骨にはカルシウムが大量に含まれているので、カルシウムの方が多く溶け出すことになります。(※これを「カルシウム脱灰」と言います。骨を構成するミネラルには、カルシウム・マグネシウム・ナトリウム・リンなどがありますが、マグネシウムの不足が引き金となって、主要な骨ミネラルの溶出が起こるのです。)

こうして骨から溶け出したカルシウムの一部が、マグネシウムが抜け出た(マグネシウム不足の状態にある)細胞内部に入り込むことになります。カルシウムは大切な栄養素ですが、細胞外ミネラルであるため、細胞の中にそれが増えると、細胞の働きが損なわれることになります。細胞内に入ったカルシウムは“毒”ともいえる存在で、細胞全体・身体全体の機能低下を引き起こすことになります。(※カルシウムの細胞内液での濃度に比べ、細胞外液での濃度は千〜1万倍も高くなっています。これが細胞内外におけるカルシウムの正常な比率ですから、余分に細胞に入り込んだカルシウムは、すばやく追い出さなければなりません。)

そこで細胞内に増加したカルシウムを、細胞外に汲み出すことが必要になりますが、その働きを担っているのが、細胞膜にあるポンプなのです。しかし、このポンプはマグネシウムがないと働くことができないようになっています。マグネシウムが不足していると、ポンプの働きが低下し、カルシウムを汲み出すことができなくなります。

細胞に沈着したカルシウムは、細胞や組織を硬くし(石灰化)、動脈硬化を招き、心臓・血管系の病気を引き起こすことになります。また腎臓結石・胆石など、結石症の原因ともなります。さらに関節に溜まれば関節炎、免疫細胞に入り込めばアレルギーなどをひどくし、ガンや多くの現代病の誘因ともなります。

ここまで「マグネシウム」に注目して、その欠乏が引き起こす、さまざまな問題点を見てきました。この流れを「カルシウム」の観点から見ると、―「骨のカルシウムは減少する一方で、細胞の中には溶け出したカルシウムが溜まる」という奇妙な現象が生じることになります。不足と過剰という相反する状態が同時に存在することになるのです。これが「カルシウム・パラドックス」です。

カルシウムの観点だけから眺めると、矛盾して見えるこの現象も、マグネシウムの観点から見れば、すべて矛盾なく説明されることです。マグネシウムの欠乏こそが、「カルシウム・パラドックス」の根本的な原因なのです。

現代人は、マグネシウムを多く含む緑色野菜や海藻、豆類や種子類などを摂らなくなっています。また穀類からも、精製によってマグネシウムが減少しています。それに加えてマグネシウムは、ストレスや過労などによって著しく失われやすいミネラルです。

こうした深刻なマグネシウム欠乏の状態では、カルシウムは十分摂っているはずなのに、骨の中のカルシウムは減少し、細胞にはカルシウムが詰まるという異常な事態が発生することになってしまいます。これが一般的に言われる、「カルシウム・パラドックス」の実態なのです。

「骨粗しょう症」を引き起こす

老齢化社会の到来を迎え、骨粗しょう症の予防のために、「カルシウムを多く含む牛乳を飲みましょう」と盛んに言われています。しかし、ここまで述べてきたように、牛乳を飲んでも骨粗しょう症を防ぐことはできません。むしろ牛乳のような高カルシウム食品を摂ることで、骨からカルシウムが失われてしまっているのです。

疫学的なデータにも、それがはっきりと示されています。シンガポール人は、平均的アメリカ人の3分の1程度しかカルシウムを摂っていませんが、骨折率はアメリカ人の5分の1にすぎません。カルシウム摂取率の少ない国々の方が、どこも骨粗しょう症の発症率が低いのです。先に、牛乳を大量に摂ることで他の必須ミネラルや栄養素が体外に排泄されてしまうことを述べましたが、それによって骨の形成に必要なミネラルが失われ、強い骨がつくられなくなるのです。

食品中のカルシウムの吸収率が低い(※血液中のカルシウム濃度が、ゆっくりと上がる)ということは、人体にとって悪いことではありません。体内での利用のスピードに合わせて、ゆっくりと吸収されるのは、むしろよいことなのです。体の必要性に応じて徐々に吸収されるのは、自然なことなのです。(※牛乳には脂肪が多く含まれているために、カルシウムの吸収が妨げられるという説があります。摂取されたカルシウムは、小腸の表面においてカルシウムイオン化し、吸収されるのですが、そこに脂肪が入ってくると不溶性のカルシウム塩がつくられ、吸収が阻害されるというものです。牛乳のカルシウムの吸収が「よいか、悪いか」については明らかではありませんが、牛乳を摂ることには、多くの問題があるのです。)

いずれにしても、カルシウムの摂取を牛乳に頼る必要はありません。穀類や豆類・野菜・海藻・ゴマなどにも、カルシウムは十分含まれています。そうしたカルシウムこそが、体内で有効に活用されるのです。それらの食品には、カルシウムだけでなく、骨の形成に必要な他のミネラルやビタミンも豊富に含まれています。

