企画名 :『信義のカタチ』 台本著者:坂之上・聖 登場人数:5人 台詞数 :326 あらすじ: それは土蜘蛛戦争が終結してより半年後、土蜘蛛たちが半年の修学を経て銀誓館の仲間に加わったときのお話。 鋏角衆である平蔵は自分に負い目を感じつつも、琳愛奈の優しさに触れて、次第に人間らしい考え方を持つようになっていた。 そしていつものようにゴースト退治をこなし、解散した夜。平蔵の元に一通の矢文が投げ込まれる。 その内容は「琳愛奈を誘拐した」というものだった。 誘拐の犯人は空泉という土蜘蛛、奴は銀誓館に降伏した土蜘蛛たちを良しとせず、銀誓館と土蜘蛛への復讐を企てていたのだ。 平蔵は琳愛奈を助けるために空泉の待つ場所へと急ぐ。 そして激戦の末、仲間の力を借りて辛うじて空泉を倒す。 しかし空泉にも確かに信念があった。奴はただ一心に土蜘蛛のことだけを考えいたのだ。 違っていたのはどの道を選んだのかということだけ。 銀誓館の仲間と生きることに間違いがあるとは思わない。しかし奴の考えもまた一つの士道であった。 仲間とは何か、忠義とは何か、再度考えさせる平蔵。 それを問うと、琳愛奈は「世界中の生き物はみんな仲間です」と笑った。 平蔵は己の小ささを知るのだった。 【募集キャラ】 <台詞数:40> 高宮・瑛季(えいき):(フリッカークラブ)ちょっと狂人染みている程の戦闘馬鹿。3度の飯より戦闘が好き。基本的にノリがよいけど一言多い、そして基本的に明音に怒られている。 <台詞数:62> 宮坂・琳愛奈(みやさか・りあな):(白燐蟲使い)泣き虫で常にオドオドしているが、芯はしっかりした優しい子。天然属性あり。 <台詞数:55> 篠崎・明音(しのざき・あかね):(ファイアフォックス→土蜘蛛の巫女)気風が良く面倒見も良い姉御、皆の所属する結社の団長。笑うと怖い人。突っ込み属性。時々ツンデレ。 <台詞数:104> 細川・平蔵(ホソカワ・ヘイゾウ):(鋏角衆)カタコト言葉で無表情だが、情に厚い侍みたいな人。一番常識人。むやみやたらとデカイ。自分を無価値な出来損ないだと思っていたが、琳愛奈と出会ったことにより価値観が変わり始める。(※片言言葉は聞き取りにくくならない程度に片言、普通に喋ってるように聞こえてもOKなぐらいで) <台詞数:65> 橘・一心斎・空泉(たちばないっしんさいくうせん):土蜘蛛の生き残り。真の忠義のため土蜘蛛は銀誓館を討つべしと思っており。降伏し銀誓館に降った同胞を裏切り者と蔑んでいる。 ―――――――――――― 本文 ―――――――――――― (時は夕刻。能力者たちは今日も依頼を終えて銀誓館の結社に帰るところだった) 001 瑛季「とどめだっ!! ショッキーィングッ!!」(ギターかき鳴らしながら叫ぶ感じ。※ショッキングビート) SE:(ギターをかき鳴らす音) SE:(敵が倒れる音) 002 瑛季「ふぁぁ〜〜〜っ、も〜う終っちまった。ったく、もっと強いゴーストは居ねぇのかよ。これじゃ帰ってもメシがまずいっての」 003 明音「こんの…… バカタレーーッ!!」 SE:ボカッ! 004 瑛季「いっっ、てぇーーっ!! 何すんだよ明音!」 005 明音「あんた敵に突っ込みすぎ! 無傷で勝てる戦いだったのになんで重傷一歩手前になってんのよ!」 006 瑛季「だってつまんねぇんだもんよぉ、スリルがないとさぁ。ククク、戦いってのはさ、敵と紙一重のところで奪い合うのがいいんだよ、生と死をさ……っ!」 007 明音「この戦闘バカ! アンタのせいで琳愛奈はいつもいらない苦労をしてるのよ。分かってんの?」 008 瑛季「ウッ。そ、そりゃあ悪ぃと思ってっけどさ」 009 明音「だったら少しは大人しく……」(しなさい。と続きますがそこは編集で被せてください) 010 琳愛奈「あ、あの。私はその…… 大丈夫ですから。回復とサポートが仕事なんだし、あまり気にしなくても……」 011 明音「はいそこ遠慮禁止。そんな疲れた顔して言っても説得力ないってのよ。琳愛奈は身体弱いんだから、もうちょっと自分を大事にしなさい」 012 琳愛奈「うぅ、そんなに疲れて見えます?」 013 平蔵「ミエル。強化目的デ四度、回復目的デ六度モ白燐奏甲ヲ使用シテイル。疲レル以前ニ顔色ガ悪イゾ」 014 明音「そーゆーこと、無理はダメよ琳愛奈。今日はもうあがっていいわ。ここからの方が家、近いでしょ? 