■2004年の注目作品 2004.12.31
以下は2004年に発表された入れ替わりを扱った作品の中から管理人がこれは!と
思った作品です。ここに取り上げられている作品=万人が萌える作品、か
というとそんなことは全然ないです。
数多くの入れ替わり作品を見てしまうとこういうとこを見てしまうのか、
と思えるくらいに擦れた人間の意見だと思ってくれるといいと思います。
『Remember11 〜the age of infinity〜』
『フォーチュン・クッキー』
『先輩とぼく』
つきつめたアイデアの入れ替わり要素
「大きく場所を隔てた男女の心が入れ替わってしまう」。この文言を売りにして発売
されたPS2用ADVゲームがこの『Remember11 〜the age of infinity〜』だ。しかも二人
の主人公の男女をザッピングでプレイできるという。これを聞いたときちょうど
この一年前に発売されたアダルトPCゲーム『肉体転移』を思い起こさせた。その時の経験から
個人的にADVにおけるザッピングプレイと入れ替わり要素というのは相性がいいと思って
いて、もっとそういう設定を活かした作品が出てきてもいいのに…と思っていた。
しかし多くの作品がそうであるようにこの作品における入れ替わりという要素も
重要ではあるがメインではない。その体のギャップが生み出す面白話がそこそこ
にしかなかったのは覚悟の上だが、真面目なところで話の中で起きる殺人などが
双方の視点を見ることが出来るプレイヤーのみが真実が解る…というようなアイデア
的な新しさを期待してたのだ。ところが待っていたのは気が滅入る絶望的な話
と思わず( ゚д゚)ポカーンとしてしまう難解さで、入れ替わり要素を楽しむどころでは
なかったのである。
だがその入れ替わり方は特筆すべき面白さがあった。
話が進むにつれてその入れ替わりというのはある目的のために時空の転移現象に
巻き込まれたものであるということがわかってくる。実は入れ替わっている
のは主人公たちの意識ではなく時間と空間の方であって、主人公たちの
意識は例外的にその転移現象に取り残され仕方がなく空いている体に宿っていた、
という驚くべきものだったのだ。
今までに色々と入れ替わりのパターンを見てきたけど、これは間違いなく
今までに無かったもの。その新しいアイデアだけでも十分注目に値すると思った。
このゲームはプレイするとなると入れ替わり要素の少なさの割に、時間を多く
食わされてしまうので正直あまりオススメは出来ないのだけど、手っ取り早く
この作品を理解したいという人がもしいたら、その人にはノベライズ版が良いかと。
[Amazon: 上巻 下巻]
実はほとんどゲーム本編の書き写しなのだが、本編の難解さの反省からか若干
分かりやすく書き直されているため、これを読めばゲームをプレイしたのと
ほとんど変わらないのだ。
ちなみに
まあ以下は予備知識として、この作品の一般的の位置付けとはどういうものだったのか、というもの。
別にいいやという人は読み飛ばし推奨。
ゲームをする人間にとっては『Remember11』はゲームメーカー・KIDが
リリースしているインフィニティシリーズの3作目に位置している作品だ。
インフィニティシリーズとは基本的にはビジュアル・ノベル型の恋愛ゲームなのだが、
その内容は同じ時間を無限に繰り返してしまうというSF要素が関わるという作品。
単なる恋愛ゲームのように見えて一筋縄ではない深さ、といった複雑な要素が受け、これまで
の2作『Never7』、『Ever17』が大きく評価された。自然とこの3作目『Remember11』も如何に
無限ループという要素を活かした作品になるかと期待されていたのだ。
しかし一般の評価としても今作品の評価は高くない。
原因は色々あるが、今までの作品が恋愛ゲームを基調としていたのに対し、今回は
雪山の中の極限状態というが舞台の基本となっていて素の状態があまり楽しめないこと。
(『Never7』ではその設定だけでファンがこぞって追加シナリオを作成するほどだった。)
またシリーズの売りである無限ループという要素を思いっきり作りこみすぎてすごく難解な
内容になってしまい、今までのシリーズにあった知的カタルシスが得られないこと。
これらが足枷となり素直に楽しめない作品と言われている。
興味のある人は以下のサイトがより詳しい解説をされているので覗いてみると良いかと
サイト Second-Class TeaRoom より 『Remember11』紹介・考察のページ
http://www.secondtea.jp/tiered.html
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映画
『フォーチュン・クッキー』
2004年5/1 日本劇場公開
2004年10/20 DVD発売 [Amazon]
※この作品は正確には2003年の作品なのだけど、日本で公開されたのは2004年だった
