馬乗り攻撃

 右の図は渡辺山の想像図であり、 この図を元にして米軍の「馬乗り攻撃」を紹介する。
 渡辺山の表面は軟らかい土であり、内部も強固な岩盤ではないと思われる。 各退避壕の出入口は1ヶ所であり、各壕を内部で連結する通路の詳細に関しては不明である。 敵側に面した斜面にも銃眼は無く、山頂の塹壕へ通じる地下通路も無い。 地下壕は砲撃から退避するだけのものであり、 戦闘は山頂の塹壕で野戦同様な状況となる。
 砲爆撃を避けて壕内に入り、敵の接近に気付かずに出入口を制圧されれば、 壕内の兵は完全に戦闘能力を失ってしまう。 複数の壕が連結していたり、反撃口を備えた壕ならば手段も残されているが、 渡辺山のような簡易壕では全ての手段が封じられてしまう。
 このような単純な壕では出入口を制圧すれば、 砲撃でも火炎放射器でも、壕内に対して有効な攻撃を加えることが出来る。 しかし複雑に構築された壕の場合には通路を曲げる等の方法により、 正面からの直接攻撃には耐えられるように工夫されている。 そこで米軍が考え出したのが「馬乗り攻撃」であるが、 これは上の図のように丘の上から地下壕の位置を予測してボーリングを行い、 その穴からガソリン等の可燃物を注入して火を着ける攻撃法である。
 馬乗り攻撃を受けた場合、壕内の兵に反撃する手段は無い。 複数の陣地が互いに連結して防御戦線を形成している場合には、 別の陣地から射撃を受けるので丘の上で穴を掘っている余裕は無い。 しかし孤立した陣地の場合には米軍は何の抵抗を受けることも無く、 人的損害も出さずに攻略可能な戦法だったのである。
 馬乗り攻撃では爆薬も使われたようであるが、やはり液体の方が効果的だったようである。 液体ならば上から流し込めばどんどん低い方へ流れていき、 火炎による直接的な被害は防げたとしても、燃焼によって壕内が酸欠状態となり、 窒息による被害は避けられなかったであろうから。

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