菜食主義をしてきた人々に骨粗しょう症が少なく、牛乳を飲む人たちほど多いのは、このような理由によるのです。(※骨粗しょう症の原因は、単なるカルシウム不足だけではありません。食生活に、遺伝的要因・運動不足・性ホルモンの減少などが加わって起こるものですが、ミネラル摂取の欠陥が重大な要因となっています。)

「乳糖不耐症」の問題

牛乳が人間の健康にとってマイナスとなることは、「乳糖不耐症」という問題によっても明らかにされます。母乳や牛乳には乳糖(ラクトース)と呼ばれる糖分が含まれていますが、それは「乳糖分解酵素(ラクターゼ)」によって分解され吸収されます。

この酵素の活性は赤ちゃんが生まれた直後にピークを迎え、離乳期にはその活性が低下し大人と同じレベルになってしまいます。そして替わって、「デンプン分解酵素(アミラーゼ)」の働きが活発になってきます。つまり赤ちゃんは、乳糖分解酵素の減少とともに乳離れを迎え、少しずつ自分で食べ物を摂れる体へと変わっていくのです。この生理的変化は――「もうお乳よりも、ご飯から栄養を摂るのがふさわしい」ことを示しています。人間には、このような自然な形で“乳離れ”をしていくシステムが備わっているのです。

農耕を主として生活してきた日本人の大半は、欧米人に比べてラクターゼの活性は低く、大人では80%くらいの人に、この消化酵素が不足しています。これが「乳糖不耐症」です。乳糖不耐症の人が牛乳や乳製品を摂ると、乳糖は小腸で吸収されず、そのまま大腸にいくことになります。そこで大腸菌によって分解され、ガスと酸を生じ、腹痛や下痢、おなかが張ったり、ゴロゴロするなどの症状を引き起こします。そして下痢によって、腸内の栄養素は体外に排泄されてしまうことになります。せっかくカルシウムを摂るつもりで牛乳を飲んでも、カルシウムは乳糖と一緒に排泄されてしまうのです。また腸内細菌のバランスも、大きく崩されることになります。(※乳糖不耐症の程度は人によって異なり、下痢を起こさない人もいますが、栄養の利用が妨げられていることに変わりはありません。)

ある食べ物が「下痢を起こす」というのは、それが体に有害な食品であることを意味しています。体に悪いものであるために、身体に備わった防衛機能によって体外に排泄されることになるのです。この点からも、牛乳は健康にとって「マイナスの食品・悪い食品」であることが明らかです。

さらに乳糖の中のガラクトースが体内で分解できないため、それが目の水晶体にたまって、白内障の発症に関係していると言う研究者もいます。

アレルギー反応を引き起こす

さらに牛乳には、次のような問題があります。牛乳の中に含まれているタンパク質(カゼイン)が、アレルギー反応を引き起こすということです。先に肉の箇所でも触れましたが、普通、タンパク質は胃や腸の消化酵素の働きによって分解され、アミノ酸になって吸収されます。

ところが人によっては、アミノ酸になる前の「ペプチド」という形で腸壁のバリアーを抜け、吸収されることがあります。これは、腸が十分に発達していない幼児によく起こります。こうした未消化のタンパク質は、体内においてアレルゲンとなり、アレルギー反応を引き起こすことになります。これが牛乳アレルギーです。

カゼインは、「カード・凝乳」と言われる消化されにくい膜をつくり、消化器官に負担をかけます。現在の牛乳はすべて加熱殺菌を施され、“酵素”が破壊されていますから、それがいっそう体に悪影響を及ぼすことになります。母乳で育てられた子供は、牛乳で育てられた子供に比べ、アレルギーや他の病気になりにくいと言われています。それには、免疫の働きが母乳を通して赤ちゃんに伝わるということだけでなく、酵素の有無もかかわっているものと思われます。またカゼインは、粘液を増やし、喘息・気管支炎・副鼻腔炎などを悪化させる原因ともなっています。

現代栄養学の立場からは、牛乳とアレルギーの関係は明らかです。アレルギーの治療において、牛乳・乳製品を断つのは常識的なことと言えます。実際、牛乳をやめるだけで大きく改善されるケースがよくあります。

牛乳には、母乳の3倍ものタンパク質、4倍ものカルシウム、6倍ものリンが含まれています。それは胃袋が4つもあり、1〜2年で成長する牛にとってふさわしい成分であって、人間には必要ありません。余計な成分が入れば、かえって消化不良を起こし、消化器官や肝臓・腎臓に負担をかけ、体を弱らせることになってしまいます。

また牛乳には、抗生物質やホルモン剤などの残留汚染物質の問題もあります。牛乳・乳製品の摂り過ぎが、大腸ガン・乳ガン・子宮ガンの一因になっているとも言われています。

脂肪・油の摂り過ぎによる弊害と、油に関する最新理論

1.動物性脂肪と植物性油

動物性脂肪の害

牛や豚など陸上動物の脂肪(fat)は、ラードやヘット(牛脂)のように常温では固体です。スーパーに並ぶ牛肉の脂肪が白く固まっているところから、それがよく分かります。またミルクからつくられるバターも固体状です。それに対し、野菜や魚に含まれる油(oil)は液体です。