ので2004年の作品として扱いました。
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“面白い”入れ替わり作品
この作品は劇場で観たしDVDも買った。それぐらい自分の中では評価が高い。
入れ替わりを扱った作品に対して「ドタバタなギャグ」とか「エッチな話」とか、
みんな色々なイメージを持っていると思うが、では誰もが楽しめる入れ替わり
作品は?と尋ねた場合、この『フォーチュン・クッキー』は一つの最終回答だと
言っていいだろう。母娘のギャップを活かした面白描写、そして相手の立場を体験
したからわかるホロリと泣かせる描写。エンターテイメントとしての完成度は
群を抜いている。
この作品にはリメイク元となっている作品が存在する。1977年にアメリカで公開された『フリーキーフライデー』と
いう作品だ。一般的にはアカデミー主演女優賞をも受賞したことがある女優のジョディー・フォスターの
子役時代に出ていた映画、という認識なのだが、こと入れ替わりといった変身ものの
映画に興味がある人間にとっては、アメリカにおける入れ替わりの代名詞的作品で
あるのだ。
これが改めてリメイクされブロックバスターレベルのヒット(一億ドル以上の興業収益)を飛ばした
というのは非常に大きな意味がある。日本における小説『おれがあいつであいつがおれで』が近年に
なって『どっちがどっち』やモーニング娘の演じる同タイトルのドラマとしてリメイクされた
のと同じように、この『フリーキーフライデー』も知る人ぞ知る作品などではなく、一般的な
映像作品の名作・定番として認定されたと言えるのではないだろうか。素直に入れ替わり
作品を観る機会が増えるという意味だけ取ってもそうとう美味しいことだと思う。
以下は当作品に対して書いた関連雑記など
『フォーチュンクッキー』
『フォーチュンクッキー』DVD
『フリーキーフライデー』
オタク要素の一つとしての入れ替わり
この『先輩とぼく』という作品は微妙な作品だ。はっきり年頃の男の子と女の子が入れ替わった
という設定を売りにしているはずなのにイマイチ入り込めない。しかも2巻以降その設定は
本当に設定だけの存在になってしまい、そのことにまつわる話は全然展開されない。
この作品はまがりなりにも電撃ゲーム大賞の銀賞
を受賞した作品なのだが、選考委員にもこの「強烈なオタクテイストは好みを分けるかもしれません」
と言われてるくらいで、良くも悪くも評価された部分は入れ替わりの部分ではないのである。
というような感じで、入れ替わりの要素がこの作品を特徴づけているのは間違いないが、じゃあどういう
位置付けにあると見るのが一番この作品を楽しめるか…は結構悩んだ。
そんな感じだったのだが2巻目以降を読んでいて気付いた。この話の新しいところは著者の沖田雅による入れ替わりという
要素を新たに定義付けたことなのではないだろうか。例えば、猫耳や不思議少女といったオタクが
好む記号的な要素があるが、沖田は入れ替わりだってそういうものの一つに違いないと
考えている節がある。つまり入れ替わりという要素をオタクの萌え属性の一つとして
扱っているということだ。
それはこのキャラが存在自体が漫画的ということを示す意味ではなかなか効果的。
なるほど試みは面白いし、入れ替わりという要素自体はオタク的認知度は高いわけだから十分
通用するだろう。
…ではあるんだが、この作者その時点で満足してるっぽいんだな。まあ確かにストーリー的
に1巻でもう元には戻らないことが確定してしまっているので、それ以上の展開はない
というのはわかるんだけど。
それはやっぱり作劇的にどうこうじゃなくて、せっかく作った設定が活かされてないようで
なんだかもったいない。「属性:入れ替わり」というアイデア自体は面白いのでもう少し
そっち方面の話も期待したいところ。
個人的にはメインであるオタク話もなんだか生ぬるさを感じて物足りないんですが…
まあそれは別の話。
まとめ
2004年はこのサイトを開設した年です。そのおかげか大変恵まれていることに
多くの方から数多くの情報提供をいただきました。自分の中では、2004年という
年は今まで見れなかった作品や知らなかった作品を見る機会が怒涛の如く押し寄せ
た年なので、2004年の作品がどうのという分け方は実は難しかったりでした。
2004年だけ取ってみれば非常に発表媒体が多彩で、初回特典のみに収録されて
いる作品が該当だとか、オタク的知識・技能を持ち合わせていないと入手が難しい
作品も結構多かったように思います。
まあそういうのを噂で聞いたりしたらガンガン言ってください。喜んで人柱に
なりますので(笑)。
まあこんな調子で長く続けていけることを祈りつつ締めたいと思います。
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