作戦後のミーティングは瑛季の反省会だけだから早く帰りなさい」 015 瑛季「ゲッ、それマジ?」 016 明音「マジ」 017 琳愛奈「すみません、それじゃあお先に失礼します」 018 瑛季「俺もお先に失礼します」 019 明音「あんたはノコレ」 020 琳愛奈「あ、そうだ、平蔵さん」 021 平蔵「ナンダ?」 022 琳愛奈「さっきの戦いで、その、私が不注意で後ろから襲われたとき。……助けてくれてありがとう。それと! ゴメンなさい! そのせいで背中に傷を……」 023 平蔵「後衛ノ護衛ガ俺ノ役目ダ、謝ル必要ハナイ、傷モ琳愛奈ガ癒シテクレタ。ムシロ無価値ナル鋏角衆の自分ガ役立テテ嬉シイクライダ」 024 琳愛奈「それじゃあ、ありがとうだけ言わせて下さい。……でも、無価値なんて言っちゃダメですよ」 025 平蔵「……ソウダッタナ。我々ハモウ『出来損ない』デハナイ…… ノカ」 026 琳愛奈「はい! 平蔵さんはすっごくいい人だし、価値だったら沢山あると思います。だから……その、こ、今度…い、一緒に………ゴメンなさいっ、や、やっぱりお先に失礼します! お疲れ様でしたっ」 027 瑛季「おっ、速ぇ、アイツ結構足速かったんだな…… あ、転んだ」 028 平蔵「……何ヲアノヨウニ急(せ)イテイルンダ?」 029 明音「花の乙女にゃ色々あるってことよ。……ったく、あの子も奥手なんだか積極的なんだか」 030 平蔵「フム、送ラナクテ大丈夫ダッタカ」 031 明音「家近いし大丈夫でしょ。さ、私たちは結社に戻るわよ」 032 瑛季「ちょ、ちょっとタンマ! う、うぐっ……アイテテテ!!! な、なぁ、俺実はさっきから物凄く腹が痛ぇんだけどさ。帰っていいか?」 033 明音「あら、ソレは大変。でも帰ることはないわ、私が結社で直々に治療してあげるから。まずは頭からね」 034 瑛季「ひぃぃぃぃぃっ、や、やっぱそれなしぃぃぃぃ」 035 平蔵「程程ニナ、団長。……ム?」 036 平蔵「(……誰カニ、見ラレテイル? コチラニ手出シスル気配ハナシ、イヤ。去ッタカ。何者ダ……?)」 (視点は変わり、一人ぽつんと帰り道を行く琳愛奈) 037 琳愛奈「あーあ、今日も言いそびれちゃったなぁ。……いつになったらデートに誘えるんだろう」 038 琳愛奈「ダメ、こんな所でくじけちゃダメよ私。いつか必ずチャンスはやってくるんだから、ファイトだ私!」 039 空泉「もし、お嬢さん」 040 琳愛奈「そしていつか一緒に…… キャッ」(物凄くノリノリに) 041 空泉「失礼、少々道をお尋ねしたいのですが宜しいですかな?」 042 琳愛奈「あ、はいっ!? よ、宜しいです! どちらに行かれるんですか?」 043 琳愛奈「(うわぁぁぁ見られたぁっ、見られちゃったぁぁぁっ!?)」 044 空泉「ええ、銀誓館…… という学び舎(や)をご存知ですか? そこまでの道のりをお尋ねしたいのですが」 045 琳愛奈「あ、銀誓館だったら母校です。良かったらご案内しますけど」 046 空泉「それは丁度いい。少々、私用がありましてね」(黒く、含みのある感じに) (視点が戻り、結社の部屋にて) 047 明音「いーいっ!? わかったぁっ?」(思いっきり頭ごなしに言う感じに) 048 瑛季「はい。もう出すぎた真似はいたしません。自重します、私はこれから大人しい子になりマス、言うこと聞きます。だから許してください団長閣下」 049 明音「ぜーーはーー…… やっと、分かったようね。そうよ、ソレでいいのよ」 050 瑛季「うう、負けた、負けちまった。くそぅ、やべ、なんか頭がガンガンする」 051 明音「あたしだって好きでやってんじゃないんだからね。まったく。大体ね、そもそも突撃しか能がないなんてのが……」 052 平蔵「明音、ソノグライニシテオイテヤレ。コレ以上ハ明日ノ授業ニ支障ヲキタス」 053 明音「あら、もうそんな時間? ……ってもう二時間!? はぁ。お開きにしましょうか」 054 瑛季「た、助かった」 055 明音「すっかり暗くなっちゃったわねぇ…… やだわ、痴漢が出そう」 056 瑛季「出たらそいつの最期だな、かわいそうに」(ボソッと) 057 明音「なんかいった?」 058 瑛季「いーやなんにも」 SE:(ゴソゴソと掃除道具を取り出す音) 059 明音「なにやってるの平蔵、帰るわよ?」 060 平蔵「イヤ、今日ハ俺ガ掃除当番ダ。掃キ掃除ダケデモシテオキタ、先ニ帰ッテイテクレ」 061 明音「別にいいわよー、一日ぐらいサボっても」 062 平蔵「割リ振ラレタ仕事ハコナサネバ落チ着カナイ、適当ナトコロデ切リ上ゲルユエ。心配無用」 063 明音「そう。