現代栄養学では、まず「動物性脂肪の害」が指摘されました。常温では固体であるということは、それが溶け出す温度(融点)が高いということです。つまり動物性脂肪は、低い温度では固まりやすい性質をもっているのです。むろん体温が約39℃の陸上動物の体内では支障はないのですが、体温がやや低い人間の体に入ると問題が起きることになります。(※人間の体温は36〜37℃です。)

動物性脂肪は、私たちの血液の粘度を高め、血流を悪化させます。人間の体温が低いために、固体化の方向に向かうからです。動物性脂肪を摂ると、血液の粘度が増し、毛細血管の先端部分に赤血球が行き渡りにくくなります。事実、肉をたくさん食べた後、血液を電子顕微鏡で見ると、赤血球がベタベタとくっつき合っているのが確認されます。血流の悪化が直接観察されるのです。

血流が悪くなるということは、細胞への酸素の供給量が減るということです。実験によれば、動物性脂肪を摂って数時間後には、細胞全体に対する酸素の供給量が20〜30%も減少することがあると言われます。酸素の供給量が減れば、細胞での燃焼効率は低下し、エネルギーの供給量も減ることになります。酸素が運ばれないということは、栄養素も運ばれないということです。

肉を摂ると元気になると思っている人がいますが、本当はエネルギー不足の状態になり、グッタリするということです。肉食はエネルギーを高め、パワフルにするのではなく、逆に活力を奪い去ってしまうのです。肉食の弊害についてはすでに述べましたが、「血流を悪化させる」という問題点もあるのです。

動物性脂肪の過剰摂取は、血液をネバネバにし、中性脂肪やコレステロール(※よく言われる悪玉コレステロール・LDL)を増やします。そして細胞や組織を硬化させ、脳卒中や心臓病などの循環器系疾患を引き起こします。また肥満を招き、糖尿病をはじめ、さまざまな現代病・成人病を生み出します。こうしたことは現在では、一般の人々にもかなり知られるようになっています。

欧米では早くから「動物性脂肪の害」が認識され、肉食を減らす人々が増えてきました。また肉を食べるときは、できるかぎり脂肪をそぎ落とし、赤身の部分だけを食べるようにしたり、牛肉や豚肉ではなく、脂肪の少ない七面鳥を使うなど、意識が変わってきました。

一方、日本ではどうかというと、肉の摂取量はいまだに増加の一途をたどっています。しかも“霜降肉”などという、赤身の中にわざわざ脂肪を散らした肉をありがたがっています。そもそも健康な牛なら、赤身と白身がはっきり分かれるはずです。霜降肉は明らかに病的な肉なのですが、それが異常な高値で売買されています。そして日本人は一様に、口の中でとろけるようにおいしいと、その肉を賛美しています。まさに日本だけの“狂った食習慣”の実態があるのです。

植物性油の害

アメリカでは、動物性脂肪の摂り過ぎが動脈硬化や心臓病を引き起こすことが知られるようになると、人々は植物油へと向かうようになりました。植物油がコレステロールを下げるといった実験結果が発表されると、その傾向は一気に進んだのです。なかには植物油を薬として、スプーンで飲むような人まで現れました。「植物油は健康によい」というある種の神話が、先進諸国の間に広まりました。

そうした情報は日本にも伝わり、植物油ブームが起こり、油料理がひんぱんに食卓にのぼるようになりました。バターに代わってマーガリンが好まれるようになり、植物油が贈答品として多く用いられるようになりました。植物油は体によい、植物油は成人病を防ぐと、誰もが信じていました。

日本に植物油の流行が定着し始めた頃(1981年)、アメリカでは、非常にショッキングな研究結果が発表されました。NCI(アメリカ国立ガン研究所)が20年にわたる研究の末、植物油はコレステロール値や心臓病発生の確率を下げることはなく、それどころか「ガンの発生率を高める」ことを公表したのです。

今まで最高の薬であると思っていたのに、それが心臓病の予防にならないだけでなく、ガンを引き起こす原因であることを知って、アメリカは大混乱に陥りました。その後、このNCIの発表内容は、他のさまざまな研究機関によって確かめられました。そしてFDA(アメリカの食品医薬局)は、植物油が心臓病の予防や治療に効果があると主張するのは違法と見なす、との警告を発するに至るのです。こうした一連の状況は、日本の製油会社には当然知られていたはずですが、日本国内では相変わらず、植物油は健康によいと宣伝され続けてきました。

植物油を摂取すると、一見コレステロール値が下がったように見えることがあります。しかし、それは植物油がコレステロールを肝臓や筋肉に付着させるため、血液中の値がいっとき減ったように見えるだけなのです。コレステロールの代謝の問題が、根本的に解決されたわけではありません。

現代栄養学では、植物油は酸化しやすく、細胞・組織を変性させ、その過剰摂取がガンを発生させることを明らかにしています。また植物油は血栓をつくり、脳卒中や心臓病を引き起こすことも知られています。さらにはアレルギーや炎症性疾患をひどくし、免疫力を抑制してあらゆる病気にかかりやすくします。植物油も動物性脂肪と同様に、健康を害することが明確にされているのです。

こうした「植物性油の害」については、いまだに日本国民の中に十分浸透しているとは言えません。今もお歳暮やお中元の季節になれば、健康によい食品との触れ込みで、植物油がPRされ店頭に並んでいます。

※最近では、「体に脂肪がつきにくい!」を謳い文句に、次々と健康によいという植物油が売り出されています。コレステロールの吸収を抑え、これまでの植物油に比べて体に脂肪がつきにくいので、安心して油料理・揚げ物料理に使えると言うのです。

現代病が蔓延する背景に「油の過剰摂取」がありますが、こうした油を使えば、本当に健康になれるのでしょうか? 現代病・成人病から守られるのでしょうか?

