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 マラケシュ・紅の墓標/他(4月9日宝塚大劇場)

 とうとう出てしまった『激辛』レベルの観劇評!
 半月前に観た宙組の「ホテル・ステラマリス」も物語の展開が平凡で、 これと言った見所の無い貧弱な作品だと感じたものであるが、 この作品はそれを遥に上回る凡作であると言わざるを得ない。 いや、更に厳しい見方をすれば、凡作と言うよりも駄作であると言うべきであろう。
 観終えてから1日余りが経過したが、 どんな作品なのかと問われても答えようが無いほど印象に残らない作品であった。 ストーリー自体が把握し切れない状態であるのだから、 作者が何を伝えようとしたのかは分かろうはずも無い。 一体脚本の荻田氏はこの作品で何を表現したかったのだろうか。
 荻田氏の作品では「螺旋のオルフェ」が悪い意味で印象に残っているのだが、 やはりストーリーそのものが千鳥足状態となっており、 訳の分からない作品であったと言う印象が強く残っている。 今回の作品を観て強く感じたことは、 たとえ2本立てで上演時間が1時間半程度の作品であったとしても、 荻田氏の構成力では大劇場公演の脚本は荷が重いと言うことであった。
 前回の星組公演のショー「ロマンチカ宝塚04」では、 荻田氏の評判は良かったようである。 そして今回の芝居を観て感じたのは、 ショーの要素がかなり含まれていると言うことであった。 あるいは見方によっては、この作品は芝居と言うよりも、 ストーリーのある長めのショー、と言うべきであるかもしれない。 ショーの場合にも全体を通しての一貫したテーマを持っている場合もあるが、 それは芝居のように絶対的なものではない。
 ショーの場合には各場面が独立し、相互に関連が無くても成立する。 それぞれの場面が面白ければそれで良いし、 全部の場面が誰もが面白いと感じるものである必要もない。 全体の3割程度でも楽しめる場面があれば、 多くの観客は納得するのではないだろうか。 しかし芝居の場合には各場面の関連性は重要であり、 一部の場面で観客を納得させたとしても、 全体の印象が薄くては高い評価は得られないであろう。
 
 この日の観劇は予約無しで当日券を購入したのであるが、 3時公演では2階席の空席が目立っていた。 チケットセンター前に貼ってある前売り状況の一覧を見ても、 楽日以外の状況は芳しくないようである。 大劇場公演を観た結果感動し、 更に東京公演も観たいと思う人は少ないのではないかと思われる。
 来年はまた「ベルばら」の再演が2組であるようだが、 このように短いサイクルで「ベルばら」を再演するのも、 他の作品では集客力が貧弱であるためであろう。 宝塚では特に個人のファンによる観劇者が多いものと思われるが、 個人のファンを集めるだけでは限度があり、安定性にも欠けたものとなる。 やはり良い脚本が無い限り良い作品とはなり得ないし、 不特定多数の観客を集めることは出来ないだろう。
 歌劇誌の公演評で厳しい評価が下されることは無いようであるし、 投書欄でも褒める言葉だけが優先しているように見受けられる。 しかしもっと劇団を戒める意見も受け入れない限り、 宝塚歌劇団の100周年は危ういような気がする。

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