わかった、それじゃあたし達は先に失礼するわね」 064 瑛季「おう、また明日な〜」 SE:(バタンと扉が閉められる音) 065 瑛季「それにしても明音に痴漢しようするやつはかわいそうだよな」(ドアの向こうの音っぽく音量下げて) 066 明音「どーゆー意味よ」(ドアの向こうの音っぽく音量下げて) 067 平蔵「マタ明日、カ」 068 平蔵「居ルノダロウ、姿ヲ現セ」 SE:(スコンッ! と、矢が打ち込まれる音) 069 平蔵「矢文カ、ドウアッテモ姿ロ見セヌ腹ヅモリノヨウダナ。……ム? コノ結ビ方ハ……」 SE:(カサカサと紙を開く音) 070 空泉『前略。土蜘蛛の末席へ。氏族の誇りを忘れたらざらば"屋敷"に来られたし。我は眞由璃(まゆり)様への信義を忘れざる忠臣が一人。貴殿を同胞に迎えたし』(何かしろ声にエフェクトを) 071 平蔵「土蜘蛛ノ残党カ…… 馬鹿馬鹿シイ、コノヨウニ無駄ナコトヲシテ眞由璃(まゆり)様ガ喜バレルト思ッテイルノカ。……ム?」 072 空泉『尚(なお)、我が元に来られたあかつきには大敵の首を進呈する。貴殿が反逆者にあらざらば楽しみにして来られよ。草々』 073 平蔵「大敵ダト? コノ写真ハ…… 琳愛奈! 馬鹿ナ! 誘拐されたのか!?」 SE:(携帯をかける音……繋がらない) 074 平蔵「ク…… 琳愛奈、スマヌ。俺ガヤツヲ見逃シタセイダ! マダ間ニ合ウカ? 無事デアッテクレ、琳愛奈……!」 SE:(走って扉を開ける音) 075 明音「あら、そんなに急いで何処に行く気?」 076 平蔵「……明音、何故ココニ」 077 明音「ここは私の結社よ、矢文なんて撃たれたら気付くわよ。因みにあなたの大きなひとり言まる聞こえ」 078 平蔵「スマナイ、俺ノ失態ダ」 079 明音「だから一人で解決しようって? そんなマネは許さないわよ。あんたも、琳愛奈も、あたしの大事な団員なんだからね」 080 瑛季「おう、それにこんな面白そうなこと、お前一人にやらせられっかよ!」 081 平蔵「オ前タチ…… いいのか、危険だぞ」 082 明音「だったら余計に一人で行かせられないでしょ、琳愛奈のためにもね。平蔵、まだ昔の癖が残ってるわよ。誰かが失敗したら全員で助ける、それがあたしたちの流儀よ! 分かったらすぐに銀誓館本部に連絡して応援を呼ぶわよ」 083 平蔵「カタジケナイ。ダガ、ソレハ待ッテクレ」 084 明音「なに? まだ文句あるの?」 085 平蔵「違ウ。コノ事ガ知レ渡レバ、銀誓館ニ居ル土蜘蛛タチノ立場ガ危ウクナル」 086 平蔵「コレカラ築イテイクベキ信頼ヲ、コンナトコロデ崩レテシマイタクナインダ」 087 明音「……そうね、ゴメンなさい。あなたたちの立場を考えてなかった。今のは浅慮だったわ」 088 平蔵「イヤ、浅慮ナノハアチラダ」 089 平蔵「半年ノ修学ヲ経テ、我ラハ心二決メタノダ。君達ト未来ヲ共ニスルト。ソレガ我ラ土蜘蛛ノ意志、ソシテ眞由璃様ノゴ意志デモアル」 090 平蔵「過去ニ妄執シ未来ノ見エテイナイ亡霊ニハ、俺ノ手デ間違イヲ諭シテヤラナイト」 091 明音「なるほどね、確かにそうじゃなきゃけりが付かないか。分かったわ。……でも琳愛奈は私たちの仲間よ、断っても瑛季と私は付いてくわ。それは譲らないからね」 092 平蔵「承知シタ、助力ヲオ願イスル」 093 明音「あら、やけに素直じゃない」 094 平蔵「今カラ2時間ノ説教ハ勘弁シテホシイカラナ」 095 明音「フフ、分かってるじゃない。……それじゃ屋上に行きましょうか、作戦会議をしないとね。ソレとひとつ、やりたいことがあるし」 (視点は変わり、かつて土蜘蛛屋敷と呼ばれた場所へ) SE:(パターンッ! と、重い扉を閉める音。もしくはシャッターを下ろす音) 096 空泉「着いたぞ、暫くそこで大人しくしていろ」 097 琳愛奈「此処は…… 土蜘蛛屋敷の車庫? まさか、ここは銀誓館が管理していたはずじゃ」 098 空泉「今でも管理しておるぞ、だからこそ盲点になろう。……さて」 SE:(チャキ、と武器の擦れる音) 099 空泉「出迎えの準備をせねばな。悪いがそなたにも役に立ってもらうぞ」 100 琳愛奈「平蔵さんを、どうするつもりですか」 101 平蔵「自分よりもヤツを案じるか、出来損ないもこの世では恵まれていると見える。……フン、眞由璃様の亡き世でさぞ多幸なことだろうな」 102 琳愛奈「答えて下さいっ! 平蔵さんには危害を加えないで! あの人は本当に良い人なんです!」 103 空泉「それはあやつ自身の選ぶことだ。こちらに付くならば篤(あつ)く迎えよう、鋏角集(きょうかくしゅう)の感知能力は必要不可欠ゆえ無下にはせん。