高脂血症(高コレステロール)は、油脂の摂取を減らし、健全な食事に変えれば、自然に治るものなのです。そのうえ他の病気にもかからなくなり、健康になれるのです。

健康によいとPRされる油の問題点を1つ1つ挙げるまでもなく、一面の利点だけを取り上げ、油の摂取を勧めることは間違っています。

2.脂質についての、新しい分類――分子構造の違いによる分類

脂肪・油の新しい分類法

脂肪・油に対する科学的な研究が進むにつれ、新たな事実が次々と明らかにされるようになりました。これまでは脂質を、脂肪(動物)と油(植物・魚)に分類していましたが、それとは別に、分子構造の違いによる分類が行われるようになりました。

脂質は、元素である炭素と水素と酸素の組み合わせによって成立していますが、その組み合わせ・分子構造の違いが大きな性質の違いを生み出します。新しい分類法では、脂質は分子構造の違いから、大きく「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」の2つに分類されます。そして不飽和脂肪酸は、「一価不飽和脂肪酸」と「多価不飽和脂肪酸」に分類されます。さらに多価不飽和脂肪酸は、「オメガ6不飽和脂肪酸」と「オメガ3不飽和脂肪酸」に分類されます。

脂肪酸の分類

食品中の脂質は、こうした脂肪酸のいくつかが組み合わさってできています。それぞれの脂肪酸の含有比率はさまざまですが、大半の食品にはすべての脂肪酸が含まれています。先に述べた動物の脂肪には「飽和脂肪酸」が多く含まれ、植物や魚の油には「不飽和脂肪酸」が多く含まれています。

脂肪酸の二重結合とは?

脂肪酸は、炭素(C)・水素(H)・酸素(O)の3つの元素からなる化合物です。炭素には、他の元素と結び付くための4つの手があります。水素にはその手が1つ、酸素には2つあります。脂肪酸は炭素同士が手をつないで鎖をつくり、それに水素と酸素がつながった構造をしていますが、その炭素と水素の結合の仕方で種類が分けられます。酸素については、どの脂肪酸でも同じような結合になっています。

次の図のように、炭素同士が1つの手で結合しているのを「一重結合」と言い、2つの手で結合しているのを「二重結合」と言います。この二重結合があるかないか、あるとしたら1つか複数か、また複数あるならどの位置にあるか、ということによって脂肪酸の種類が決められます。

脂肪酸中の炭素の二重結合と一重結合

脂肪酸の分子構造と性質の違い

それぞれの脂肪酸の、分子構造と性質の違いを見ていきます。

各脂肪酸の分子構造
(1)飽和脂肪酸(ex.ステアリン酸)

図1には、二重結合はなく、炭素の手がすべて水素と結合しています。これが「飽和脂肪酸」です。飽和脂肪酸は、肉・乳製品・卵などの動物性食品に多く含まれています。私たちが肥満して「お腹につく脂肪・中性脂肪」の主成分が、この脂肪酸です。

飽和脂肪酸は、エネルギーとして消費されないかぎり、どんどん蓄積されていきますから、摂取は控えめにするべきです。摂取エネルギーが消費エネルギーを超過すれば肥満を招き、現代病・成人病の引き金となります。(※他の脂肪酸や糖質・タンパク質を含めてのエネルギー総量が問題です。)

(2)一価不飽和脂肪酸(ex.オレイン酸)

図2には、二重結合が1つだけあります。これが「一価不飽和脂肪酸」です。そして二重結合の位置がメチル基(左側)から9番目の炭素にあるので、「オメガ9不飽和脂肪酸」と言います。この脂肪酸は、動物性食品やオリーブ油に多く含まれています。

一価不飽和脂肪酸は、体内で飽和脂肪酸からつくられます。

(3)多価不飽和脂肪酸(ex.リノール酸)

図3には、二重結合が2つあります。これが「多価不飽和脂肪酸」の「リノール酸」です。そして二重結合の位置がメチル基から6番目の炭素にあるので、「オメガ6不飽和脂肪酸」と言います。この脂肪酸は、穀類や種子、コーン油・大豆油・紅花油などの食用油に多く含まれています。

リノール酸は、細胞の成長・維持に不可欠で、体内では合成されない「必須脂肪酸」です。局所ホルモンの材料として、さまざまな生理機能のコントロールのために使われます。

(4)多価不飽和脂肪酸(ex.アルファ・リノレン酸)

