HETSA2010

二度目の国際学会である。今回のテーマは,適度に休むときは休んで全日程を乗り切ること。鷹揚な言い方に聞こえようが,これが現在の自分の緊急課題。40代に突入し,仕事や身の回りは忙しくなるばかり。日本の古武術にあるようなより省力的な業務遂行方法を編み出すことが,いわば生き残りのための必須条項である。前回はとにかく全力でやったから,成果は出るには出たが,やはり猛烈に疲れたし,後の反動もすごかった。
 場所はシドニー大学である。前回はパラマッタというシドニーから内陸へ30キロの古都が会場だったので,シドニーには空港への移動前後に泊まっただけで,あまりよく分からなかった。今回は,大学と中央駅の中間に宿をとる。飛行機は,もっとも安かったシンガポールエアを選択。7時間程度で一休憩できるのが救い。シンガポール空港では,アジアの熱気が伝わってきた。朝の10時頃にシドニーのキングストン空港に到着。二階建て電車で移動し,途中,荷物おきの付近に若者がどっと入ってきて,降りれるか心配だったが,Where do you get off the train?と聞いて,I will get off at the central station, My luggage is over there.でなんとか通じる。無事に到着し,ゴロゴロ押して,ホテルへ。付近は中華街があり,アジアの活気と変な英語が充満している。
 前日にシドニー大学を下見する。トラベル10という前払い専用のバスチケットを買いにいくものの,仕組みが複雑すぎてよく分からない。結局,It is so complicated for visitors. I would like to go to Sydney University. go and return, go and return ,,five times. で通じた。まだ耳が英語に慣れない。
 下見は学会会場と,初日のウエルカムパーティ会場の,ニコルソン・ミュージアム。1860年代の建物は,オクスフォードのような重厚な雰囲気である。大学の構内に,博物館がある。ミイラmummy が陳列されていた。




 翌日は,ここでワインパーティである。K大のI先生とバスでお会いし,グレーネベゲンさん,マシューさんに再会。マクルーさん,ムーアさんなどにも再会する。そうこうするうちに,日本人メンバーも多数到着。
 会議初日目は,古典派中心である。マシューさん,アスポロモゴスさん,Iさん,M君など。Iさんはもうほとんど常連メンバーで,学会の雰囲気にすっかりとけ込んでいる感じだ。M君の発表は毎回盛り上がるのだそうだ。今回もそうであった。ランチもなんとかこなし,皆と飲みたいのを我慢し,さくっとホテルへ。自分の発表は3日目なので,体力温存が最優先である。二日目は,Tさん,Kさん,I先生,Sさん。みな優秀な方々で,洗練が感じられる。Kさんなどは,今回が初めてだったそうだ。すごい。さて,シームア(LSE,ホートンストリートの方法論争)さんなど興味深い話を聞き,大学院生とランチで話し込むなど,やや調子を上げていく。大学院生の話は,日本にはソブリンリスクの心配がない。ユーロのような貨幣発行自主権の制限が無いのだから,いざとなったら貨幣を刷れば良い,という話で,盛り上がる。ディナー・パーティである。マーシャル研究家のフィッシュバーンさん,マシューさんの奥さんと同じテーブルで,わいわい楽しかった。結局,10時ころまで飲んでしまい,急いでホテルへ。いよいよ3日目である。ホテルでイングリッシュブレックファストを食べて,早めに到着。前回よりも緊張した。というか,こういうのは何度やっても緊張するものなのだろう。
 原稿は準備しておいたから,発音に注意して,時間通りに済む。質問は,ウェッブは専門的経済学者か?(リトルボーイさん),LSEにおけるウェッブの伝統は存在するのか(シームアさん,なんとLSEにおけるポパーの弟子!)レント理論におけるマーシャルとの比較,労働に関する王立委員会でのウェッブとマーシャル(グレネベゲンさん),ピグーとの比較にあたっての『Wealth and Welfare』1912を見る必要がある(マクルーさん)などである。これもまあ三日目の唯一の特権である耳慣れのおかげで,なんとかクリア。




 ようやく終了。日本人の皆と,フィッシュマーケットへ繰り出し,明日のマシュー家でのBBQのおみやげの買い出し。 BBQではマシューさんの新居へ招いて頂いた。奥さんの手料理もすばらしく,マシューさん直々のBBQステーキも絶品であった。小食のため,おいしかったのに全部をいただけなかったのが,非常に残念だった。7時頃失礼し,ホテルへ。ようやくここで,全日程終了。2008では,マシュー家でもBBQパーティに出れなかったが,今回はなんとか全日程をこなした。皆,いろいろ親切に褒めてくれたので,なんだか努力も報われた感じでほっとする。しかし,口内炎で口の中はボロボロで,いささか体調も壊してしまう。
 やっぱし海外学会参加は二度目でも大変だ。でも,こんなにして,一歩一歩こなしていくしかないのだろうと思い,ひさびさにベッドで熟睡した。