……だが」 チャキ 104 空泉「付かぬならば、切り捨てるまで」 105 琳愛奈「そんな、身勝手すぎます!」 106 空泉「身勝手! ははは、よもやわが身惜しさに眞由璃様を殺した奴らからそんな言葉を聞けようとはな!」 107 琳愛奈「それが、理由ですか? 私たちへ復讐がしたいなら、私を殺せばいいじゃないですか! 平蔵さんは関係ない!」 108 空泉「復讐か、ソレもある。だがソレだけではない」 109 琳愛奈「だったら何なんですか!」 110 空泉「許せんのだ、今の土蜘蛛が! よりにもよって眞由璃様を殺めた者達の軍門に降り、飼犬の如く従属する裏切者が! 誉(ほま)れ高き土蜘蛛氏族の誇りを忘れた馬鹿者がっ、許せんのだ!  来訪者ならば他にも居よう。負けたのならば屈辱に耐えてそこに落ち延び、主(あるじ)の無念を晴らすべく戦い抜くのが我らの勤めであろう! 眞由璃様を喪い、誇りすらも無くしたと言うのか! ……許すまじ、この体たらく。馬鹿者どもに士道のなんたるかを知らしめねばならぬ」 111 琳愛奈「……銀誓館に来た土蜘蛛さんたちだって好きで来たわけじゃありません。逃げたくても逃げられなかったんです。だから、血を飲むような決心をして、私たちの元に降ったんです。それなのにその土蜘蛛さんたちが悪いと決め付けるなんて…… 間違ってます」 112 空泉「ふん、誇りよりも命が惜しかっただけだろう。真の忠臣ならば獄中(ごくちゅう)で舌を噛む程度できなくてどうする」 113 琳愛奈「それは、違います。誇りを持って死ぬより、誇りに耐えて生きる方がずっと辛い。……尊い選択です。あなたは命を軽く扱いすぎてますっ、眞由璃さんだって最期は皆に生きてほしいって……!」 114 空泉「ダマレッ!!!」 SE:(腹を蹴る音) 115 琳愛奈「カハッ!?」 116 空泉「軽々しくその名を語るなっ!! 貴様達の殺した、いいか貴様達の殺した我が主だぞ!! どの口でその名を語るっ、愚弄にも程があるわっ!!」 117 琳愛奈「ケホッ、ケホッ…… そうやって、逃げるんですね。真実から、残された未来を考えることから……」 118 空泉「クッ、言わせて置けば小娘が……! 貴様を殺せるか殺せぬかで奴の真意を測ろうかと思っておったが…… もう我慢ならん、二度と妄言を言えぬようその首かき切ってくれるわ!」 119 琳愛奈「きゃっ」 SE:(あれば首を絞められるような音を) 120 琳愛奈「(あ、う…… しまった。怒らせすぎ……ちゃった? バカだな私、なんでムキになって反論したんだろ。平蔵さん…… ゴメンなさい)」 SE:バーンッ! と扉(シャッター?)を開く音 121 平蔵「待テッ!!」 122 琳愛奈「平蔵さんっ!?」 123 空泉「フン、来たか……」 124 琳愛奈「平蔵さん……(ここまでは安心した感じ、そしてここからハッとなり)ダメです! コレは罠ですっ!」 125 空泉「部外者は黙っておれ! だが、命拾いしたな。ハッ!」 SE:シュルルッ、と糸が飛ぶ音 126 琳愛奈「わぷっ、な、なにこれ……い、と……? 動け、な……」 127 平蔵「琳愛奈! 土蜘蛛ノ檻カ。回リクドイコトヲ」 SE:(コツコツと少し歩いて前に出る音) 128 空泉「さて、良くぞ一人で参った。そこから察するに色よい答えを携えてきたと見たが、どうだ? 我が元に降る用意は出来たか」 129 平蔵「断ル、貴様ノ仲間ニハナラナイ」 130 空泉「……何故だ、貴様も出来損ないであれ土蜘蛛だろう。眞由璃様の死に報おうとは思わぬのか」 131 平蔵「無論報イタイト思ッテイル。ダカラ、我ラハコノ道ヲ選ンダノダ」 132 空泉「なに、どういうことだ……?」 133 平蔵「眞由璃様ガ最期ニ下サレタ命令ハ徹底抗戦デハナイ、降伏ダ。アノオ方ハ我ラニ生キロト仰ラレタ、コノヨウニ無様ナ報復ナドヲシテ無駄死ニスルナト仰ッタノダ」 134 空泉「フン、聞いてみれば…… くだらん。所詮は眞由璃様の慈悲のお言葉を拡大解釈するだけの小物であったか。いいか、その道は間違っている。例え眞由璃様がご慈悲を与えて下さっても、我らは命に代えても戦い抜かねばならんのだ」 135 平蔵「間違ッテイルノハ貴様ダ! ソノ道ニハ終ワリノ先ガナイ」 136 空泉「然(しか)り。武士道とは死す事に在り」 137 平蔵「我ラハ生キルト言ッタハズダ。コノ、琳愛奈タチト共ニ!」 138 空泉「そうか、ならばもう良い、裏切者など要らぬわ! 誇りを忘れた愚か者よ、忠義と誇りの名の元に散れいっ!」 SE:(ダッッ!! と駆け出す音、そしてすぐに金属がぶつかり合う音が重なる) 139 平蔵「グッ……! 