図4には、二重結合が3つあります。これが「多価不飽和脂肪酸」の「アルファ・リノレン酸」です。そして二重結合の位置がメチル基から3番目の炭素にあるので、「オメガ3不飽和脂肪酸」と言います。この脂肪酸は、野菜(特に冬野菜)や海藻・豆・ナッツ類などに含まれています。亜麻仁油・シソ油・エゴマ油には多く含まれています。

アルファ・リノレン酸は、リノール酸と同じく「必須脂肪酸」で、細胞の成長・維持にかかわり、局所ホルモンの材料として重要な働きをしています。アルファ・リノレン酸は、細胞や組織を柔軟にし、現代病・成人病を防いでくれる大切な脂肪酸です。

またアルファ・リノレン酸からつくられ、魚の油に多く含まれているのが、オメガ3系列の「EPA」「DHA」です。EPA(エイコサペンタエン酸)は、肉の脂肪とは逆に、血液の粘度を下げてサラサラにし、血流をよくします。近年、EPAの動脈硬化や心臓病を防ぐ働きが注目されています。DHAは脳をはじめとする神経組織に多く含まれ、脳や神経組織の成長・維持に重要な役割を果たしています。DHAが不足すると、学習や記憶能力に障害が起きるようになります。EPA・DHAを多く含んでいるのは、イワシ・サバ・サンマ・サケ・ブリなどの大衆魚(青魚)です。

各脂肪酸の酸化スピードの違い

図で分かるように「飽和脂肪酸」は、すべての炭素が水素で飽和されており、最も酸化しにくい脂肪酸と言えます。分子構造が飽和状態にあるので、他の水素や酸素などの原子がくっつきにくいのです。飽和脂肪酸についで酸化しにくいのが、「一価不飽和脂肪酸」です。二重結合が1つだけで、飽和度がかなり高いからです。

それとは反対に「多価不飽和脂肪酸」は、酸化が速く進みます。二重結合が複数あって、他の原子と化合しやすいためです。なかでも「オメガ3」は、不飽和度が最も高く酸化しやすい脂肪酸です。しかし酸化が速いからといって、「オメガ3」が悪い脂肪酸というわけではありません。酸化が速いというのは、それだけ活性が高く反応性に優れているということです。

人間の体の中で“脳”は最も重要な器官の1つですが、その構成成分の60%は脂肪が占めています。そして、このうち一番量が多いのが「オメガ3」です。無数の神経細胞から成り立っている脳は、神経刺激を伝達したり、外からの刺激を受け取ったり、いつも活発な活動をしていますが、その動きに鋭敏に反応し、素早く対応しているのが「オメガ3」なのです。脳では「オメガ3」が最も大切な脂肪酸なのです。(※空気中と体内では脂肪酸の酸化のスピードは異なり、体内ではオメガ6よりもオメガ3の方が酸化されにくいことが分かっています。脂肪酸の酸化による害については、後で述べています。)

3.各脂肪酸の摂取状況(飽和脂肪酸・オメガ9・オメガ6・オメガ3)

過剰摂取の「飽和脂肪酸」

食生活の欧米化によって、「飽和脂肪酸」の摂取量は大幅に増加しています。飽和脂肪酸を多く含むラード(豚脂)は、これまで家庭ではあまり使われてきませんでしたが、安価で酸化しにくい(腐りにくい)ために、業務用としてよく利用されてきました。植物の油にも、飽和脂肪酸を多く含んでいるものがあります。南方地域のヤシの実から採れるパーム油・ココナッツ油です。(※動物の脂肪は、飽和脂肪酸・一価不飽和脂肪酸がかなりの割合を占めていますが、リノール酸やアルファ・リノレン酸も少し含まれています。その脂肪酸バランスも、家畜の生産システムの変化によって崩れてきています。牧草で飼育された牛には「アルファ・リノレン酸」が多いのですが、穀物飼料で育てられた牛には「リノール酸」が増えているということです。)

オリーブ油に多く含まれる「オメガ9」

一価不飽和脂肪酸の「オメガ9」は、オリーブ油に大量に含まれています。全体の70〜80%がオメガ9(オレイン酸)で占められています。このためオリーブ油は植物油の中で、特に酸化しにくい油ということになります。またオリーブ油には、血管系統のトラブルを予防する働きがあることが確かめられています。こうした点から調理用としては、オリーブ油が最も安全性の高いものとして勧められます。他にオメガ9を多く含む油として、キャノーラ油(新品種の菜種油)があります。

極端に過剰摂取の「オメガ6」

多価不飽和脂肪酸のうち「オメガ6」は、サラダ油・テンプラ油などに多く含まれ、最も一般的に使われています。また、そうした精製油をベースにしたマヨネーズ・ドレッシングなどは、毎日の食卓に欠かせないものとなっています。

オメガ6は「リノール酸」と呼ばれ、現代人が極端な過剰摂取に陥っている油です。(※先に「植物性油の害」について述べましたが、それはこの「リノール酸」のことです。)

深刻な欠乏状況にある「オメガ3」

すべての脂肪酸中、最も不飽和度が高い「オメガ3」は、ブロッコリー・芽キャベツ・小松菜などの冬野菜や海藻などに含まれています。また最近知られるようになった亜麻仁油・シソ油・エゴマ油には、オメガ3が大量に含まれています。

