宝塚歌劇団の卒業生による「桜合戦狸囃子」東京公演を観てきましたが、
会場の新宿コマ劇場を訪れるのも昨年の狸シリーズ以来の1年振りでした。
昨年の暮れだったかと思いますが、
場内の改装を行うと言う話はちょっと耳にしたことがありました。
改装後の観劇は今回が初めてでしたが、
内部の感じががらりと一変していて驚きました。
劇場としての機能は変わっていないものと思われますが、
内部の雰囲気が全然違っていたのです。
新宿コマ劇場は客席の数から言えば大劇場であるにも拘らず、
他の劇場には見られない庶民的な雰囲気を持っていたと思います。
演目に演歌系統の座長公演が多かったためかもしれませんが、
高齢者の客層が主体であったことが原因だったものと思われます。
良く言えば気取らずに普段着で観られる大規模な大衆劇場であると言えますが、
悪く言えば時代遅れの田舎臭い野暮な劇場と言った印象もあり、
演歌系の公演が多い影響もあって若年層の入りが悪かったのかもしれません。
最初に驚いたのはその外観で、
新宿駅から歩いていくと真っ黒な外壁が目に入ってきました。
これが最終的な塗装なのか、
それとも中塗りで別の色で仕上げるのかは分かりませんが、
劇場とは思えない不気味な印象を受けました。
なお別の道から行くと気が付かない人の方が多いかと思います。
中へ入ってからはロビーの土産物売り場の雰囲気ががらりと変わっていました。
今までは屋台の出店のような雰囲気を持っており、
正に庶民のための劇場と言う印象を持っていました。
しかし今回目にしたのは私が訪れることは無いようなしゃれた店の感覚であり、
「土産物」売り場と言う雰囲気ではありませんでした。
商品自体は特別変わっていないと思いますが、
私としては購買意欲が増すことはありませんでした。
東京宝塚劇場も建て替える前は東京土産の売り場がありました。
宝塚歌劇以外の演目が上演されていたこともあり、
地方からの団体客も多かったためかと思います。
やはり現在の劇場に比べると大衆的な雰囲気を持っていたと思います。
名古屋の御園座や大阪の新歌舞伎座、
そして博多座等もそれぞれ独自の雰囲気を持っていますが、
そうした劇場の個性は画一的な近代化よりも大切なものではないかと思います。
劇場内での物売りや案内係も若い男性が増えており、
おばちゃんの物売りが主体だったこれまでとは大きく変わっていました。
座席の背もたれには折り畳み式のコップ受けが設けられており、
後ろの席の人が利用できるようになっていました。
コマ劇場では最後段のB席最前列に座ることが多かったのでこれまで気が付きませんでしたが、
恐らく昨年の改装工事で取り付けられたものと思います。
殆どの劇場が上演中の飲食は禁止していると思いますが、
コマ劇場では飲食を禁止する放送もないし、
プログラムにもその旨を伝える記述はありません。
公演に影響が無ければ飲み物くらいはご自由にどうぞ、と言うことなのかもしれません。
こうした大衆的な雰囲気を持った劇場でありながら、
休憩時間中の外出が禁止となっていました。
以前は外出時には半券にスタンプを押し、
再入場の際にその半券を見せれば入れると言うものでしたが、
何故禁止になってしまったのかは分かりません。
あるいは何か揉め事があってそれ以来禁止となってしまったのかもしれませんが、
私の知る限りではどの劇場でも半券を見せれば再入場は可能となっています。
より庶民的な劇場だと思っていただけに、
外出出来なくなってしまったのは全く意外なことでした。
新宿コマ劇場では8月にはファミリーミュージカルとして、
長いこと子供向けのミュージカルを上演してきました。
しかしながら最近では演目も大きく変わりつつあるようで、
今年の8月は手塚治虫原作の「リボンの騎士」のミュージカル化ですが、
ある程度はファミリーミュージカルの流れが残っていることを期待しています。
コマ劇場が出来た当時の歌舞伎町がどんな状態だったのかは知りませんが、
現在の歌舞伎町は昼間でも子供連れで歩くのに適当であるとは思えません。
団体観劇でバスごと劇場前まで行ってしまえれば問題ありませんが、
コマ劇場としても環境の変化は頭の痛い問題ではないかと思われます。