人質ヲ背ニシテヨク言ウッ!」 140 空泉「勘違いするな、アレは踏み絵だ。勝負には持ち込まん。だが安心しろ、お前を始末した後にでも墓標に添えてくれるわっ」 141 空泉「ハァァッッ!!!」 142 平蔵「ガッ、ゥ……ッ」 143 琳愛奈「平蔵さんっ!!」(押されている平蔵に、心配するように叫ぶ) 144 空泉「ほ、ほう。我が一撃を受けてまだ立つか。だがこれはどうかな……っ!!」 145 平蔵「グッッ、マケヌ!!」 (SE:激しく戦闘をしている音) 146 平蔵「ハァッ、ハァッ、ハッ……ハァァー……」 147 空泉「はっ、出来損ないにしてはよく足掻いた! よもや武術指南役のこの空泉に太刀打ちするとはな。だがそれも此処まで―――」 148 平蔵「暴レ、独楽ッ!!」 SE:(金属のぶつかる音) 149 空泉「グゥッ!? ――フン、消え行くロウソクほどよく盛るわ」 150 平蔵「マダダ、マダ、ダ……! 我ラハ、間違ッテナドイナイ――ッ!!」 SE:(戦いの音がダンダンと遠くなっていく) 151 明音「さて、と。あっちは派手にやってるわねー、天井まで剣戟の音が響いてくるなんて」 152 瑛季「な、なぁ明音、もういいだろっ!? 俺もう行っていいだろっ? なっ? こんな場所でジッとしてるなんて我慢できねぇよっ」 153 明音「ダーメ、あんたにはまだ仕事があるでしょ。琳愛奈を助けるって重要な仕事がね。そのためにわざわざ天井に隠れて赦しの舞を使ってるんだから、もうちょっと我慢しなさい」 154 瑛季「わ、分かったよ…… けど。あぁぁぁぁぁあぁあああああ!! 血が、血が騒ぐぅぅぅぅっ!!!」 155 明音「あーもう鬱陶しい! 黙りなさいこの戦闘狂!」 SE:ボカッ! 156 瑛季「アダッ」 157 明音「ったく。……お? オッケー、今のでやっと琳愛奈の糸を解除できたわ」 158 瑛季「おっ! マジかっ」 159 明音「いい? 静かによ! 手はず通り裏口から、しーずーかにっ! 潜入して、敵から見えないように琳愛奈を助けるのよ! 分かった?」 160 瑛季「ヘヘッ、了解! それで、その後はもちろん」 161 明音「好きにしていいわ。その代わり絶対成功させなさいよ」 162 瑛季「分かってるって! それじゃ行ってくるぜ! ヒャッホウ!!」 SE:ターンッ と、地面に飛び降りる音 163 明音「……大丈夫かしらね、アイツ。ま、かく乱になればいいか」 164 明音「さて、と。私の方も準備を進めますか」 SE:(再び戦いの音が戻ってきて) 165 平蔵「ハァ、ハァ……ハァ……ゴフッ! ハァ。ハァ……!」(気迫で立ち上がる感じ) SE:(血が地面に落ちる音) 166 空泉「何度立ち上がったところで無駄だ、所詮出来損ないが勝てる道理はない。上位土蜘蛛の力を知らぬわけではなかろう。……どうする、時勢の句を読む時間ぐらいならやらんでもないぞ」 167 平蔵「ソコ、ダ…… 鋏角挟ミッ!!」 SE:(スカる音) 168 空泉「はっ、どこを狙っている?」 169 平蔵「ッ! シマッタ!」 170 空泉「赤手に焼かれて死ねい―― 紅蓮、撃ッ!!!」 171 平蔵「ガハッ!」 172 琳愛奈「平蔵さぁぁぁんっ!!」(一撃を受ける平蔵を見て叫ぶ) SE:(爆発音。そして床に転がるか壁にぶつかる音) 173 平蔵「――ゲホッ、ごふ……ハッ…はぁ………ぁ………」(吐血して、呼吸とともに全身から力が抜けていく感じ) 174 空泉「同胞よ、あの世で眞由璃様に詫びるがいい」 175 平蔵「ゴホッ、……ココマデ、カ……」 176 平蔵「(スマナイ、琳愛奈…… 俺ハ眞由璃様ダケデナク、オ前マデモ守レナカッタ……)」 (此処から回想っぽい感じで、BGMとかも変えるといいかも) 177 琳愛奈「え、ええええ平蔵さんっ! 帰りはお一人ですかっ!? ……よ、よかったら。ご一緒、してもいいですか?」 178 琳愛奈「なんで怪我を隠ししたんですか! 怪我は私が治しますから! 平蔵さん、私を頼ってください」 179 琳愛奈「身分? なんですかそれ? あはは、今の世の中に身分なんてありませんよ。私も、平蔵さんも、みんな平等なんです」 180 平蔵「(アア、ソウカ。今頃気付クトハ…… 琳愛奈ハ、俺ヲ)」 181 琳愛奈「平蔵さん…………」 182 平蔵「(ソレヲ、守レナカッタ、ダト)」 183 琳愛奈「平蔵さん……」 184 平蔵「(守レナカッタ、ダト……ッ!)」 (此処で目が覚める) 185 琳愛奈「平蔵さん! 