植物に含まれるオメガ3を「アルファ・リノレン酸」と言います。現代人の大半は、「オメガ3」を大きく欠乏させています。現代栄養学では、食事の中に“亜麻仁油”を取り入れることを勧めています。(※海の野菜と言われる海藻には、生であれば少し「オメガ3」が含まれていますが、残念ながら乾燥後には失われてしまいます。しかし海藻は、ミネラル・繊維源として欠かせない食品です。)

食用植物油中の脂肪酸組成

次に、一般に最も多く使われている食用植物油の脂肪酸組成率を挙げておきます。

食用植物油中の脂肪酸組成

4.体内での各脂肪酸の変換

体内に吸収された脂肪酸は、酵素を触媒として次のように変換していきます。

体内での脂肪酸の変換には――「飽和脂肪酸系列」「リノール酸系列」「アルファ・リノレン酸系列」の3つがあります。そして重要なことは、これら3つの系列の脂肪酸は「体内で相互変換しない」ということです。つまり、どれだけ大量の飽和脂肪酸を摂っても、ガンマ・リノレン酸に変わることはありません。またリノール酸が、EPAやDHAに変わることもありません。

体内での各脂肪酸の変換

このように「体の脂肪酸バランス」は、食べ物として摂った脂肪酸によって決まってしまいます。すべての細胞の脂肪酸の状態が、摂取した脂肪酸によってストレートに決定してしまうのです。

5.最新の油理論――「オメガ3」と「オメガ6」のバランス理論

新しい油理論の登場

油に関する研究が進むにつれ、より詳しい油の働きが分かってくるようになりました。必須脂肪酸である「アルファ・リノレン酸(オメガ3)」と「リノール酸(オメガ6)」は、単なるカロリー源ではなく、細胞膜の構成成分になったり、体のほとんどすべての機能を調節するホルモン様物質(局所ホルモン)の原料となる不可欠な脂肪酸です。

現代栄養学で問題としているのは、「オメガ3」と「オメガ6」の摂取比率についてです。この2種類の脂肪酸の「摂取比率・体内比率」が崩れると、現代人の多くが抱えているような病気が引き起こされるということです。必須脂肪酸のアンバランスは、ガン・心臓病・脳卒中・糖尿病・関節炎・不妊や生理のトラブル・アレルギー・喘息・精神疾患など、さまざまな病気にかかわっています。最新の栄養学によって、「オメガ3」と「オメガ6」の摂取比率が、私たちの健康を大きく左右するということが明らかにされてきました。

現代栄養学では、「オメガ3」と「オメガ6」の理想的な摂取比率を、およそ1:1〜1:3くらいであると考えています。これはアメリカで言えば、百年ほど前の食事の内容です。それが現代では、極端に崩れてしまっています。オメガ3は、必要量の20%程度しか摂られていません。

その状況は日本においても同様です。我が国では1960年頃までは、かなりよい比率を保っていたと思われますが、その後急速に悪化してしまいました。今ではオメガ3とオメガ6の摂取比率は、1:10〜1:50というような、ひどいアンバランス状態にあります。オメガ3の著しい不足に対して、オメガ6は極端な過剰摂取に陥っています。

オメガ3とオメガ6のアンバランスを引き起こす原因

では、どうしてこのような異常な事態を引き起こすようになったのでしょうか。「オメガ3」も「オメガ6」も、植物性食品や植物油の中に多く含まれています。そして、その植物油がアメリカや日本において大量に摂取されるようになったのは、1960年以降のことです。食事が欧米型に向かい、油料理・揚げ物料理が多くなった時期ということです。

食事の欧米化の中で摂取量が増え続けてきた油と言えば、コーン油・大豆油・サフラワー油(紅花油)などです。そして、それらをベースにしたマヨネーズやドレッシング・マーガリンなどです。実は、こうしたどこの家庭でも毎日のように使う油には、「オメガ6(リノール酸)」が豊富に含まれているのです。(※食用植物油の脂肪酸組成を参照してください。一般に使われる油の中には、45〜75%もの「オメガ6」が含まれています。)

一方、「オメガ3(アルファ・リノレン酸)」を多く含む油としては、シソ油・エゴマ油があり、欧米では亜麻仁油があります。しかし現代人のほとんどは、これらの油を料理に使うことはありませんでした。(※日本ではあまりなじみのない「亜麻仁油」ですが、食用に用いられた歴史は古く、ギリシャ・ローマ時代からだと言います。北欧諸国では第2次世界大戦の前まで、どこの家庭でも使われていました。)

また食品によっては、オメガ3を比較的多く含むものもあります。野菜(特に緑の濃い冬野菜)・海藻・魚(背の青い大衆魚)などです。そしてこれらの食品は、昔の日本人は日常的によく食べていました。そのためかつては、かなり「オメガ3」を摂取することができていたのです。油料理をひんぱんに摂るような現代とは違って、オメガ3とオメガ6のバランスは自然に良好だったのです。

