愛田芽久
乙女花園3回目の登場は、
卒業してから間もなく2年になろうとしている愛田芽久さんです。
スカイステージの放送で『1DayTrip』と言う番組がありましたが、
年末特集と言うことなのでしょうか、まとめて再放送されていました。
番組自体は昨年8月に収録されたものでしたが、
久し振りに元気な姿を拝見したもので・・・
愛田さんは入団が1994年ですから、
私が初めて宝塚の舞台を観た年と同じです。
しかし最初の頃は組回りと言うのでしょうか、
東宝劇場での『風と共に去りぬ』には出演していませんでした。
最初の観劇で男の目から観ても十分観賞に堪えられるものとは思いましたが、
作品名を見ただけではその内容が分からず、
結局次に観たのはやはり雪組の『雪之丞変化』でした。
勿論研一ですから大きな役が付くことは無く、
愛田さんも最初は「女の子」でしたが、その後の作品でも子役が多く、
宝塚の「名子役」であったかもしれませんね。
単に身長が低いから子役と言うのではなく、
愛田さんの場合は目が大きかったので子役に向いていたのかもしれません。
でもやっぱり子役をやる上で最も必要なのは、
何時までも子供の心を持ち続けることかもしれませんね。
この辺りは本人に聞かなければ何とも言えませんが・・・
芝居での大きな役としては、
バウホール公演『イカロス』でのロージィが挙げられる。
この作品は再演された日本青年館での公演を観たが、
ほんわかとした感じで子供の心を持ち続けるヒロインは、
彼女の持味に良く合っていたと言えよう。
ただし欲を言うならば、もっと思い切った演技をしても良かったかと思われる。
これは他の作品でも言えることなのだが、
何となく「無難に演じる」と言う姿勢が多かったような気がする。
これが今一つ伸び悩んだ大きな理由では無いだろうか。
大劇場のみの公演『真夜中のゴースト』も比較的出番の多い役だったが、
やはり優等生的な演技から抜け出せない印象を受けた。
新人公演では初のヒロイン役であったが、
残念ながらこちらは観ることが出来なかった。
変った役所では『猛き黄金の国』で「年増の芸者」と言うのがあった。
もう一人の灯奈美さんは流石に年増らしい雰囲気が出ていたが、
子役の多い愛田さんには難役だったようである。
宴席で座っているだけなので易しいようにも見えるが、
動きが無い分だけ難しいと言うことも出来よう。
尤も江戸時代には二十歳を過ぎれば年増と呼ばれていたようだから、
幕末と言う時代を考えればあれでも良かったのかもしれない。
ただしその場合には、他の多くの芸者が全員二十歳前とは思えないから、
あえて二人だけを「芸者(年増)」と別扱いする必要はないだろう。
地方公演『風と共に去りぬ』のメイベルのような役は、
他の令嬢達と共に娘役にとって楽しい役ではないだろうか。
役としては大きな役と言うわけではないが、
愛田さんのメイベルも持前の可愛らしさが良く生きていた。
この公演で特筆すべきはフィナーレ、
と言ってもプログラムでは第十八場『主題歌』となっているが、
芝居の最後にバトラーが去って次のロケットへと繋がる場面である。
安蘭けいさんが檀れいさんと愛田さんを従えて登場するのだが、
二人の娘役の衣装はスカーレットの白いドレス、
正に「両手に花」の安蘭さんを羨ましく思った場面である。
檀ちゃんが楊貴妃のように豪華な牡丹の花だとすれば、
愛田さんはもっと庶民的なコスモスの花に喩えられるかもしれない。
愛田さんは芝居では子役が多かったが、
どちらかと言えば「ショーの人」であったかもしれない。
歌唱力は特に優れているとは思わないが、
カゲコーラスにはかなり登場しているようである。
しかし愛田さんのショーでの見所は、
やはりダンスシーンであったと言うことが出来るだろう。
私自身はダンスの類は苦手の分野なので、
技術的に専門的な批評を下すことは出来ない。
しかし他の誰よりも楽しそうに踊っているのが魅力であり、
好感を持てた最大の要因であった。
下級生の場合、ダンスシーンは群舞となることが多く、
動きが激しいので誰がどこにいるのか探すのが難しい。
しかし愛田さんの場合には探すのは容易であった。
群舞では皆同じ様な化粧をしているので、
普通に顔で見つけようとするとなかなか難しい。
愛田さんを探すコツは、目と口が一番動いている人を探すことであった。
この方法なら顔で探すよりも簡単であり、
そこには間違いなく愛田さんがいたのである。
大きな目が良く動くのは分かるが、
口を動かしていたのは何だったのだろう。
歌いながら踊っていたとは思えないのだが・・・
しかし同じ様なことをピアニストの仲道郁代さんの演奏会で見たことがある。
やはり口をパクパクさせながらピアノを弾いているのだが、
勿論クラシックの曲だから歌詞は付いていない。
恐らく気持ちを高めるために、
声には出さずにメロディーを口ずさんでいたのだと思うが、
愛田さんのダンスでも同じだったことと思っている。
真実は本人に訊かなければ分からないのだが・・・
ショーの中で一番印象に残っている場面は、
何と言っても『ノバ・ボサ・ノバ』第7場『ボアノーイチ・タンゴ』のダンスシーンである。
小さな娘役が紳士となり、男役の演ずるゴツイ(?)女の相手をするのだが、
男役をリードするどころか、逆に振回される設定になっている。
皆それぞれに個性的な鬘を用意しており、何とも楽しい場面であった。
二番煎じでも良いから、このような場面はもっと使って欲しいものである。
『ノバ〜』と言えば同時上演の『再会』のプロローグ、
大勢の花嫁がウェディングドレスで登場したが、
やはり双眼鏡の目標は花嫁姿の愛田さんであった。
芝居の中でちゃんとした花嫁姿も観たかったのだが・・・
所謂『可愛い』タイプの娘役の場合、
どうしても大人の色気には欠ける一面があり、愛田さんの場合もその例外ではなかった。
そんな中で大人の雰囲気が感じられたのは、
『ラヴィール』第六場『ナイト・カフェC』の淑女である。
衣装もロングドレスで大人の雰囲気を出していたが、
愛田さんも清々しい色気が出ていて好きな場面であった。
しかしその後は同様な場面が作られることはなく、
新しい愛田芽久像を観られると期待していただけに残念であった。
卒業公演となった『RoseGarden』では、
本当に最後の最後となったロケットがお気に入りの場面である。
ロケットはとっくに卒業している学年ではあるが、
若い下級生と一緒になっても何ら違和感が感じられないのは、
やはり子供の心を持ち続けていたからかもしれない。
衣装も可愛らしくて良く似合っていたし、
あるいはこれは劇団からの卒業プレゼントであったのかもしれない。
最後の公演で唯一つ残念だったのは、特技であるバトンが見られなかったこと。
「宝塚おとめ」にはずっと特技蘭に『バトン』と書き込んであったので、
ラインダンスに入る前にバトン・トワリングが見られたら申し分なかったのだが・・・
スカイステージの『1Day Trip』は夏の収録でしたが、
前半は京都市内の案内で、途中からは和服姿で登場しました。
日本の着物は胸の大きい人は似合わないと言いますが、
在団中の愛田さんはずっと雪組所属でしたから、
日本物の芝居には慣れていたことと思います。
流石に着物の着こなしも十分であり、
歩く姿も京都の町並に良く馴染んでいました。
後半の番組は京野菜の紹介から始まり、最後は京漬物を沢山買い込んでいました。
現代的な若い娘かと思っていましたが、予想以上に日本的な女性だったんですね。
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