起きて下さいっ! 平蔵さん! 平蔵さんってばっ!」(必死に) 186 平蔵「ッ! クッ……琳愛奈……?」 187 琳愛奈「……よかった、目を覚ましてくれた。はぁー、心配させないげ下さいよ」 188 平蔵「ナゼ君ガココニ……イヤ、ナンデ俺ハ生キテイル……?」 189 琳愛奈「瑛季さんが助けてくれたんです。それよりジッとしてて下さい、いま怪我を治しますから!」 190 平蔵「ソウカ瑛季ガ…… カタジケナイ、俺ナド放ッテ逃ゲレバヨカッタモノヲ」 191 琳愛奈「バカッ、仲間は絶対に見捨てません! 平蔵さんだったらなおさらです! あの瑛季さんだってあなたを助けるために……」 (SE:戦いの音が激しくなり) 192 瑛季「ハッハーーッ!! いいねいいねっ!! あんたすげぇ強ぇよっ!! へへへ……」 193 空泉「くっ邪魔をするな小童! 貴様から死にたいかっ!!」 194 瑛季「ハッ、そいつは勘弁だっ! もう戦えなくなっちまうからなっ! だから……俺の歌を聞けぇぇぇ!!!! ショッキンッッ! ビィィィィトッッ!!!」 195 空泉「ぐおっ!? 奇怪な術を使う! が、くだらん! その程度のまやかし、叩き潰してくれるわっ!!」 196 瑛季「ハッハァァァッ!! シィィビレルゥゥ!!!! イイネイイネイイネイイネこの感じっ!! ゾクゾクしてきたぜぇぇ! イヤァハァッ!!」 (SE:戦いの音が遠のき) 197 琳愛奈「助けるため…… だと思います、たぶん」 198 平蔵「瑛季ラシクテ良イ、アノ男ハアアデナイト。……イイ仲間ヲ持ッタナ、俺ハ」 199 琳愛奈「平蔵さんを含めて、最高のチームですから。さぁ、だから今は皆で撤退を……」 200 平蔵「ああ。……ムッ!? 琳愛奈ッ! 離レロッ!!」 201 琳愛奈「え? あ、はいっ!!」 SE:(ザンッ!! と言う音と、怪物の断末魔の悲鳴) SE:(カサカサカサ と、大量の蜘蛛が近付く音) 202 平蔵「蜘蛛童ダト……? 隠シテイタノカ。チッ、コノ気配…… 十ヤ二十デハナイゾッ!?」 203 琳愛奈「うわ、わわわわわワラワラ出てきたぁぁぁっ!? ウッキャァァーーーー!? いやっ、いーーーやーーーぁっ!!?」(取り乱す感じに) 204 平蔵「ド、ドウシタ琳愛奈!? アレハ寄セ集メノ雑魚ダッ、落チ着ケ!」 205 琳愛奈「ダメッ! びゃ、白燐蟲使いだけど虫は苦手なんですっ!!」 206 平蔵「ナンデヤネンッ!!」 SE:(ガサガサと蟲の迫ってくる音……) 207 平蔵「クッ、倒テモ倒シテモ切リガナイ…… ジリビンカ」 208 琳愛奈「いやーーーっ!! むーーしーーいーーやーーーぁぁっ」 209 瑛季「ハッハーーッ! 面白くなってきや……」 210 空泉「ワキが甘いっ!!」(台詞に割り込む感じに) SE:(打撃音) 211 瑛季「ガッッ!!  グ…… シマッ」 212 空泉「一瞬の隙が命取りになる、あの世で教訓にするんだな……ハッ! 紅蓮撃ッッ!!」 SE:(爆発音) 213 瑛季「ゴフッ!?」 214 空泉「手こずらせおって、だがこれでツメだ。……集えっ蜘蛛童たちよっ!! 眞由璃様の仇とこの裏切り者どもを食い尽くすのだっ!!!」 SE:(ギャーギャーと蜘蛛が鳴くような音? ……どんなのだろ/待) 215 平蔵「瑛季ッ!! ……琳愛奈、瑛季ノ治療ヲ頼ム」 216 琳愛奈「分かりましたっ」 217 平蔵「俺ハ空泉ヲ倒シテ、蜘蛛童ノ動キヲ止メル」 218 琳愛奈「止めるって…… 無茶です!! 何考えてるんですかっ!? 一緒に撤退しましょう!」 219 平蔵「ソレコソ無理ダ、空泉ガ見逃スワケガナイ。刺シ違エテデモ、セメテ撤退スル時間ハ稼イデクル」 220 琳愛奈「待って、下さい……!」 221 平蔵「琳愛奈、ソノ手ヲ離シテクレ」 222 琳愛奈「離しません! 平蔵さんは死んでも逃がすつもりかもしれないけど、私だって死んでも琳愛奈さんを捨て駒にしたくありませんっ」 223 平蔵「シカシ……」 224 空泉「フハハハ! ならば仲良く死ねば良かろう! 行け!」 225 明音「そーよ、誰も捨て駒になる必要なんてないわ」(エフェクト:響く感じに) 226 空泉「チッ新手かっ、何やつ!!」 227 明音「アーーーッハッハッハッハァ!!(高笑い)結社【世界防衛連盟】団長、明音。ただいま参上! みんな、待たせたわね! さぁ、さっさとそこの石頭を倒しちゃいましょ!」 228 空泉「何かと思えば戯言吐きの小娘か。蜘蛛童っ、何をしておるっ! 早く集まらんかっ!!」 229 明音「フフン。なにを叫んでるのオネエサマ? 