現代人は、オメガ3の摂取源となる野菜・海藻・魚などをあまり摂らなくなっているのに対し、オメガ6の摂取量は激増しています。食事が欧米型に傾けば傾くほど、「オメガ6」だけが多くなってしまうのです。こうして必然的に、「オメガ3」と「オメガ6」のバランスは大きく崩れてしまいました。

現代人の深刻な「オメガ3脂肪酸欠乏」

食生活の欧米化が深刻な「オメガ3欠乏」を招いていますが、その一因としては、次のようなことも挙げられます。一般に現代人は、寒い地域の食物より、温かい地域の食物を好んで食べるようになっています。温室栽培や輸入によって、冬でも、トマトやキュウリ・ピーマンなどの夏野菜が食べられるようになりました。実は、「オメガ6」が暖かい地域の農作物に多く含まれているのに対して、「オメガ3」は寒い地域の農作物に多いのです。ホウレン草・シュンギク・小松菜・白菜・ブロッコリーなどの冬野菜は、よいオメガ3の摂取源となっています。

また精白技術の進歩が、オメガ3不足に拍車をかけています。穀類の胚芽にはオメガ3とオメガ6がともに含まれているのですが、精白することで「オメガ3」が失われてしまいます。

さらにオメガ3不足の大きな原因として現代式の製油方法が挙げられます。食用油といえば、かつては手絞り的な圧搾法「コールド・プレス(低温圧搾法)」で製造されていました。しかし現代では、そうした方法でつくられているのは亜麻仁油・オリーブ油などの一部の油のみです。それ以外のほとんどの食用油は、化学的溶剤で原料の中の脂肪を溶かし出し、その後に溶剤を除去するといった方法でつくられています。そして最後の脱臭工程では、230℃以上もの高温処理がなされています。取り出された油には、部分的に水素が添加されます。“水素添加”とは、不飽和脂肪酸の二重結合部分に、高温高圧下で強引に水素をつなげて油を飽和状態に変えてしまうことです。こうすると油は酸化しにくくなって日もちがよくなり、商品寿命が延びるからです。

こうした製油過程で真っ先に失われてしまうのが、水素と最も反応しやすい「オメガ3」なのです。原料となる大豆やゴマなどの種子類には、わずかですがオメガ3が含まれていますが、今述べたような製油方法では、ほとんどなくなってしまいます。そのうえ「トランス型脂肪酸」という有害な脂肪酸が生成されることになります。(※「溶剤使用」「高温処理」「水素添加」という現代式の製油方法の中では、オメガ3だけでなく、ビタミンなどの栄養素も失われてしまいます。トランス型脂肪酸の害については、後で述べています。)

このような原因が重なって、現代人の「オメガ3不足」は、きわめて深刻な状態になっています。

6.局所ホルモン(プロスタグランジン)の働き

プロスタグランジンとは?

必須脂肪酸であるオメガ3とオメガ6は、全身のさまざまな生理機能を調節する局所ホルモンの原料になります。この脂肪酸からつくられる局所ホルモンはエイコサノイドと言われ、「プロスタグランジン」「ロイコトリエン」「トロンボキサン」などの種類があります。そうした調節物質を、ここではまとめて「プロスタグランジン」と呼ぶことにします。

従来のホルモンが特定の内分泌腺でつくられ、全身を支配しているのに対して、プロスタグランジンは個々の細胞でつくられ、細胞レベルでの調節を行っています。(※そのため局所ホルモンと呼ばれています。)しかし、その働きはきわめて重要で、身体全体の機能に関係していると言ってもよいほどです。

プロスタグランジンの生成過程と種類

プロスタグランジンは、次のようなプロセスで生成されます。

プロスタグランジンの生成過程と種類

図で示したように、必須脂肪酸であるオメガ3とオメガ6が体内で化学変化を繰り返し、各種の「プロスタグランジン」が生成されていきます。(※食物として体内に吸収されたオメガ3・オメガ6の大部分は、他の脂肪酸と同じく燃焼に回されますが、細胞膜からピックアップされた一部がプロスタグランジンに変換されます。)

プロスタグランジンは原料である脂肪酸の違いによって、3つのグループに分けられます。そして、そのグループ内でさらに複雑な変化をして数十種類のプロスタグランジンがつくられます。

プロスタグランジンによる生理調節作用

ここで大切なことは、プロスタグランジンは大きく3つのグループに分かれ、グループごとに異なる働きをしているということです。なかでも「オメガ3系のEPA」からつくられるプロスタグランジンと、「オメガ6系のアラキドン酸」からつくられるプロスタグランジンは、相反する働きをして細胞機能のバランスをとっています。

もう少し詳しく見てみると、オメガ6系からは2つのグループのプロスタグランジンがつくられ、互いに相反する働きをしています。現在、その材料となる「オメガ6」は大量に摂取されています。そのうえ大半の人々は、肉・乳製品・卵などの動物性食品を多く摂っていますが、そうした食品には直接「アラキドン酸」が含まれています。そのためアラキドン酸由来のプロスタグランジンが大量につくられることになります。つまり1グループ目に比べ、2グループ目のプロスタグランジンだけが過剰に生成され、細胞機能のバランスを欠くことになります。

2グループ目のプロスタグランジンと、オメガ3系からつくられる3グループ目のプロスタグランジンも、相反する働きをしています。しかもこの2つは、オメガ6系のグループ同士より強力な競合関係にあり、一方が大量につくられると、他方はその分だけつくられなくなります。ということは、現在のような「オメガ3欠乏」の状態では、圧倒的に「アラキドン酸」由来のプロスタグランジンが生成されることになるのです。「オメガ6」と「動物性食品」の過剰摂取から2グループ目のプロスタグランジンだけが異常に多く生成され、「オメガ3」の欠乏から3グループ目のプロスタグランジンが極端に不足してしまっているということです。そのために細胞機能のバランスが大きく崩れ、さまざまな障害・病気が引き起こされているのです。

例えば“炎症”という作用の場合、それを抑制するプロスタグランジンが「オメガ3」からつくられるのに対して、アラキドン酸由来の「オメガ6」からは炎症を激化させるプロスタグランジンがつくられます。このように―「血栓を減らしたり、増やしたり」「発ガンを抑制したり、促進したり」「子宮を弛緩させたり、収縮させたり」「血管を拡げたり、狭めたり」して、互いに相反する働きかけをしています。車にたとえれば、アクセルとブレーキのようなものです。1つの生理作用に対して、それぞれ反対の働きかけをしながらコントロールしているのです。多種類のプロスタグランジンが互いに関係をもちながら、身体全体の機能を維持しているのです。

「オメガ3」と「オメガ6」の脂肪酸は、単なるカロリー源や組織の構成成分となるだけでなく、細胞機能を調節するプロスタグランジンの材料となっています。プロスタグランジンは、神経系・ホルモン系に続く「第3の調節系」と言われ、油の中でも最新の研究分野となっています。1982年には、欧州の3人の研究者がノーベル医学生理学賞を受けています。

エスキモーに“心臓病”が少ない理由

必須脂肪酸の摂取比率が崩れたことによって「プロスタグランジン」のアンバランスが生じ、さまざまな現代病が引き起こされていますが、それを証明する有名な疫学研究を挙げておきます。1960年代にデンマークの研究者によって始められた、エスキモー(イヌイット)とデンマーク人の比較研究です。

西グリーンランドに住むエスキモーは、伝統的にカロリーの70%を脂肪から摂るという世界一脂肪の多い食事をしていました。現代のアメリカ人の食事は、カロリーの40%を脂肪から摂り、その異常さが指摘されていますが、エスキモーは、それをはるかに上回る大量の脂肪を摂っていました。しかも野菜は、ほんのわずかしか摂っていませんでした。栄養学の常識から考えれば、これでは心臓病や脳卒中などの循環器系疾患が増えて当然です。

ところが実際には、心臓病になる人が極端に少ないのです。これが研究者の注目を集めることになり、調査・研究が開始されました。エスキモーの食事の内容や生活習慣・遺伝的な要因などが、長期にわたって多くの研究者によって調査されました。その結果、エスキモーの健康の秘密が、彼らの食事にあったことが明らかにされたのです。調査によれば、当時デンマークの都会に住む人たちの脂肪の摂取量は、エスキモーとほぼ同じくらいでした。それなのにデンマークでは、エスキモーの10倍もの国民が心臓病で死んでいます。こうした事態を招いている原因は何かと言えば、摂取している脂肪の違いにありました。エスキモーの食事には圧倒的に「オメガ3系」の脂肪酸が多く含まれていたのです。オメガ6系の脂肪酸と飽和脂肪酸はデンマーク人の約半分でした。摂っている脂肪の総量はほとんど同じでしたが、脂肪酸の違いが、心臓病による死亡率の決定的な違いとなったのです。

なぜエスキモーの摂っている脂肪には「オメガ3」が多かったかというと、彼らの食べ物のほとんどが、生の魚やアザラシ・セイウチなどの海獣だったからです。こうした海に住む動物には、EPAやDHAというオメガ3系の脂肪酸がたっぷり含まれています。「EPA」からつくられるプロスタグランジンは血液の粘度を下げ、サラサラと流れやすくする性質をもっているのです。(※オメガ3を大量に摂っていたエスキモーの血液は固まりにくく、出血するとなかなか血が止まらないことが問題でした。)

それに対してデンマーク人の摂取している脂肪の多くは、現代の欧米人と同じ飽和脂肪酸やオメガ6脂肪酸だったのです。血液中の脂質に含まれる「アラキドン酸」(※アラキドン酸からつくられるプロスタグランジンは血栓を増やす)の割合は、デンマーク人の方がエスキモーより10倍も高く、逆にEPAは、エスキモーの方が36倍も高いことが確かめられています。「オメガ3」と「オメガ6」の摂取比率の狂いが、デンマーク人の間に心臓・血管系の病気を引き起こしていたのです。

もっとも、そうした心臓病とは無縁だったエスキモーも、定住政策によって欧米型の食事を取り入れるようになると、わずかのうちに欧米人と同じ病気で苦しむようになりました。伝統的な生活を捨て、食事内容を一変させたことで、心臓病や糖尿病が多発するようになったのです。


Copyright(C)2004-2016 ホリスティック健康学・栄養学研究所. All Rights Reserved.