無駄よ無駄、残念ながらここは包囲されてもらったわ。今頃他の団員達が害虫駆除をしていると・こ・ろ、よ」 230 空泉「なんだと! チッ、仲間をだしに使ったのか…… 大した頭(かしら)だな」 231 明音「あら、最初に琳愛奈をだしに使ったのはあなたよ? 倍返しするのは当たり前じゃない」 232 瑛季「ゲホッ。……ひっでぇなオイ、俺まじで3人で勝てって言われてたぜ……」 233 平蔵「銀誓館ニハ知ラセテクレルナト言ッタハズナンダガ…… コノ際文句ハ言エナイカ」 234 明音「ごめんね。あたし仲間は守るけど約束は守らない主義なの」 235 明音「ま、緘口令(かんこうれい)敷いて結社員だけ動員したんだからそう邪険にしない、……まぁそれでも50人はいるけどね?」(最後は空泉に言い放つように) 236 空泉「だから逃げられぬ、とでも言いたそうだな」 237 明音「あら、違った?」 238 空泉「違うな、囲まれたのはしてやられたが、烏合の包囲を破るなど容易きこと。こやつを始末した後に優々と去ってくれよう」 239 明音「あらら、オネエサマってば本気?」 240 空泉「うぉぉぉっ!!」 241 明音「ってうわホントに来たぁっ!?」 SE:(ガキーン! と金属のぶつかる音) 242 平蔵「明音、コヤツハ本当ニ突破シカネンゾ!」 243 明音「分かってるわ。平蔵、まだいける?」 244 平蔵「無論」 245 明音「ならガツンとかましてきなさい!」 246 琳愛奈「なっ、何言うんですか明音さんっ!?」 247 瑛季「いっだだだだっ!? 治療中に余所見すんなっ!?」 248 琳愛奈「あ、ゴメンなさい」 249 明音「大丈夫よ。平蔵、女王様のご加護が付いてるわ。あの復讐バカに教えてやりなさい」 250 平蔵「コレハ……! ワカッタ」 (一呼吸置き。BGMを変えるなり消すなり……) 251 空泉「ここまで戦ったことは素直に称えよう、戦術も見事だ。しかしいかな理由があろうと貴様達は許さん、絶対にな」 252 平蔵「オマエハ…… 地縛霊ノヨウダ。心ニ鎖ガツイテイル。過去ニ繋ガレタ鎖ガ」 253 空泉「ならば差し詰め貴様は使役ゴーストか、上手い例えだ。飼い犬と野犬、どちらの牙が鋭いか教えてくれよう」 254 平蔵「話ヲ聞ク気ハナイカ」 255 空泉「くどい」 256 平蔵「ナラバ刃(やいば)デ示ソウ、我ラノ道ヲ」 257 空泉「面白い。どれほどの物か見極めてやろう」 258 空泉「……いざ」 259 平蔵「参ル……ッ」 SE:(軽く打ち合い、弾けるように両者が間合いを取る甲高い金属音…… そしてお互い目掛けて駆け出す音) 260 空泉「砕っ、あぁぁぁぁ!!!」 261 平蔵「クッ、オオオオオオオッッ!!!」 262 空泉「紅蓮――」 263 平蔵「暴レ――」 264 空泉「撃っ!!」(同時に) 265 平蔵「独楽ッ!!」(同時に) SE:(ぶつかり合う音) 266 空泉「ク……ハ……っ! 何故だっ! 何故死にたいでここまでの力が出せるっ!」 267 平蔵「ハァ、……ッ! ハァ! ……俺ハ、貴様ノヨウニ一人デハナイ。仲間ト、眞由璃様ガ憑イテイル」 268 空泉「貴様っ!! まだその名を出すか!!」 269 平蔵「アア貴様ガ気付クマデ何度デモ出スゾ!! 空泉、戦イハ終ワッタノダ! 我々スルベキコトハ戦イデハナイ! 生キルコトダ!!」 270 空泉「黙れ小童が! 貴様の道で眞由璃様が、土蜘蛛が報われることなどありえん!」 271 平蔵「何故分カラヌ、空泉」 272 空泉「その言葉、そのまま返してやろう! るああああぁぁぁっ!!!」 273 平蔵「ク……ウォォォッ!!!」 SE:(弾かれる音) 274 空泉「何故だっ、何故こうも容易くはね返されるっ!? こんな若造に、何故私が劣る……っ!!」 275 平蔵「オ前ハ俺ヨリモ強イ、ソレハ間違イナイ」 276 空泉「ならばっ、ならば何故だ!!」 277 平蔵「マダ分カラナイノカ。コノ刃ニ宿ル輝キ、誰ノモノダト思ッテイル」 278 空泉「なにっ!? それは、祖霊降臨? まさか、まさか……っ!!」 279 平蔵「ソウダ、ココニ、眞由璃様ノ魂ガ宿ッテオラレルノダ」 280 空泉「眞由璃様、なぜだ。……そんな、筈は……ない! …眞由璃様が、貴様…、なぞに……」 281 平蔵「貴様ニ分カッテ欲シカッタノダロウ、新タナ土蜘蛛ノ道ヲ。……聞コエタダロウ、オ前ニモ生キテ欲シイト願ウ心ガ。ソレガ、眞由璃様ノ御心ナノダ。ダカラ、モウ武器ヲ収メ、大人シク……」 282 空泉「違うっ!! 私は信じぬぞ! 眞由璃様が貴様らに憑くなどありえんっ!! 信じてなるものか、騙されてなるものかっ、あのようなハッタリにこの我が剣が遅れを取るはずが無い!! そんなまやかし、この手で砕いてくれる!」 283 平蔵「待テッ!? 早マルナ!!」 284 空泉「るああああああぁぁぁぁっっ!!!」(狂ったような感じで) 285 平蔵「クッ、御免ッ!!」 SE:(………ザンッ!) 286 空泉「くはっ……あ……、ぁ―――― 見事な一撃だ。さすが、眞由璃様の力よな」 287 平蔵「オ前、分カッテイテ」 288 空泉「無念よ……ああ、無念無念。されど、最後に眞由璃様の御霊を拝めたからな。悔いはあるまいて……」 SE:(ドサリ……と巨体の倒れる音) 289 琳愛奈「平蔵さんっ!」 290 平蔵「琳愛奈、結局最後マデ傍ニ居タンダナ」 291 琳愛奈「当たり前です」 292 平蔵「ソウカ、……アリガトウ」 293 瑛季「やっと終ったか、まったく手強い怪物だったぜ」 294 明音「ホント、ゴーストの100倍疲れたわ…… 琳愛奈、大丈夫だった? 変なことされてない?」 295 琳愛奈「あ、はい、私は大丈夫です。……でも、あの人は、あれで良かったのでしょうか」 296 平蔵「気ニスルナ。復讐ノ鬼ニ取リ憑カレタ者ノ、当然ノ末路ダ……」 297 平蔵「タダ、真(まこと)ノ忠臣デアッタコトダケハ、コノ胸ニ刻ンデオコウ。橘一心斎空泉(たちばないっしんさいくうせん)ヨ」 (場面は代わり、BGMも変えて) 298 瑛季「い゛っっっ!!!!! ……だぁぁぁぁーーーーーーーっっ!!!! も、もっと優しく包帯巻いてくれよ明音! アダッ! 不器用だと嫁に行けねぇぞっ!?」 299 明音「うりゃっ!」 300 瑛季「うぬぉうぉぅおぅぉうあぁぁ〜〜〜〜!!?」(声をアップダウンさせて悶絶する感じに) 301 明音「一言多い! 専門外のところを特別に治療してあげてるんだからつべこべ言うな。それと誰が行き遅れるか、これでも引く手数多なんだからねっ」 302 瑛季「…………」 303 明音「なんでそこだけ黙るのよ!」 304 瑛季「いや、もし行き遅れなくても貰っちゃった奴は飛んだ災難だなと思って、先に黙祷を」 305 明音「ふーん、そう。えーと、骨折した所ってこことここと、ここだっけ。うふふふ」 306 瑛季「え、明音? なにその笑顔、超怖い。まさかそんな、やめて、それだけはご勘弁を! いやぁぁぁぁっ」 307 瑛季「え、琳愛奈ぅ〜平蔵ぃ〜早く戻ってきてくれ〜! 俺の身が持たねぇ〜!」 (場所は変わり。お墓の前へ) 308 琳愛奈「ヘッ…クシュッ!」 309 平蔵「ドウシタ、琳愛奈。風邪カ?」 310 琳愛奈「そんなわけじゃないですけど…… おかしいなぁ、誰か噂してるのかなぁ」 311 平蔵「大方明音カ瑛季ダロウ。……サテ、到着シタ。ココガ土蜘蛛一族ノ墓ダ」 312 琳愛奈「ここが…… 意外と、質素な場所なんですね。墓標も一つしかないし」 313 平蔵「我々ハ皆兄弟デアリ家族、一ツデアル事ガ誇リナンダ」 314 琳愛奈「だから、空泉さんもここに眠らせてあげるんですね。誇りとか…… 私にはよく分からないけど、きっと喜んでくれると思います」 315 平蔵「ソウダト良イナ。アノ世デ少シバカリ喧嘩シソウダガ。眞由璃様ノ言葉ナラヤツモ納得スルダロウ。……ソウダト願ウ。ヤツモ、大事ナ仲間ダ」 316 琳愛奈「あの人もちゃんと仲間なんですね」 317 平蔵「アア、信頼デキル仲間ダカラコソ、オ互イノ間違イガ許セナカッタ」 318 平蔵「琳愛奈……ヒトツ聞イテモイイカ?」 319 琳愛奈「はい?」 320 平蔵「仲間トハ、何ナノダロウ。俺ニトッテノ仲間ハ土蜘蛛ナノダロウカ、ソレトモ、結社ノ皆ナノダロウカ……」 321 琳愛奈「なんだ、そんなの、最初から決まってますよ」 322 琳愛奈「世界中の生き物はみんな仲間です。ゴーストだって、来訪者だって。仲が悪かったり立場が違ったりするけど、本当は皆支えあって生きなくちゃいけない大事な仲間なんだと思います」 323 平蔵「ナ……、……ハッハッハッハ! ソウカ、ソウイウ考エハ思イツカナカッタ!」 324 平蔵「アリガトウ琳愛奈、己ノ器ノ小ササガヨクワカッタ。ソウダナ、コンナコトニ悩ンデイルヨウデハマダマダ未熟ダ」 325 琳愛奈「……? あれ、私何かへんなこと言いました?」 326 平蔵「イヤ……。ダソウダ、空泉。恨ミトハカクモ愚カデ、己ヲ小サクスルモノラシイ。願ワクバ、来世デハ互イ器ノ広イ人間ニナッテ出会オウ――」 <了>